会えて嬉しい。エロくなったねお互いに
セクハラがあります。
苦手な方はお気をつけ下さい。
目が覚めると、太ももに少しの痛みが生じて昨夜の出来事は夢ではないと思わされた。
そして、毛布ではない紺青色に青磁色をした藤の花を咲かせたような羽織りが自分にかけられてあるのを発見し喫驚する。
え?これって香夜が俺の物という印だ!って叩きつける羽織りじゃなかったっけ。
私の名前がユキノと知った香夜は雪の柄ではなく、青磁色の藤の花をチョイスした。その理由があまりにも可愛らしいのだ。「雪は溶けてなくなってしまう」うっひょおおお!と雄叫びを上げるレベルで悶え倒れた。しかも、これには隠してある意味もあって藤の花言葉を調べればすぐ分かるのだが、恋に酔う。があるのだ。レアストーリーで「お前に陶酔した…」なーんて顎を掴まれながら言われた日には、現実と関係ないけど顎を洗わずに過ごした思い出がある。
そこまで結構大事な羽織りがどうしてこんなにも早く私に掛かっているのか…。
太ももの痛みに堪えながら羽織りを羽織って、座る体勢になると目の端に金の髪がサラリと揺れた。
足元に視線を移せば丁寧に巻かれた包帯。
もしかしなくとも、香夜が手当てしてくれたのだろうか。
真っ赤な羽織りに咲き乱れる白い椿も香夜が寝ているからか儚く見える。
そっと近付けば、なんとも艶やかな「んっ…」という吐息を聞くことができ感激している。
おっと、初めに言っておく。寝込みを襲うわけじゃないぞーう!!あ、その気がないこともない。ということを把握しておいてくれ!
何とも今の展開に心が踊りすぎるのを自覚しながら、香夜の流れる前髪に手を掛ける。と…ぱちり。金の双眼が、急に目を覚ました香夜にびっくりした私を映す。
「うわぁ!ちっけーよ!雪乃!!マジ寝込み襲われそうだったわ!やめてくれ!」
私を見た瞬間に香夜なら絶対に言わない台詞が、少々焦り気味で私に飛び掛かった。
自分でも、え?という顔をしていたのだろう。片足を伸ばして曲げている足の甲に頬をつけた香夜が、落胆するような溜息を零す。
「俺だよ。美月だ」
「み…つき?」
聞き覚えのある名前に私は半信半疑でその名前を呼ぶ。
美月…私が美月という名前を知っているのは高1のときに仲良くなった男友達しかいない。美月は私が二次元の美形好きでも気持ち悪がらない勇者で、また中二病が抜けないオタクという存在だった。
戦隊モノが好きでお互い「等価交換だ!」といって、良くショーを見に行ったり乙女ゲーの戦利品を運ばせたりしていた。美月はよく「俺は荷物持ちじゃねえ!」って頬を膨らませながら持ってくれたけど、私が一言お礼を言えばくしゃっとした笑顔を見せてくれる、魅力的な男友達だった。
家に行き来するほどの仲でもあり、美月は少年ジャ○プを読み私は乙女ゲーをするという個人個人だが心地良い時間を過ごしていたと思う。
でも、その楽しい時間は高2の春に突如として消えた。
「死んだんじゃなかったの?」
そう、美月は死んだのだ。いつものように私の家に行こうとする途中で、酔った車に轢かれて即死。そう聞いたし、実際法事にも顔を出した。死んでいる美月の顔でさえ見たのだ。
私はその頃を思い出し、口を抑える。
「転生…って知ってるだろ?」
オタク、またアニメ、ゲーム好きなら絶対に知っている言葉。ライトノ○ルなどを読んで1度は憧れた言葉。美月は香夜の姿であの時のくしゃっとした笑顔を私に向けた。
「お前の家に行く途中に死んだからかもしれねえし、お前が『この乙女ゲーに転生するなら誰がいい?』って聞いた時、次男でありながら長男より強い香夜に俺はなりたいと言った。だからかな?」
香夜に転生しちゃった。と、舌を出す美月に私は泣きたくなる。
「私が…あの時どんなに泣いたか、知らないでしょ」
香夜の姿になった美月に抱き付いて涙を見られないようにする。
美月は戸惑いを一瞬見せると、すぐに私の腰に手を回した。
香夜となった美月は、私が前におちゃらけて抱きついた時より大きく、しっかりとしていて、全く違うものだったけど、確かに美月がそこにいると実感できた。
「そろそろ離してクレマスカ」
若干カタコトになりながら、さっきまで腰に回していた腕を離して私を退けようとする美月。
「何よ。こっちは感動の再会で歓喜してるのに!」
「俺にも色々あんだよ…特に下が」
私の手首を掴んだと思ったら己の下半身に移動させ、明らかに形を成している部分に触れさした。
「なっ!ななな…セクハラッ!!」
真っ赤になる私を余所にそっぽを向いて、知らぬ顔をする美月に対して、変わったね。と一言。どこが?と聞かれたのでエロくなった。と答えた。
「正解」
「雪乃も変わった」
楽しそうに正解と言って、私に指を指す美月。何が変わったのかと聞いてみれば「純情が消えた」と答える始末。
「高1の頃はキスもしたことないぐらいに純情だったのに」
「そりゃ、もう21ですから。成人してるのよ」
唇を尖らせる美月は私の葛藤なんて知らないだろう。やめてっ!貴方は香夜の姿なのよ!そんな唇を尖らせるなんて萌えポイントを突つかないで!!はわぁっと悶えて倒れ込む私に「でも美形に弱いところは変わらない」と笑う美月を見て姿勢を正す。
「それにしても、昨夜の反応は私が雪乃だって知らないようだったけど…私が寝てる間に思い出したの?」
私は自分もある程度印象に残っているシーンがあると思い出せるので、美月もその口かと思い尋ねると何とも罰が悪そうに目を逸らされた。
「ちょっとー?」
気になる私は美月に教えて!っと忠犬丸出しについて回る。相当鬱陶しかったのか、思いっきり咳払いをした美月は土下座をした。
「大変申し訳ありませんでした。実は前世友人であった雪乃様とは露知らず…我が誇り高き兄君は雪乃様が眠りこけてしまって興醒めしたと言い部屋を退出。残された私は姫様の血でも身体でも頂こうと思い、ブラウスに手を掛けたので御座います。」
こんな言い回しが少し中二入ってると言うのだが…
「え!?ま、さか。寝込みを襲われそうになったのは私!?」
何の自惚れでもなく、美月は肯定した。私はそれに体を震わせる振りをして、納得する。
「成る程、それで私のこの鎖骨に隠れているラッキーセブン黒子ちゃんを見つけたんだなッ」
語尾に星マークをキラキラさせるような声音で香夜に指をさしながら言った。
美月は転生で香夜に生まれ変わりました。
なので、香夜は美月。美月は香夜。とややこしいです。




