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パーティーから追放されたその治癒師、実は最強につき  作者: 影茸
二章 迷宮都市

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第28話 激化する戦闘

拙作、「パーティーから追放された治癒師、実は最強につき」1月30日書籍販売いたしました!

数秒後、僕とナルセーナは一足先に魔獣の群れの前まで、辿り着いていた。

目の前にいることで、より魔獣の群れの多さに威圧感を感じる。


変異したヒュドラよりはマシ。

それは近づいた今でさえ、変わらない思いだ。


……だが、これだけの数の魔獣を捌き、魔法を発動させようとしているリッチを倒せる未来が思い浮かべることが出来なかった。


だからといって、この魔法を止めなければ、迷宮都市は確実に潰れる。

リッチを倒す以外道はないのだ。


僕は自分を鼓舞して、群れの前にいたオークへと斬りかかる。


「どけ!」


ホブゴブリンとは違い、オークは短剣の動きに反応してみせた。

太い腕を持ち上げ、短剣から急所を庇おうとする。

が、走ってきた勢いのまま、振り下ろされた短剣の勢いの前には無駄でしかなく、腕諸共首が飛ぶことになった。


「ガッ!」


視界の端に飛んでいくオークの首を捉えながら、僕はこのオークもホブゴブリンと同じように強化されているのを確信する。

少なくとも、今までのオークは僕の斬撃に反応出来なかったのだから。


とはいえ、強化されたオークも難敵ではなかった。


昔であれば、ある程度苦戦していたかもしれないが、身体強化を強力なものにした僕にとっては手こずる程の相手ではない。

次のオークへと攻撃をしなけながら、僕は少し安堵を抱く。


……が、すぐにその余裕は消え去った。


「……っ!」


「グガッ!」


次に攻撃したオークも、僕の攻撃に反応し腕で首を庇った。

前回と同じく、オークの腕は宙に舞うことになったが、短剣が首を切り裂くことはなかった。


「コロス!」


瞬間、僕が隙を晒したと考えたのか、そばにいた一体のオークが攻撃を仕掛けてくる。

丸太のように太い腕が、身体をなぎ払おうと振るわれるが、直前に屈むことで僕はその攻撃を回避する。


今度は腕を振り切ったオークが、大きな隙を晒すことになり、僕はオークの身体にもたれるように立ち上がりながら心臓を突き刺す。


「しっ!」


強化されたオークは、急所を短剣で貫かれた状態でさえ生きていた。

必死に腕を伸ばし、抵抗しようとする。


それを無視し、僕は身体を蹴り飛ばすことで、強引にオークの身体かやから短剣を抜き、振り向きざま片手で僕を攻撃しようとしていたオークの首を切り飛ばした。


一瞬で仲間が殺されたことで、動揺を漏らす魔獣達を見ながら、改めて確信する。

このオーク程度の相手なら、僕が不覚をとることはない。

それはナルセーナや、ジークさんも同様だ。

しかし、オーク達と戦闘を繰り広げたことで、僕の中である思いが強くなる。


──短期間でこのオークの群れを抜け、リッチを殺すのは不可能ではないかという思いが。


「……くっ!」


ただ戦うだけでは負けはしないが、これだけの数を短時間で切り抜けるとなれば、話は別だった。

オークは確実に僕の動きに反応していて、ホブゴブリンのように圧倒することが出来ない。

ホブゴブリン達と違って武器を持ってはいないが、そんなものでは埋まらない強さをオーク達はもっている。

結果、オークとの戦闘で、貴重な時間を確実に削られていくことになり、僕は焦燥で顔を歪めた。


「……せめて、大剣なら」


動揺から立ち直り、こちらに攻撃してきたオークの腕を短剣で切り落とす。

もっとも、この短剣は決して粗雑品ではない。

それどころか、準魔剣級といっていい逸品だろう。


だとしても現状、短剣では明らかに殲滅力が足りなかった。

オークの首元を切り裂きながら、その思いを改めて強くする。

大剣であれば、腕で防御されようが、一撃でこのオークを葬れたはずだ。


「チョコマカト!」


背後から殴りかかってきたオークの拳を、横に移動することで避けながら、僕は唇を噛みしめる。


さらに、問題はそれだけではなかった。


「……っ!」


避けたと思ったにもかかわらず、肩に掠ったオークの拳。

自分のイメージと、実際の身体の動きの違いに気づいたのは、その時だった。


今の僕は、以前魔力と気を併用して肉体強化していた時よりも、遥かに動けるようになっている。

だから、気づいていなかったが、僕はまだ肉体強化した状態を完全にコントロール出来てはいなかった。

そう、現在僕は動きすぎる身体を持て余していた。


今の自分の状態では、到底リッチの元までいけない。


そう気付かされた僕は、希望を抱きナルセーナやジークさんの様子を横目で伺う。

あの二人なら、何とか出来るかもしれないと考えて。


──それは、甘すぎる考えだった。


「はあぁ!」


ナルセーナは、囲もうとするオーク達を早い動きで翻弄し、その何倍もの体格を誇るオークを一撃で倒していた。

過去の研鑽の元培われたその技術は正確無比で、同士討ちを恐れるオーク達は、ろくに攻撃を繰り出すことさえ出来ず倒れていく。


……にもかかわらず、その状況下にしてナルセーナの顔に浮かぶのは、隠すことのできない焦燥だった。


たしかに、武闘家のスキルを持つナルセーナは、個の敵に対して絶大な能力を誇り、彼女の足元に転がるオークの亡骸がそれを証明している。

だが、武闘家のスキルは多人数を圧倒的火力で殲滅できる類いのスキルではない。


ナルセーナもまた、リッチの元に辿り着くのは難しいだろう。

ナルセーナも、それを自分で理解している。


一方ジークさんも、状況は決して良くはなかった。

僕達の中ジークさんは、移動速度は一番遅いものの唯一大剣、それも魔剣という殲滅力の高い武器を持っている。

……が、オーガが直接ジークさんを抑えにかかっているせいで、その殲滅力を一切活かせていなかった。


「がぁぁぁああああ!」


「GAAAAAAAAAA!」


それぞれ雄叫びをあげ、先頭を繰り広げるジークさんとオーガ。

武器を持っていないせいか、明らかにオーガは劣勢だ。

それでも勝負がすぐにつく程ではなく、今この状況でジークさんに頼ることなどできない。



そんな二人の状態を目にして、まだ期待を抱けるほど、僕は楽観的ではなかった。

現状でリッチを倒せるのは自分だけだと、覚悟を決めてオーク達へと飛びかかる。


「うおぉぉおお!」


回避を最小限にし、身体強化を強くして攻撃に専念する。

オーク達が防御しようが、身体強化で強引に腕ごと頭を叩き割り、攻撃してきた腕や足を折って足を進める。

結果、僕の身体には傷がどんどん増えていくが、少しづつ、確実に前へと進んでいく。


もう少し前にいるオーク達は、リッチに魔力を吸われて弱っていたはずだ。

そこまで行けば、状況は遥かに楽になるに違いない、そう信じて。


「──っ!」


……しかし、そこがタイムリミットだった。


オークの頭がから見える、リッチの魔法陣。

急激に強い光と魔力を放ったそれを見て、僕は強制的に理解させられる。


戦術級魔法が、あと僅かな時間で完成するを。


「くそ、くそっ!」


必死にオーク達に短剣を振り回し、何とかして前に進もうとする。

後ろからは、ナルセーナが必死に前に出ようとしているのか、先程よりも騒がしい戦闘音が響いている。

……が、それが無駄な足掻きでしかないことは明らかだった。


それを知りながら、僕たちは必死に足掻く。


魔法が放たれても、リッチの近くにいる僕達は無事だろう。

けれど、確実に迷宮都市では絶大なな被害が出る。

特に戦闘力のない街の人たちは、ほぼ確実に死ぬことになるだろう。


だから、諦められるわけなんかなかった。

傷だらけになりながら、前に出ようと暴れる。


「どけぇぇえ!」



そんな僕の行動を嘲笑うように、魔法陣が一際大きな光を放ち。



──頭上から場違いな軽い声が響いたのは、その時だった。



「ジーク、まだ全然魔剣を扱えていないようだね」




「…………え?」


次の瞬間、光り輝いていた魔法陣に、まるで何かにすっぱりと切られたようなずれが走った。


そのずれが何なのか理解する前に、膨大な魔力が噴き出し、魔獣を含めたこの場にいる全ての存在が動きを止める。

そして、その注目の中魔法陣は一際強く輝いた後、崩れ去った。


「オノレェ!オノレェェェエエ!」


一拍ののち、リッチが上げる金切り声に正気に戻された僕は、ようやく理解する。


先ほどの声の主が、魔法陣を切り裂いたのだと。

迷宮都市に向けられていた戦術級魔術は、もうないのだと。


安堵を抱く同時に、頭上を見上げると、そこには全身鎧を身につけ、大剣を振り下ろした状態で、宙に浮かぶ男性の姿があった。

短い金髪に、眼鏡をかけた糸目。

その数年前からまるで変わらない姿に、彼の正体を理解して僕は、呆然と口を開く。


「ロナウド、さん?ど、どうしてここに……?」


何故、こんな場所に超一流冒険者の一人である彼がいるのか、その理由がわからず呆然とする僕達に、ロナウドさんは爽やかに笑いかけた。


「やあ、久しぶりだね二人とも。色々と話したいことはあるけど、それは後にしよう。とにかく今は、急いでその場から走った方が良いよ」


膨れ上がる魔力と悪寒、それに僕が気づいたのは丁度ロナウドさんがそう告げた時だった。

まさかまたリッチの魔法かと、緊迫した表情で魔力を感じた方へと視線を向けた僕の目に入ったのは、鮮やかなな赤い髪の女性だった。


「……ああ、そういうことか」


もう自分達が魔獣達を相手にすることはない。

それを理解した僕は、ナルセーナやジークさんへと声を上げる。


「急いで下がって!」


オーク達に囲まれているナルセーナや、ジークさんの顔からは、未だ混乱が抜けていなかったが、僕の声に反応して後ろに下がろうとする。


「コロセ!ニガスナ!」


が、同時にリッチの指示に従って、今まで固まっていた魔獣達が動き出した。

ナルセーナと僕は、身体強化で直ぐにオーク達との距離を開く。

だが、オーガとの戦闘中のジークさんは、直ぐに動ける状態ではなかった。

異変を察知した僕は、直ぐにジークさんの元に向かおうとするが、その前にナルセーナが動いていた。


「離れなさい!」


「GA!?」


がら空きの背中にナルセーナの拳が叩き込まれ、オーガが硬直する。

その隙を見落とさず、ジークさんの魔剣がオーガの身体を両断した。


「すまない、助かった!」


「急ぎましょう!」


身体強化を全力で使って走ってくる二人は、直ぐ様に後ろからおい寄せるオーク達との距離を開き──轟音が鳴り響いたのはその瞬間だった。


振り返った僕の目に飛び込んできたのは、戦術級魔術に匹敵する爆発だった。

それも、その爆発に巻き込まれた魔獣達がどうなっているのか、考えるまでも無いような威力の。


それでありながら、その魔術は魔獣達にかなり近い位置に居る僕達を巻き込んでおらず、それが発動した人間、超一流冒険者ラルマの技量の高さを示していた。


「……本当にとんでも無いな、師匠」


少しの間、僕たちは呆然と今まで魔獣の群れがいたところに目をやることしか出来なかった。

そんな僕たちを正気に戻したのは、余裕のない師匠の声だった。


「馬鹿弟子、今から私はギルドに行く。到着するまでに状況を説明しろ」


「わ、分かりました」


いつにもなく真剣な雰囲気の師匠、それに圧倒されながらも僕は何とかそう答える。

そんな僕を一瞥し、宙に浮かんだ状態のまま、師匠は苦々しげな表情で口を開いた。


「私のことも道すがら説明する。今はとにかくギルドに向かうぞ」


その師匠の様子が、一体何を示しているのか。

今の僕はまだ、理解していなかった……

発売した拙作ですが、皆様のご助力のお陰で売れ行き好評のようです!

本当にありがとうございます!

ありがたいことに売り切れる書店様もあるらしく、書店様での予約などがしやすいよう促販シートを作成させて頂きました!

活動報告に画像を貼らせて頂きますので、画像を保存して予約の際にご活用して頂けると幸いです!


改めて、いつも応援頂き本当にありがとうございます!

これからも力の限り頑張らせていただく所存ですので、よろしくお願いいたします!

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