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パーティーから追放されたその治癒師、実は最強につき  作者: 影茸
二章 迷宮都市

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第14話 さらなる成長

それは、人気が殆どない空き地。

そのなかで一人、僕は目を閉じ静かに佇んでいたていた。

頭に浮かぶのは、昨日のフェニックス討伐。


フェニックス討伐の結果、僕達とジークさん達はかなりの収入を得た。

しかし、その事を素直に喜ぶことはできなかった。

その理由は変異したフェニックスの存在。


冷静になれた今考えれば、あのフェニックスは変異と呼べる段階には、まだ到達していなかったと思う。

僕がはっきりと断言出来るだけでも、攻撃されながらも回復に専念していた判断能力のなさ、威圧感などは明らかに変異したヒュドラに劣っていた。


……だが、それでも確実にフェニックスは変異しようとしていた。


瀕死の状態からの急激な強化。

あの時の光景こそが、何よりの証拠。


そして二体の超難易度魔獣も異常な速度で変異した今、ヒュドラの変異が偶然である可能性は消えた。

明らかな異常が、この迷宮都市で起きているのだ。


ジークさんに聞いたところ、変異の知らせに関しては、どうやら王都の冒険者ギルド本部にも行っているらしい。

数日中に、また師匠達が迷宮都市に調査のため訪れてくるようだ。

だが、王都のギルド本部を敵視している、迷宮都市のギルドが大人しく調査されるとは思えない。

……おそらく、これから迷宮都市は騒がしくなるだろう。


そのことが頭によぎり、僕は思わず苦笑を漏らす。

師匠が来れば、自分がこき使われるだろう未来が容易に想像出来てしまう。


「あはは、師匠のストッパーにロナウドさんでも付いて来れてたら良いなあ……」


それに、僕は小声でそんな言葉を漏らしてしまう。

だが、その事について僕が考えていたのは一時のことだった。


「ふぅ、」


その次の瞬間には、僕の頭は切り替わっていた。


フェニックス討伐の後、出てきたさまざまなゴタゴタ。

それは厄介で、度々僕は頭を悩ませていた。


だが、フェニックス討伐で一番僕の頭に残っているのは、それではなかった。


目を閉じた後直ぐに思い出すのは、短剣で頭を切り裂く前のフェニックスの姿。

いや正確に言えば違う。

僕が思い出しているのは、そのフェニックスの姿ではなく、その姿を目にしていた時の自分の状態だった。


その時の状態は、目を閉じるだけで頭の中に思い描くことができる。

異常な程の身体の軽さに、身体に溢れる力。


── それと、壁を超えた感覚。


「っ!」


その感覚を再現するイメージで、魔力と気を組み合わせ、僕は自分の身体に強化をかける。


「……やっぱりか」


次の瞬間、身体強化を試しすために身体を動かしながら、僕はぽつりと言葉を漏らした。

それは、必死に湧き上がる感情を押し殺した小さな声。


だが、そこには隠しきれない歓喜と興奮が込められていた。


「僕はようやく壁を超えられたのか……」


一年間、自身の成長を阻んできた大き壁。

自分の呟いた言葉に、その壁をようやく超えたことを改めて僕は理解する。


口元に浮かぶ笑みが、僕の歓喜を表していた。




◇◆◇




僕が魔力と気による身体強化の限界に気づいたのは、今から丁度一年ほど前のことだった。


魔力と気による身体強化、それは元々身体に大きな負担を強いるものだ。

初めて強化を成功させたときなど、 僕は数十秒の強化の代わりに肋を骨折した。

回復魔法の魔石による強化を覚えていなければ、僕は最初でその強化方法を試すのをやめていたかもしれない。


だが、そんな諸刃の剣の力でも僕にとってはようやく得た希望だった。

だから僕は自身が傷つくのも厭わず、必死に鍛練を繰り返した。

最初の頃は魔獣と戦う前に傷だらけになり、少しずつ身体強化に慣れてきた後も、生傷が絶えることは無かった。

それでも僕は日々、鍛練を続けた。


……だがある日、僕は死にかけたことでようやく魔力と気の身体強化の限界を知った。


魔力と気の身体強化、それによる負傷を僕は治癒魔法でカバー出来たし、使い続けることである程度負傷を抑えることも出来た。

だが、それでも負傷を無くすことはできない。

強化を強めれば強めるほど、負傷は大きくなっていく。

つまり、魔力と気の身体強化は身体の負傷を条件にした、捨て身の裏技でしかなかったのだ。


ある一定の範囲を越えれば、魔力と気による身体強化は鍛えることができなくなる。

いや、正確に言うと一定の範囲を越えれば、負傷が限界を越えて死ぬというべきか。

それが魔力と気の身体強化による限界。

僕がどうしようが越えられないと思い知らされた大きな壁。


「っ!」


だが今僕は、その大きな壁を越えていた。


ロナウドさんから教わった型、それを強化した状態で行いながら僕はその事を確信する。

強化された身体で型という精密な動きを行う難しさは、以前とは変わらない。

それでも、強化するだけで覚えていた身体が軋むような痛みは消えていて、僕は思わず笑いだしたい衝動に駆られる。


痛みは別に完全に無くなった訳ではない。

少しでも集中を緩めるか、強化を強めると直ぐに身体を襲ってくるだろう。

しかし、今までと比べれば雲泥の差だった。


変化はそれだけではなかった。

今まで僕は、身体強化した後の動きがかなりぎこちなくなっていた。

けれども今、僕の身体は明らかに動き易くなっている。

これならば、最初から身体強化をして戦うことも出来るかもしれない。


おそらくこの変化のきっかけは、変異したヒュドラの討伐の時だろう。

そしてフェニックスとの戦いで、完全に目覚めたに違いないだろう。

不幸でしかないと思い込んでいた超難易度魔獣の出現だったが、どうやらこんな力を僕にもたらしてくれらしい。

そう考えて、僕は顔に浮かぶ笑みをさらに濃くする。


これなら、僕はさらに強くなれる。

そうすれば………


その感情に突き動かされるまま、僕はさらに鍛錬を続けたい衝動に駆られ、けれども僕は首を振って型をやめた。


思わず我を失って鍛錬していたが、今の僕には街に行ってやらないといけないことがある。

出来れば少しの間だけでも、自分の成長を確かめたかったが、もう街の方へと向かわないといけないだろう。

そう考えた僕は、名残惜しげに空き地の方に目をやりながら街へと歩き出す。


「やっと見つけたぜ」


……だが次の瞬間、その言葉と共に僕の前に現れた人影に、僕は足を止めることになった。


「欠陥野郎、お前が大きな顔を出来るのも今日が最後だ」


敵意を隠そうともしない目で僕を睨み、そんな言葉を吐き捨てたのは、以前僕とナルセーナに舌打ちしてきた、あの一流パーティーだった。

更新遅れてしまい、申し訳ありません……

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