アニメ化記念 SS ナルセーナとアーミア
こちら、アニメ化を記念してTwitterに載せていたSSになります。
時系列は大体90話の前、「第二次城壁防衛戦」前夜の話になります。
改めて、アニメ放映ありがとうございました。
「……何でいつも私のところに逃げてくるんですか」
隠しきれない呆れが私、アーミアの口から漏れる。
そんな私の目の前にあったのは青く艶やかな髪の少女ナルセーナさん……の後頭部だった。
「だってぇ……」
「だってじゃないです! いくらラウストさんとの逢瀬をナウスさんに見られたからて、私のところに逃げ出すのはやめて下さい!」
「お、逢瀬!?」
私の叫びに、ナルセーナさんが咄嗟に頭を上げる。
想像もしないところに反応し、普段白い顔が真っ赤になっている。
それに私は今度こそ、声もなく呆れ果ててしまう。
……傍から見てもあれだけ思いが通じ合っているのに、この二人はまだそれで照れる段階なのか、と。
「そ、そんなことないよ! ま、まあ、人から見えたらそんな風に見えたりも、したかもしれないけど?」
「照れるのか、のろけるのかどっちかにして下さい……。本当に私の家をなんだと思ってるんですか」
その私の言葉に、ナルセーナさんの顔にさすがに申し訳なさそうな表情が浮かぶ。
「ごめんね、悪いとは思ってるんだけど。……こういうの話せる友達、私はアーミアしかいなくて」
友達、その何気なく告げられた言葉に、私は不意打ちを受けたように言葉を失う。
そんな言葉を、ナルセーナさんからもらえると思ってなかったが故に。
だって、私はナルセーナさんの大切な人にひどいことをして、その上で救って貰った人間なのだ。
「後、別にここに来たのは恥ずかしいからだけじゃないから! せっかくだし、アーミアと話したかったのも大きいから!」
そんな私の反応に気付くこともなく、ナルセーナさんはそう続ける。
その言葉に、私は思わず言葉を失っていた。
……実のところ、私だってナルセーナさんがここに来るのが嫌な訳じゃなかった。
確かに独り身に惚気が答えることはある。
けれど、ナルセーナさんが一緒にいてくれるのは楽しいし、嬉しかった。
特に、今みたいな状況は。
けれど、それだけでラウストさんとの時間を奪う訳に行かないのを私は知っていた。
「それでも、ナルセーナさんは戻るべきだと思います」
「……そっか。やっぱり迷惑だったよね。ごめんね」
「いえ! そんなことないです! でも」
自身の黒く長い髪を弄りながら、私は言葉を区切る。
それを口にしてしまえば、今の楽しい時間が消えてしまう気がして。
それでも言わないと行けないことだと私は知っていた。
「──私達は明日、死ぬかもしれないんですから」
私の言葉に、沈黙が生まれる。
少し、後悔は胸にあった。
それでも、これは言わないといけないことだった。
「ナルセーナさんはもっとラウストさんと一緒の時間を過ごした方が……」
「アーミア」
ナルセーナさんの言葉には大きいわけでも、怒りが滲んでいる訳でも無かった。
それでも、私が言葉を止めてしまう何かを含んでいた。
口ごもる私に、ナルセーナさんはにっこりと笑う。
同性の私でさえ見ほれてしまうほどにかわいい笑顔で。
「大丈夫だよ、私とお兄さんなら。なんなら私達がアーミアのことを守ってあげる」
ショートカットが揺れ、その下から自信と喜びに溢れたサファイアの目がのぞく。
髪色と同じその目に私は見入ってしまう。
希望に溢れたこの人を見て、私は思わずにはいられない。
……この状況に置いて、どうしてこの人はこうやって笑えるのだろうかと。
「ほら、いいから私は今日泊まるね! 明日の活力のためにいっぱいおしゃべりしよ! いいでしょ?」
次の瞬間強引にそう決めたナルセーナさんはいつも通りだった。
私は僅かに俯く。
気を使ったつもりで、逆に気を使われてしまったと。
「……仕方、ないですね」
「やった! なら一緒に寝よっか!」
そう言って喜々として寝る準備をする背中を見ながら、私の口からぽつりと言葉が漏れる。
「ラウストさん、幸せなんだろうな」
かすかに痛みが走った胸に気付くこともなく。
「アーミアのベッド、相変わらず小さいね」
「そうですか? 十分二人で寝れますよ」
私はそう笑って告げながら、ナルセーナさんの方へと歩いていく。
「普通のベッドって四人ぐらい寝れない?」
「一体どこのぼんぼんですか、それ!」
しかし、そう和やかに話す私は知らない。
その夜。
……ナルセーナさんの怒濤の惚気に、少しだけ後悔することを。




