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パーティーから追放されたその治癒師、実は最強につき  作者: 影茸
二章 迷宮都市

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第九十五話 第二次城壁防衛戦 ⅴ

長々と更新遅れてしまい申し訳ありません……!

そして遅れましたが、12月28日にコミカライズ6巻発売です。

「……想像以上に厳しい状態だな」


 セイレーン達に近づく中、僕の口からそんな言葉が漏れる。

 そう視線の先にいるのは、かなり傷を負った状態で戦うハンザムの姿だった。

 まだ、ハンザムがセイレーンに攻撃を仕掛けてから数分も経っておらず、しかも戦っているのはハンザムだけではない。

 にも関わらず、明らかに追い込まれているハンザムの状態に、僕は思わず眉を潜める。


 ……これはあまりにも一方的な戦いすぎないか、と。


 確かに、ハンザムは正面切って戦うより、不意をつく戦い方、どっちかと言えば武道家のような遊撃手としての戦い方をする人間だ。

 しかし、仮にもあのミストの側近。

 近接戦闘の心得がない訳でもない。

 なのに、どうして超難易度魔獣の中では弱いセイレーンと、オーガの集団に押されているのか。


「……ナルセーナお願い」


「分かりました!」


 そんな疑問を抱きながらも、僕とナルセーナはオーがを目前にして瞬時に別れた。

 セイレーンの方向へとつっこむナルセーナは反対に、僕はハンザムの側にいるオーガの一体へと切りかかる。


「……っ」


 そして僕はすぐに異常を理解する形になった。

 不意打ちで僕がたたき込んだ攻撃、それはオーガに防ぐ暇も与えなかった。


「ガアアアア!」


 ……にも関わらず、僕の攻撃を受けたオーガは果敢に反撃してくる。

 その攻撃を受けながら、僕の顔に浮かんでいたのはこの状況に対する驚愕だった。


 今までのオーガであれば、この一撃で十分倒せていただろう。

 しかし、目の前のオーガは不意打ちでこの攻撃を受けてもなお、反撃までしてきた。

 それは、目の前のオーガが今までとは違うことを何より雄弁に物語っていて。


 ……その原因として考えられるのは、一つしかなかった。


「───!」


 その顔を憎悪にゆがめ、それでも変わることのない歌声をあげるセイレーン。

 その歌声に反応するように身体を光らせるオーガ達を見ながら、僕はうめくように告げる。


「……妨害だけでなく、強化までこれだけ強力なのか!」


 セイレーン、その存在の怖さを真に僕が理解したのは、その時だった。

 このセイレーンと、他の超難易度魔獣をくませることだけは、絶対に看過してはならない。

 その確信に、僕は目の前のオーガを睨みつけ、思わず唇をかみしめる。


「カッ……ハッ!」


 ……その喉元から、ナイフが突き出てきたのは次の瞬間だった。

 それは異様な光景で、ただその人間の特殊性を知る僕は、今度こそ驚かなかった。

 ただ、無言でその人間がアクションを起こすのを待つ。

 死体となったオーガの背後から声が響いたのは、そんな時だった。


「ようやく来たか……」


 次の瞬間、倒れるオーガの死体の後ろから現れたのは、ハンザムだった。

 今更見ると、その姿は想像以上に傷だらけで僕は反射的に魔石具を取り出す。


「《ヒール》」


 僕の呪文に合わせ、治癒されていくハンザムの傷。

 ……それがどこか、遅い速度の治癒に感じて僕は思わず目を細める。

 しかし、すぐに僕は今はそれどころじゃないとその考えを頭から振り払う。

 そんな僕の様子を勘違いしたのか、苦虫を噛み潰した表情をハンザムが浮かべたのはそのときだった。


「……オーガの一体もやれないとはな」


「いや、十分だ」


 そう僕は反射的に答える。

 それは僕の本心だった。

 というのも、先ほどと違ってハンザムがセイレーンに歯が立たない理由については僕は十分に理解できていた。

 むしろ、ハンザムと冒険者達だけで押さえていたのが、異常と言える成果と言える。


「……何より、セイレーンの妨害を中断してもらったのには本当に助かった」


 そしてなにより、あの攻撃は僕達にとって大きな節目だった。

 あのまま僕が拘束されていたら、僕とナルセーナ、そのどちらが間違いなく大きな傷を負っていただろう。

 そしてそれは、僕達の役割を考えれば致命的な存在となる可能性があった。

 故に僕は、心から感謝を告げる。


「フェンリルの時と言い、今回といい本当に助けられたね。ありがとう」


「……っ」


 未だ治癒を受けているハンザムが、微かに息を呑んだのはそのときだった。

 音に反応して顔を向けると、いつも感情を出さないハンザムが目を大きく見開いていた。

 その今までに見ていない反応に、僕まで思わず目を見開く。

 そんな僕を見て正気を取り戻したのか、ハンザムは顔をゆがめて口を

開く。


「そんな言葉などいらん。フェンリルのことはこれで帳消しにしただろうが」


「……それは」


 そういってハンザムが指さした背中にくくり付けられていたのは、僕が渡した例の魔剣もどきのぼろ剣だった。

 それに僕は思わず呆れを覚える。


「何でそんなもの持ち込んでるんだよ……。そんな厳重に包んだ状態で」


「うるさい。俺の勝手だ」


 そう言って鼻をならした後、ハンザムは真剣な表情で僕へと目を向けた。


「それと、俺は自分の義務を果たしているだけだ。礼なんて今後必要ない」


「……義務?」


「……ああ」


 僕の言葉に少し視線を揺らした後、ハンザムは迷宮都市を囲む城壁の上へとへと目をやる。

 そこにいるのは、遠目でも無理の分かる師匠と……その側で立つミストの姿だった。

 それを見て全てを察した僕は、呟く。


「ミストに言われて、この魔獣を抑えるように言われたか?」


「……まあ、そんなところだ」


 その返答に僕はハンザムが今回もミストの側を離れている理由を理解する。

 全ては、ミストの指示であると。


「相変わらずすごい忠誠心だな」


「当たり前だ。……俺の人生の二人の恩人の内一人何だからな」


 治癒の光に照らされながら、そう言い切ったハンザムの横顔。

 それを見ながら、僕は思う。

 ……この男にも、ここに来るまでに何か経緯があるのだろうか。

 それをまた、聞いてみてもおもしろいかもしれないと。


 しかし、そのためにもこの防衛戦を終わらせなければならない。

 ハンザムの治癒をようやく終えた僕は、改めて呟く。


「とりあえず、さっさと終わらせないと」


「……策はあるのか?」


 そう告げた僕に、ハンザムが問いかけてくる。

 それに僕は、戦場へと向かいながら淡々と告げた。


「ハンザムは隙を見て、確実にオーガを処理していって。後は、僕とナルセーナが後のことは処理する」


「……っ! そんなほぼ無策でこの状況をどうにかできると思って……」


 そんな僕にハンザムは言い寄ろうとして、言葉が止まった。

 それに僕はようやく今の現状を気づいたかと理解し、小さく笑う。

 ハンザムの目線の先にあるのは、縦横無尽に駆け回る青い影。


 ──たった一人で、オーガとセイレーンを足止めするナルセーナの姿だった。

改めて、長々と更新遅れてしまい申し訳ありません……!

思ったより長めにスランプを拗らせていました。

2週間を目処に、できる限り更新頑張らせて頂きます。

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