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パーティーから追放されたその治癒師、実は最強につき  作者: 影茸
二章 迷宮都市

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第83話 急激な成長

更新遅れてしまい申し訳ありません……。

次の更新に関しては、2週間きっちり守られるように頑張ります。

あとがきにお知らせもありますので、よろしければ目を通して頂けますと幸いです。

「……もう明日か」


 そう呟いたジークさんの声には、隠しきれない緊張が込められていた。

 その緊張が感染するように、周囲の冒険者達の顔もこわばっている。

 しかし、すぐにジークさんは視線を逸らし、冒険者達を安心させるような笑顔を浮かべた。


「まあ、そこまで身構えることもないかもしれないな。ラウストがいることを考えれば」


 そう言いながら、ジークさんは僕から視線を逸らす。

 そしてジークさんが視線をやったのは、先ほどまで僕が戦っていたことろ……オーガの死体のところだった。


「……本当に、一人でよくこんな有様を作れたものだな」


 そう呟いたジークさんの声には、感嘆を越えた呆れが滲んでいた。

 そして、それを受けて僕は思わず苦笑する。

 そんな目を向けられても仕方ないと、我ながら思ってしまったが故に。


 今でも鮮明に思い出すことのできる、数日前のフェンリルとの死闘。

 あの勝負を経てから、自分でもはっきりと分かる成長を僕は感じていた。

 明らかに僕は強くなっていると。


 オーガとの戦いを思い出すように、僕は自身の手へと目をやる。

 あの戦いでは、僕はいとも簡単にオーガの攻撃を弾くことができた。

 それもいとも簡単に。


 迷宮暴走初日から、僕は確かにオーガを越える身体強化を発揮することはできた。

 とはいえそれは、あくまで身体が傷つくぎりぎりのレベルで身体強化したからこそのもの。

 それでも強力な成長だったが、今日の戦いはそれさえ霞むものだった。


 ……それこそ、自分でも異常と理解できるほどに。


 今も身体に残るその感覚から思考を逸らし、僕はジークさんへと笑いかける。


「……少し身体強化がしやすくなったみたいで、そのおかげですよ」


「これで少し? さすがに謙遜のしすぎだろう……」


 呆れたように呟くジークさんに、僕も思わず苦笑する。

 我ながら、これで少しは控えめすぎだと理解できて。


 オーガと戦っている時の、強化した身体が意のままに動く感覚。

 それは僕に、鮮明に残っている。

 その感覚は、今まで必死に身体をコントロールしてきた僕にとって、夢心地といえる感覚だった。

 しかし、その感覚に喜ぶ一方で、僕は理解していた。


 ……これは人に伝えるには、あまりにも異常な力だと。


「はは、そうですかね」


 故に僕は、罪悪感を覚えつつも、そう笑って場を濁そうとする。


「ラウストだもの。これくらい感覚は違うわよ」


「……まあ、そうだな」


 ライラさんがそう告げると、ジークさんがそれ以上追求しようとすることはなかった。

 代わりというように、ジークさんは小さくため息をついて告げる。


「ナルセーナといい、この二人は……」


「オーガ複数体をまとめて倒していることとといい、本当にそっくりだわ。まあ、ナルセーナは張り切って暴走気味で、ロナウドさんに怒られていたけども」


 ……ナルセーナが成長が凄いとは聞いたことはあったが、失敗もしていたのか。

 年齢に似合わずしっかりしたナルセーナの思わぬ失態に、内心ほほえましく感じて笑いそうになる。

 しかし、僕はその気持ちを抑え、自分の困る話題から話をそらすために、話を切り出した。


「……それでも、ジークさんあってのものですよ。少数と戦うことを徹底してくれたからこその戦果ですよ」


 それは咄嗟に話題逸らしに選んだ話題でありつつ、僕の本心だった。

 この戦いでジークさんは、徹底して僕が少数のオーガに専念できるよう場を整えてくれていた。

 常に十数体を越えるオーガを足止めしてくれていて、僕は純粋にオーガを倒すことだけに専念できた。

 そのことを考えれば、実際のところこの戦いで一番大きく貢献をしてくれていたのは、ジークさんといっても過言ではない。


「……何かあったりしたんですか?」


「まあ、少し成果が出てきたというところだな」


 そう好奇心から聞いた僕に、ジークさんは魔剣をたたいて意味ありげに笑って見せた。

 その背後にたつライラさんの表情にもなぜか自慢げな色が浮かんでいて、僕は思わず首を傾げる。

 しかし、ジークさんに話す気がないと理解できた僕は、そこで追求をやめた。

 それに今大切なのは理由などではなく、ただ強くなっているという事実だと僕は理解していた。

 何せ、決戦の時はもう明日に迫っているのだから。

 僕の心を読んだようにジークさんが口を開いたのは、その時だった。


「……だからという訳でもないんだが、実のところ俺は明日がそこまで怖くない」


「そう、なんですか?」


「明日が相当厳しい戦いになるだろうとは理解しているんだけどな。それでも、不思議と思うんだよ」


 そういってジークさんは僕を、そして背後の冒険者達に目をやり告げる。


「今の俺達は相当強いんじゃないか、てな」


 それは決して大きな声ではない。

 けれど、その言葉は不思議とよく響いた。

 この場の人間の視線を全て受けながら、ジークさんは気負いのない笑みでつげる。


「明日もやってやろうか」


 そう告げたとき、ジークさんが見ているのは僕だった。

 けれど、この場にいる全員が理解する。

 これはこの場にいるもの全員に向けたものだと。

 瞬間、熱気が冒険者の中にあふれ出す。


「はい」


 その熱気を代表する形でそう答えながら、僕は内心思わず苦笑していた。

 こんな簡単に、不安を抱えている冒険者の志気をあげるとは、と。

 生き生きとした表情の冒険者、そこにはもう緊張はなかった。

 そして、この場でのジークさんの言葉は、今は戦場にでていない人間にもすぐに伝わるだろう。

 そうなれば冒険者全体の志気があがり、それは彼らにとって希望となるだろう。


 この絶望的な状況で、こんな簡単に希望を作り出す。

 そんなこと、自分にできるだろうか、そう考えてすぐに僕は無理だと答えを出す。

 ジークさんのような人こそ、人を率いるのに相応しい人間なのだろう。


 ……しかし、そう考える一方で僕の心は冒険者達ほど盛り上がってはいなかった。

 熱気に心が動かされるのを感じつつ、あることが僕の頭から離れることなかった。


 そして、それはジークさんも同じなのだろうと言う確信が僕にはあった。


「とりあえず、今回はここで解散だ。各自転移陣に乗って迷宮都市に戻り、休息を取るように」


 その僕の想像を裏付けるように、そういいながらもジークさんとライラさんは、その場から動こうとしていなかった。

 まるで、この場から人が少なくなるのを待っているように。

 その僕の想像は当たっていた。


 ほとんどの人が去ったのを確認し、ジークさんは口を開いた。


「……なあ、ラウスト少し聞いていいか?」


 万が一にも周囲に聞かれないよう、意識された小さな声でジークさんは尋ねてくる。


「今回の魔獣について、ラウストは何か違和感を感じなかったか?」


「……はい」


 そう頷いた僕に、ジークさんの表情は険しいものに変わった。

この度治癒師コミカライズ1巻ですが、再度重版出来となりました!

本当にありがとうございます!

鳴海先生には、本当に原作を超えたコミカライズをして頂いていると感じておりますので、本当に感謝の念しかありません。

7月初旬に重版分が書店様に出るそうなので、もし品薄で読まれていなかった方がおられましたら是非。

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― 新着の感想 ―
[気になる点] 話がさっぱり進まない点。 [一言] ナルセーナを筆頭にこの作品に登場する一途な女性達はとても魅力的です。(まぁ一部ゲスい方も居られますが・・・) 少しテンポを早めて、彼女達が報われる展…
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