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パーティーから追放されたその治癒師、実は最強につき  作者: 影茸
二章 迷宮都市

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第82話 四日目

更新長々と遅れてしまい申し訳ありません……!

次回からは二週間に一回は更新できるようにさせて頂きます……。

また、下記お知らせありますので、是非目を通して頂けますと幸いです!

 憎悪のこもった目が、僕を見ていた。

 いや、憎悪なんてものじゃない。

 その目に込められているのは、なんとしてでも僕、目の前の人間を殺すという殺意だった。

 その目を向けられながら、僕はふと思う。

 変異したオーガにこんな風に睨まれて、どれだけの冒険者が正気を保てるだろうかと。


 ……そして、そんな状況にありながら僕の心には、一切の乱れもなかった。

 油断している訳じゃない。

 頭は完全に臨戦態勢になっていて、緊張に心臓はばくばくと動いている。

 ただ、余計な力みは完全に僕の中にはなかった。


「ナンダ、オマエ?」


 むしろ、相対しているオーガの方に、恐怖が滲んでいるかもしれない。

 そう気づいてしまい、僕は思わず苦笑する。

 とはいえ、そのオーガの言葉に僕自身さえ同意せずにはいられなかった。


「……うん、僕も少し疑問に思っている」


 視界の端に写る、十に近いオーガの死体。

 自身が倒したそのオーガの数を見ながら、僕はそう告げる。

 多少、僕も自分が成長していることは感じていた。

 とはいえ、相手は変異したオーガ、普段の超難易度魔獣にも匹敵する存在。


 ……ここまで一方的に蹂躙できるなど、考えてもいなかった。

 そんな僕を見て、オーガは小さく告げた。


「オマエハ、ニンゲンデハナイナ」


 その言葉に、一瞬僕の胸に動揺が走る。

 しかし、思考する時間もオーガが与えてくれることはなかった。


「ウオオオオオオオッ!」


 冒険者の遺品に当たる大剣を振り上げ、オーガは僕の方へと走り寄ってくる。

 瞬間、僕から動揺がきえさる。

 こちらに向かってくるオーガを見ても、僕の心に一切の動揺も存在しなかった。

 短剣を握った手に力を込め、冷静にどうすればいいか思考を馳せる。


 オーガの力で振り下ろされる大剣は確かに厄介なものだ。

 僕であっても、まともに食らうと大きなダメージをおいかねない。

 けれど、あえて僕はその場に踏みとどまることを選んだ。


 動かない僕の姿に、オーガの顔に僅かな疑問が浮かぶ。

 だが、それは一時的なものにすぎなかった。

 すぐに迷いを吹き飛ばし、オーガはさらに加速する。

 そのオーガに対し、僕が行ったのは自身の短剣をオーガの大剣に沿わせるように受けただけだった。


 ……そして、それで十分だった。


「ッ!」


 甲高い音を立てて、オーガの手に握られていた大剣がおれる。

 くるくると回転しながら飛んでいく大剣の刀身。

 それを視界の端で眺めながら、僕は思う。

 ……我ながら、よくこんなことができるようになったものだと。


 別に大剣を折ること自体は難しい話ではない。

 持ち主が死んでから野ざらしにされていた体験が整備なんてされていたわけもなく、もろくなっていてもおかしくない。

 そして、オーガが頑丈な準魔剣に全力でたたきつければ、こんな風におれるのも当然の話だ。

 鍛えた訳でもないオーガの攻撃であれば、ロナウドさんや、ジークさんだって簡単に折って見せるだろう。

 本当に決して難易度の高いことではないのだ。


 ……身体強化のことさえ考えなければ。


「……ウオオッ!」


 僅かに僕の意識がそれたのを隙だと判断し、オーガは柄を投げ捨て、僕につかみかかってくる。

 しかし、その太い腕が僕の身体に届くことはなかった。

 その直前、僕の短剣によって肘あたりから両方の腕が切り落とされたが故に。


「……クッ!」


 両腕をなくしたオーガの顔がはっきりと歪む。

 その瞬間、既に勝負は決まっていた。


「ふっ」


 真横にふるわれた短剣が、オーガの首を断ち切る。

 くるくると空中で回転するその顔は、なにが起きたか分からない、そう言いたげな表情を浮かべていたが、途中その目は僕をとらえた。

 瞬間、その顔に驚愕が浮かび、オーガが自身の状態に気付いたのが分かる。

 戦いに敗北し、もう助かることはないと。


 そう理解して、首だけのオーガは笑った。


 オーガの口が何事か動く。

 その口からもう音がでることはなかったが、僕にはなにを言ったのか理解できた。


 ──楽しみだ、そうオーガが告げたのだと。


 オーガの首なしの身体が崩れ落ちる。

 もう、その身体が動くことはない。

 しかし、少しの間その身体から僕は目を離せなかった。


「……気味が悪いな」


 僕は短剣を拭い、直しながらそう呟く。

 身体には傷一つなく、負傷者もほとんどいない。

 完全な勝利と言ってい状況だ。


 ……けれど、僕の胸に合る感情は不安だった。


 それから目をそらすように、僕はオーガの死体から目をそらす。


 感嘆を隠さない声が響いたのはそのときだった。


「病み上がりとは思えない動きね……」


 その声に反応して振り返ると、そこにいたのは同じく魔獣を殲滅していたはずの、ライラさんとジークさんだった。

 その後ろには、大量の魔獣の死体と、その他冒険者達がいて、あのオーガが最後の魔獣だったことを僕は理解する。

 ……ということは、僕の戦いは全員に見られていたことになるのか。

 そのことに、少し気恥ずかしさを覚えつつも、僕は口を開く。


「病み上がりなんて言い過ぎですよ。初日で回復していたのを今まで休ませてもらっていたんです。もう大丈夫ですよ」


「……本当なら、初日どころか数日であの傷が回復することなんてあり得ないのだけどね」


「は、はは」


 そのライラさんの言葉に、僕はロナウドさんの人間ではありえない、という言葉を思い出してしまい、乾いた笑いをあげる。

 ……本当に僕の身体は、少しばかり異常かもしれないと思って。

 そんな僕の態度に心配そうな表情を浮かべたジークさんが口を開く。


「無理はしてないよな、ラウスト?」


「大丈夫です、ジークさん」


 そのジークさんの言葉に、僕は笑って告げる。


「さすがに、無理していてオーガとあれだけ戦えたりしませんよ。それに」


 そこで、僕は迷宮のある方向へと目をやって告げる。


「……明日に、もう一波乱あるのに、もう休んでいる暇はないですよ」


 そういいつつ僕はロナウドさんに言われた言葉を思い出す。


 ──迷宮暴走は五日周期で、大量の魔獣があふれ出すという言葉を。


 僕の言葉に、ジークさんとライラさんも僕と同じ方向へと目をむける。

 その顔に、隠しきれない緊張を浮かべ、ライラさんは告げる。


「もう少しで、迷宮暴走が始まってから五日目だものね」


 その言葉に、僕たち全員の顔に緊張が走る。

 そう、今日で戦いが始まって四日目。


 ロナウドさんが告げた勝負の時は、明日にまで迫っていた。

この度、治癒師コミカライズ3巻の発売が6月15日に決定致しまた!

これも全て、応援して下さる方々のおかげです!

本当に感謝しかありません!

後々活動報告、またはTwitterにて書影を公開させて頂く予定ですので、是非確認して頂けますと幸いです!

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