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パーティーから追放されたその治癒師、実は最強につき  作者: 影茸
二章 迷宮都市

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第80話 隠し事

ロナウド視点となります。

 その僕の言葉に、酔いからか顔を赤らめたラルマは、怪訝そうな表情を浮かべた。


「……ラウストについて知っていること? 私はお前と同程度の知識しかないぞ」


「ああ、ごめん。言い方が悪かったね」


 ラルマの勘違いに気付いた僕は改めて、告げる。


「ラウストの体質に関して、超一流冒険者ラルマの見解が聞きたい」


 瞬間、緩んでいたラルマの雰囲気が変化する。

 先ほどとは比較にならない鋭い視線で僕を見ながら、ラルマは問いかけてくる。


「なにがいいたい?」


「ラルマの体質は明らかにおかしいとは思わないかい? 気と魔力、つまりマナとプラーナを同時に扱える人間なんて、僕はラウストしか見たことがない」


「……ラウストが人間かどうか疑ってるのか?」


「ああ」


 ラルマの問いに頷き、僕ははっきりと告げる。


「僕はラウストは人間じゃない。──亜人じゃないかと思っているよ」


 そう、それこそが僕がラウストに本当に言いたかった話だった。


「たしかに、マナとプラーナを扱う人間、に関しては僕は知らない。でも、人間以外なら皆無じゃない」


「ドワーフ。……神の指もつ種族か」


 ラルマの言葉に、僕は頷く。

 そう、その代表的な例こそが魔剣を作ったドワーフだった。

 ドワーフこそ、マナとプラーナ両方使える亜人なのだ。

 その両方が扱えたからこそ、魔剣という頑丈な武器を精錬できた。

 人間が準魔剣の作り方に気づけたのも、ドワーフという前例があってこそなのだ。

 ラルマがラウストにもの作りの道を進めたのも、マナとプラーナの両方があれば、高度な精錬が行えるからこそ。


 ……とはいえ、それだけ条件があっても、僕はラウストがドワーフではないか、とは言わなかった。

 そして、その理由ににラルマが気付いていた。


「だが、初級までしか魔法も強化も使えないあの体質で、かつてのドワーフには遠く及ばない」


 ……ドワーフ、いや亜人というにはラウストは弱すぎるという理由に。

 僕がラウストに告げたように、ラルマもその結論に至っていた。


「わかっていると思うが、ラウストが無能であることは変わっていないぞ、ロナウド。たしかに、今のラウストは私達に次ぐ程度には強い。だが」


 そこで一瞬、誇るようにラルマは笑みを浮かべ、告げた。


「それは、ラウストが自分の能力を磨き続けたからこそ得られただけ──ラウストが特別なだけだ」


「……まあ、確かにね」


 その言葉に、僕は頷く。


「確かに、ラウストの能力自体は根本的に戦いに向いてないもんね」


「エルフ、ドワーフといった元来強力な能力を持つ種族に、ラウストが適しているとは思えない。……これは、お前も理解しているだろう?」


 ラルマの言葉を聞いて、僕は思案するように少し黙り、告げた。


「……やっぱり、ラルマの結論も変わらないか。ごめん、僕の考え過ぎだったみたいだ」


 そう話しつつ、実のところ僕は内心別のことを思う。

 これで、目的は達したと。

 これ以上、この話を広げる意味がなくなったと判断した僕は、さりげなく話を変えようとする。

 しかし、その前にラルマが続けた。


「……だが、少しラウストのことに違和感を感じないこともない」


「違和感?」


 思わず問い返した僕に対し、その顔に思案げな表情を浮かべたままラルマは告げる。


「いや、関係あるかもわからない違和感なのだがなな。……どうして私はラウストを迷宮都市においていってしまったのかと思ってな」


 ……もしかしたら、やぶ蛇だったかもしれない。

 そのことに僕が気付いたのは、その瞬間だった。

 とはいえ、それを表面には出すことなく、僕はラルマの話を促す。


「あのときは、相当ラウストも反抗していたからね」


「……それでも私なら、力付くで引っ張ってこれたはずだ。正直、馬鹿弟子程度に反抗されて、おめおめ引き下がる私ではない」


「まあ、確かにね」


「なのに、なぜ私はラウストを放置して王都に返った? ……せめて、あいつを任せられる人間がいたのならともかく」


「……確かに、そういわれると僕も違和感を感じる気はするね」


「だろう?」


 そう僕に問いかけてくるラルマの顔に浮かぶのは、ただただ解せないといった感情だった。

 それを確認し、僕は告げる。


「その違和感に関しては僕も何ともいえないけど、一ついえるとしたら、ラルマのその判断が今の僕達の希望の綱になった、それだけだね」


「……希望の綱?」


「そういえば、これはまだラルマにしてなかったね」


 そこで、僕は思わず苦々しい表情を浮かべながら、告げる。


「今回、僕はミスをラウスト達に尻拭いしてもらってたんだよ」


「……ラウスト達に?」


「いや、それよりもこういった方がわかりやすいか」


 少し、思案した後僕は改めて告げる。


「僕の思っていたよりも、確かにラウスト達は強かった。でも、それの何倍も──ラウストとナルセーナの二人は強かった」


 まだ指導してから、長い年月がたったわけではない。

 ……なのに明らかに化けつつある弟子を脳裏に思い描きつつ、僕は告げる。


「僕はそれを見誤っていてね、ラウストに不利な状態で戦わせてしっまてね。……ラウストは、本当によく持ってくれた」


「……最初から、ラウストとナルセーナに任せておけば、もっと安全に勝てたといいたいのか?」


「ああ」


 僕は間髪入れず、ラルマの言葉を肯定してみせる。

 ふと気付くと無意識のうちに口角がつり上がっていて、僕は自分がたかぶっていることに気付く。

 しかし、それも仕方ないだろう。


 それほどに、ラウストとナルセーナはそれほどに異常で……間違いなくこの状況を打開するための鍵なのだから。


「おそらく、今回の迷宮暴走を耐えきるための鍵は、あの二人だ」


 僕はラルマに笑みを浮かべながら、断言する。


「現段階の二人なら、僕の方が強い。単純に変異した超難易度魔獣に囲まれただけの状態なら、僕の方が生き残れる。だが、今の状況で必要なのは、どれだけ早く倒せるかという殲滅力だ」


「そして、その状況においてラウストナルセーナ以上に重要な鍵はない、そういうことか」


 ……そう僕の言葉を続けたラルマの顔には、酒だけでなく興奮の為に上気した表情を浮かべていた。

 実のところ、ラルマが入れ込んでいるのは、ラウストだけではないことを知る僕は、内心笑いつつラルマの言葉を肯定する。


「ああ、今からの勝負はラウストとナルセーナを中心に展開する。──僕たちを含め全員が、二人が最大限動ける状況を作るためだけに奮闘する」


「……ま、精々やってくれるよう祈っているさ」


 小さく僕の言葉に相変わらずの憎まれ口をたたくラルマ。

 その顔には、隠しきれない喜色が浮かんでいた。

 しかし僕は、それが本心でないことを知りつつあえて強く告げる。


「いや、必ずやってくれるさ。あの二人なら」


「……そうか」


 素っ気ないラルマの言葉。

 けれど、その緩んだ顔は僕でなくとも、気づけるほどに緩んでいた。

 そして、それを確認して僕は続ける。


「だから、もう少し弟子を信用してもいいと思うよ、ラルマ」


「突然何の話だ?」


 ……もう一つの確認したいことへと。


 まだ僕の内心に気付いていないのか、ラルマは少し潤んだ目のままこちらを見ている。

 そんなラルマににっこりと笑いかけて僕は告げる。


「ラルマ。障壁に関して、なにか僕たちに隠していることあるよね」


「……っ!」


 ──ラルマの顔が蒼白に変化したのは、その瞬間だった。

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[良い点] ラウストの秘密。 [気になる点] 魔王も登場しますか? [一言] 感想、返信しないのですか?
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