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ディスペル  作者: SIN


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122/122

情報

 ラミアの事を訪ねておきながら、アクアからの質問には答えられそうにないから、怪我を理由にして細かい説明を省略しよう作戦は、俺を最大限に警戒したアクアによって弾かれてしまった。

 こうして話せる機会が今後もあるのかも分からないし、日を改めている時間もない。だから「怪我をしているから長くは話せない」とした設定を忘れてもらわなければ。

 「…俺が天使だった頃に1度会ってるっぽくて。でも俺は天使だった頃の記憶がないから、ラミアって名前しか分からないんだ。だけど、会わなきゃならない気がする」

 嘘は1つもついていない。

 「それは分かった。しかし、分からないとしておきながら、何故俺やカフラにラミアの事を聞こうと思った?」

 それは…。

 「アクアがラミアと同じ悪魔だから、それで何か知ってるんじゃないかな?って」

 これも嘘ではない。

 「それも分かった。じゃあ、俺が悪魔である事を何故知っている?」

 それは前に教えてくれなかったっけ?確か“魔石”の中に長年いたにも関わらず飢えなかった理由をアクアとラミアに…。

 はっ!

 駄目だ、その話しを聞いたのは前回の俺であって今の俺じゃない!早急に誤魔化さないと。

 「俺とカフラが生きてた時代って、今よりもかなり前でしょ?で…“魔石”の中の友って契約者の生命力で飢えを満たしてる。それなのに俺の友とカフラの友が現代でもピンピンしてる理由を色々考えた結果“奪う者”か“悪魔”かの2択になったんだ」

 ちょっと、苦しいかな?

 「天使でも良い所を、悪魔と言い切れた理由はなんだ?」

 もー、どれだけ警戒してんのさ!

 「天使だったんなら、元天使のルルちゃんが知らない訳ないからね。ねっ」

 あ、サラッと元天使だなんて重要そうな事言っちゃった…。

 「そうですね。アクアという名の天使はいない」

 「貴様が知らなかっただけで、随分と決め付けた言い方だな」

 何?急に険悪!?

 「天使の顔と名は全て記録されている」

 全て。

 天使だけじゃなくて人間と魔族の分もだ。しかも1人1人、1匹1匹の運命までもがきっちりと。そんな中で唯一なにも記録されていないのが悪魔。

 なんて俺が説明したら駄目なんだろう。俺じゃなくても、こんな天使事情を悪魔に話す理由はないか。

 人間が昇天した時も、魔物が昇天した時にも天使が魂を導きに来るって所で察する事は出来そうなものだけど。

 「…察しの通り、俺もラミアも悪魔だ」

 ラミアもって事は、ラミアは存在している上にアクアと顔なじみなのか。だったらディルクを餌にしないでって伝えれば、なんとかなるかも?あ、でも聞きたい事があるから、結局は会いたいんだけど。

 「今は何処にいるのか分かる?」

 魔界だって言われたらそれまでか…なら、何をしてる?会わせて欲しいと素直に頼むのが1番良いのかも知れない。

 ただ…アクアは俺に対して…俺達に対して警戒心を抱いているから、簡単にはいかないだろうな。

 「応える義理はない」

 フンと視線を俺から外したアクアは腕を組みながら不機嫌さを隠そうともしない。

 そりゃ、カフラを倒した“黒き悪魔”を勝手に友に迎えてしまった俺に対する怒りは、分かるよ?分かるけど…んー…でも、このアクアの態度の方が正解のような気がする。

 そうだよ、サクリアもディルクも恭治もカフラも寛大過ぎると言うのか、事情の飲み込みが異常に早いというのか…。

 だけど、なんとなく見えたよ。

 「アクア、ちょっと耳貸して。ルシフェルは“魔石”に戻って」

 チョイチョイと手招きするとアクアの目がこっちを向いたから、もう1度ルシフェルに“魔石”に戻るように言って、再度手招きした。

 ルシフェルが“魔石”に戻ってから10秒程でアクアは2歩近付いて体を屈め、俺に耳を向け

 「なんだ?」

 と一言。

 ちょっと遠いけど…まぁ良いか。

 「ラミアの居場所を知っているなら教えて欲しい。その代わり、教えてくれたらもう2度と屋敷には戻って来ない。これでどう?」

 言い終えて少しは無言のまま俺を見てくるだけだったアクアは、少し振り返り、今は廊下にいるディルクと談笑しているカフラを見てからルシフェル入りの“魔石”をチラリと睨み、最後に俺を見た、

 「詳しくは分からない。最後に会ったのも随分と前になる」

 情報をくれると言う事は、交渉成立かな。

 「随分前って、どれ位?」

 「お前が樹海から戻って来る少し前に、用心棒の仕事で立ち寄った港町で」

 港町で見たって事は、まだ屋敷には来てない?いや、魔界ではなく人間界に姿を現しているのなら屋敷に来ている可能性はあるし、ディルクと接触している可能性もある。

 「何をしてた?」

 「お前は俺達の食事方を知っているんじゃないのか?」

 あぁ、食事してたのか。

 「何か話した?」

 「他愛ない世間話だ。お前にとって重要になるような事はなにもない」

 世間話できるほどラミアと仲が良いと分かったんだから、十分に重要な情報なんだけどな。それにちょっとの事でも知りたいんだけど…世間話の内容まで聞きだすのは流石にやり過ぎかな?

 なら最後。

 「ラミアはまだ港町にいると思う?」

 「どうだろうな。人間の多い場所を好むから、酒場なんかは比較的会いやすいと思う」

 ラミアの居場所は、餌となる人間が沢山いる場所、か。確かに酒場は旅人やら商人やら用心棒が出入りする場所で、情報交換の場でもあるから人間は沢山いる。

 動けるほどに回復したら、この町にあるバーの張り込みから始めようかな?それともディルクが狙われる瞬間をおさえる?

 あ、でもアクアから情報を聞く条件として屋敷には2度と戻らないって言ったんだっけ。屋敷には“戻らない”んだから、外出をしない限りは大丈夫かな?

 まぁ、詐欺にならない程度にしないとね。

 屋敷にいない方が良いかも知れないってのは元々考えていた事。ただエドに薬の知識を付けたいが為にこうして伸ばし伸ばしにしてただけで…もし雪山とか樹海に薬草を取りに行くって言ってエドが着いて来てくれるんなら、別に屋敷にいなくても問題ない。着いて行かないって言われてもサクリアの店の2階を使わせてもらえれば良いから、これもまた問題ない。

 「今度ラミアに会ったら、ディルクを餌にしないで欲しいって事と、俺が会いたがっている事を伝えて」

 「覚えておく」

 これでよしっと。

 「ありがとう。今日はもう疲れちゃったから休む事にするよ。カフラもありがとう」

 特に挨拶もなく“魔石”に戻ったアクアと、

 「うむ、あまり無理をするでないぞ」

 ソッと部屋の扉を閉めたカフラ。そしてノソリと恨めしそうに“魔石”から出てきたルシフェルと、ポチとペペまで。

 「何を耳打ちしたのですか?」

 始めはあんなにも協力的ではなかったアクアが、耳打ちの後からポンポンと情報を話した事が相当気になるようだ。

 まぁ、本当の事を言っても良いんだけど…廊下にはディルクもいるし、また今度にしよう。

 「怖い顔のルルちゃんは、話しが終わるまでは出さないよーって」

 納得はしてくれないんだろうけど、今話す気がないってのは伝わるだろうって思ったんだけど…。

 「そ、そんなに怖いですか?」

 「えぇー!?お前それ無自覚かよー。怖いどころの騒ぎじゃねーぞ?」

 「ポチ、貴方は人の事言えないわよ?」

 「え?俺もこんな極悪非道面してんの?」

 「極悪非道面…」

 なんか、色々大丈夫そうだ。

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