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ディスペル  作者: SIN


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121/122

聞き込み

 寝返りがうてる程にまで回復した体は、ギシギシとした動き辛さはあるものの、四六時中延々と激痛だった時期を終えた。

 だからって起き上がれるわけでもなく、食事がとれるわけでもなく……本でも読めればまだ良かったんだろうけど、それもまだ出来なさそうで。

 とは言え、ここへきて俺の回復スピードは大幅に上がっている。

 それが何を意味しているのかは良く分からないけど、羽が生えてくる前兆と考えるとかなり自然だ。

 この調子だと明日か明後日には起き上がれる位には回復しているだろう。

 そうなったらエドが何処まで行ったのかを聞き出して、俺もそこに……行かせてはくれなさそうだけど。

 「あー。暇だなぁ~」

 喋るとまだ肺から肋骨にかけてジィンとした痛みが出るけど、激痛ではないから会話は可能。

 唯一の暇つぶし方法だというのに。

 「折角回復が進んでいるのですから、そのまま大人しくしてください」

 唯一の話し相手であるルシフェルが、即効で会話を終了させにくる。

 確かに黙ってジッとしていれば回復は更に進むんだろうから、ルシフェルの言葉は誰が聞いても正解に違いない。

 けどさ、暇なんだからしょうがないでしょ?少し位は愚痴ったって良いじゃん!

 はぁ……愚痴ってどうするんだよ。

 これからの事と、これまでの事を整理するのに丁度良い時間じゃないか。

 だけどエドの事を思えばこれからなんて考えたくないのが正直な所。

 いや、助けたいんだから何よりも深く考えなきゃならないんだ。

 でも、色々聞きたい事があるのに本人がいないから……。

 じゃあ何を考えれば良いんだろう。

 やるべき事の順番?

 えっと……樹海とエドの出身村の様子を見に行って、そこでお城の兵士さんが村に滞在してたら逃がさないと。

 あの村の人間は魔物だけではなく、魔物と関わる全てのものに対して容赦がない。

 それが全うな理由なら仕方がないとは思うけど、魔物の仲間かもしれない。という不確かな思い込みだけで兵士さんを皆殺しにして、建物に火を放つほどだからね。

 エドの出身村だから言葉悪くは言えないけど、どう控えめに表現したって二度と関わりたくない人間の巣窟。としか出て来ないや。

 それでも1度は様子を見に行かなきゃならない。

 もし前回と同じように樹海の魔物と村の間で戦いが始まっていた場合、戦っている最中の兵士さん達をどう説得して帰ってもらえれば良いんだ?

 大量の薬草を手土産にしたとしても、村を襲う魔物に背を向けて退却はしないだろうな。エルナさんは特に。

 なら村には一切立ち寄らずにこっそり樹海に行って、そこで直接ボスとやり取りした方が早いか?

 その時にエドも一緒に連れて行って……友を開封するのかしないのか選んでもらう?

 前回は喧嘩別れみたいな感じになっちゃったけど、落ち着いて話す時間と切欠があれば、円満開封になるかも知れないし……もしかしたら開封しないでも済むって選択肢が出るかもしれない。

 よし、それで行こう!

 でー…後はなにがあったっけ?

 ラミア!そうだよ、現在ラミアがカフラの友じゃないって不思議現象も解決させないと駄目なんじゃないか!

 ラミアは魔物ではなくて悪魔。

 カフラの友として“魔石”に封じられている間も契約者であるカフラの生気ではなく生き物の生きた時間を食べて生きていた。

 確か……囁きを聞かせて餌認定をした生き物から……だったかな?

 それで前回はディルクが餌認定を受けて魔界にお持ち帰りされそうになったんだ。

 もしラミアがこの世界にも存在しているのなら、ディルクを餌としてマークしている可能性は高いだろう。

 そうなればカフラにも気がつく筈だけど、ラミアとカフラって今の世界で接点はあったのだろうか?

 いや、接点があったのなら友になってる筈……そうだ、アクアにラミアについて尋ねてみるのが1番確実じゃないか。

 えっと、なら起き上がれるようになって真っ先にする事は、部屋の外で俺が脱走しないよう見張っているディルクに何か……囁きを聞いたかどうかの確認をして、その後カフラを呼んでもらってアクアに話しを聞いて、エドの依頼の事を聞いて、迎えに行って……そのまま樹海に。とはいかないか。

 樹海となれば遠出になる訳だから、ちょっと動けるようになったからといって外出許可が下りるとは思えない。

 すぐ傍の草原で薬草を摘みに行くのだって咎められる可能性があるほどだ。

 「ん~……」

 何か良い方法はないだろうか?

 皆を納得させられるような言い訳とか……。

 「はぁ……良い方法がありますよ」

 え!?

 なに?

 俺声に出して悩んでた!?

 「なに?」

 「しっかりと休んで怪我を治せば良いのですよ」

 あー、なるほどね。そうきましたか。

 正論だよ、うん。物凄く正しいよ。

 でもさ、正論で片付けられるほど単純な話しじゃないからね!

 いや、まぁ……ね。何よりも先に怪我を治さなきゃならないってのは、自分でも良く分かってるよ?だからこそ悩んでるんじゃないか。

 「大人しく寝てるから、ディルクとカフラを呼んできて」

 話しを聞くだけなら別に構わないよね?

 ルシフェルの言う大人しく寝てろってのが、話しもせずに黙って寝ろって意味だとしても。

 「……分かりました。その代わりベッドからは1歩も出ないでください」

 仕方なく承諾してくれたルシフェルが部屋を内側からノックすると、カチャリと鍵が開いてドアが開き、ルシフェルは外へ、そしてディルクが部屋の中までは入って来ず、

 「俺に何か用事か?」

 と。

 「ラミアって悪魔知ってる?えっとね、下半身が蛇で、上半身がヒト型の女性なんだけど」

 あれ?これ、上手く伝わらなくないか?

 「ペペの事か?」

 やっぱり!

 ペペは普段人の姿をしているけど、ノンビリしている時は下半身が蛇で、上半身が人の姿なんだよ。もっとリラックスしてる時は完全な蛇になってるけどね。

 じゃなくて、もっとラミアの特徴を伝えないと……。

 「ペペは白いけど、ラミアは赤茶色っぽくて模様があるんだ。後は……悪魔だから空間を割って出てくる感じかな?」

 屋敷の中でそんな現象が起きればサクリアがスグに気がつくだろうから、可能性があるなら塔で見張りをしている間か、塔までの移送中か……サクリアがいない日中か。

 「いや、悪魔を見た事はない」

 見た事がない、か。なら、

 「囁きは?聞いてない?」

 「誰の?」

 誰の?って……ここまでの流れを完全に無視しないで。

 「ラミアの」

 「会った事もないんだ。例え話しかけられていても、分からないとしか……」

 確かにそうか……。

 人ごみの中とか街中で知らない人に話しかけられたのならまだしも、囁かれたなんて気が付かない可能性もあるのか。

 具体的に何を囁かれるのかは分からないんだけどさ。

 俺もラミアに100年という時間を食べられたんだから囁かれた筈なのに、それがいつなのか全く覚えになかったしな……。

 ディルクに色々聞いても無駄なのかも?

 「えっと、ありがとう。それが聞きたかっただけなんだ」

 起き上がることは流石に難しいから、手だけでも振ろうと布団の中から手を出したんだけど、挨拶はいらないとでも言わんばかりに首を振ったディルクは、片手を軽く挙げてドアを閉めた。

 それからしばらく後、ルシフェルに連れられてカフラが部屋の中に入ってきた。

 チラリと見えた廊下には、仁王立ちして見張りをしているディルクがいる。

 今見る限り元気そうだし、大丈夫かな?

 「主よ、まだ茶は飲めぬのか?」

 真っ先に茶の確認とは、カフラらしいよ。

 「やっと話せるようになっただけだから、まだ当分何も口に出来ないかな」

 お腹がすいたと感じても、大事をとって1日は我慢した方が良いかな?それとも重湯なら食べられるかも……じゃない。

 「して、我になんの用事だ?」

 ディルクと同じような確認の仕方をするんだなぁ。まぁ、他に言いようもないんだろうけどさ。

 「えっと、アクアにも聞きたい事があるんだ」

 頷いたカフラが“魔石”からアクアを呼び出してくれて、2人で俺の前に並んで立ってくれた。

 ルシフェルとポチとペペがラミアの事を聞き出そうとしている俺を邪魔しなければ良いけど……少し聞き方を変える?

 それともストレートに聞く?

 いや、さっきディルクに聞いた時は大丈夫だったじゃないか。

 「……ねぇ、ラミアって悪魔知ってる?」

 カフラは分からなくても、同じ悪魔のアクアなら会った事はなくとも、名前位は知っているかも知れない。

 「何処でその名を知った?」

 知ってるようだ。

 ラミアの魂は完全に消滅した。とかルシフェルは言っていたけど、それは前回の話しであって今じゃないんだな。

 けど、ラミアの名前を何処で知ったのか……まさか細かく説明する訳にもいかないしどう答えたら良いんだ?

 よし、ここはガッツリと怪我人である事を利用しよう。

 「長くは、話せないから……詳しい事は……後日という事で……」

 これでどうだ!

 「なら俺も後日話そう」

 そうくるとは!

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