運命とは
痛いなぁ。なんてボンヤリ思いながら、怪我で寝込む頻度の高さに自分で少し笑った。
前はなんだっけ?
いや、時間を戻って“蘇りの奪う者”としての人生?をやり直してる訳だから、今回が初めての怪我って事になるのかな?
だとしたら、怪我をするタイミングってのは何度やり直した所で決まっているのかもしれない。
痛覚を飛ばしてるんだから、普通の人間では死んでいるレベルの怪我だ。
死ぬってのは運命によって決まっているんだから、やり直しても、気をつけていても無駄なのだろうか?
こんな事なら、もっとちゃんと自分が怪我をした理由とか寝込んだ日数とか日付までしっかり覚えとくんだったな……。
なんて頭の中で暢気に考えていても、口から出るのはどうしようもなく出てくる呻き声なんだから嫌になるよ。
これでもドラクルの部屋に連れて行かれた時よりもマシだってんだからね。
骨の位置は戻ったし、足の腱もそこそこ安定してきたと思う。腕はちゃんとくっ付いてるし、痛んだ内臓もまぁまぁ大丈夫、かな?
痛覚が戻った今となっては最早何処がどう苦しいのかなんて分からないほどに全身が満遍なく痛い。
痛み止めは飲んでるんだけど、あまり効き目を感じないから……まだ内臓もそこそこ悪いのかもしれない。
呼吸には問題ないから吸引タイプの痛み止めがあれば良いんだけど……部屋の外にいるディルクにも聞こえるレベルの声を出すのは非常に難しい。
隣にいるルシフェルにすら何も伝えられないんだから。
首でも切り落としてくれたら良いんだけどな……確実に痛覚を吹き飛ばす重症になるんだけど、こんな満遍なく全身が痛い状態より絶対にマシだと思うんだよ。
回復がある程度進んでから首を繋げて貰えれば……。
首がない状態の体が回復するかは、分からないから現実的ではないか。
今後のためにも、皆の反対を無視してでも色んな人体実験をしておかないと。
けど、流石に首を切り落としてくれって願いは、まぁ過激だよね。
回復がもう少し進んで歩けるようになったら魔王島の痛み止めの解析と……そうだ、前回にこなした依頼も思い出さないとな。
何があったっけ?
最後に受けたのは、港町のバーでのバイトだ。
そうそう、エドだけフリフリのドレスを着せられてさ……俺は天使の羽があったから厨房から出ないようにって言われたっけ。
じゃあ、その依頼が今回もあった時に俺の背中に羽がなかったら、エドと同じようにドレスを着せられるのかな?
うわ~……駄目だ、絶対に似合わない。
エドは筋肉凄いけど小柄だし着痩せするタイプだからギリ似合ってたけど、俺は体作りもしてないからヒョロヒョロしてて貧相だから、ドレスなんて着てもスポンとずれ落ちて脱げそうだ。
特に今は食事も取れない状態で骨と皮しかないし……そのくせ下腹部だけがポッコリとした餓鬼体系だし……。
じゃなくて、他にも依頼はあった筈。
アンさんの依頼は終わったし……えっと、依頼……あれ?依頼よりも重要な事が起きたじゃないか!
そうだ……そうだ!
エドの出身村と樹海の魔物との間で戦いが起きたんだ。
それで薬草が足りなくなって……あぁもう!なんでこんな大事な事を後回しにしてたんだ?
樹海の魔物のボスを樹海に戻したってだけで完全に解決した気でいたよ!
でも樹海の魔物がエドの出身村を襲った理由はボスを奪われた報復攻撃……その戦いの切欠であるボスを戻したんだから、本当に解決した?
だったらエドの友はどうなる?
エドの友はボスのご子息とその従者で、ボスと一緒に樹海に戻ったんだ。
今エドは何処にいる!?
そう言えば痛覚が戻る少し前までは窓から目だけが見えていたのに、ここ数日は見ていない。
クソッ!こんな時に羽があったら気配を探ってエドが屋敷内にいるのかだけでも確認出来るのに!
「あ…」
ちょっと待って。
あれ?
え?
ちょっと待って。
俺は今さっき思ったんだ。
怪我による寝込みが多いなぁ~って。
でも、時間を戻ってきたから、今回の怪我が最初の寝込みになるのかな~って。
で、痛覚を飛ばすほどの怪我は人間で言う所の死になる訳だから、運命で決まってる事は何度やり直しても変わらないのかな?って……。
何度やり直しても、変わらない。
それは、つまり……エドが昇天する未来は変えられない?
大変だ!寝てる場合じゃないよ!
「ルシッ……エド、何処?」
連れてきて欲しい。それが無理なら窓から目を見せて欲しいって頼んできて欲しい。声だけでも良い……だから、屋敷の中にエドがいる証拠を見せて欲しい。
「少し前に依頼に出かけましたよ」
依頼に?
人には無告知で依頼に行くなとか言っときながら、自分は黙って行くのって酷くない?いや、ルシフェルは知ってるんだから、黙って行った訳ではないのか。
「何処、まで?」
もしかしたら港町のバーかな?だとしたら……エドは今頃ドレス姿なのかなーじゃない!エドはそのバーからの帰り道で昇天したんだ!
昇天する原因となった俺はここにいるんだけど、運命ってのが本当に変えられないものなのだとしたら……。
「簡単な依頼と言っていたが、何かあっても厄介だとピヨを共に行かせましたよ」
溜息なんかを吐きながらルシフェルはかなり安心出来る事を言ってくれた。
バーでのバイトなら簡単な依頼とは言わないのだろうし、何かがあった時もピヨならしっかりとエドを守ってくれるだろう。ただ、エドの中でどのレベルまでの依頼が簡単な依頼になるのかは分からないけど。
「帰って、きたら…」
「分かりました。戻ってきたら知らせます」
帰ってきたら知らせてくれるんなら、それまでに喋れるほどには回復しておかないと。
エドには色々聞かなきゃならないし、確認しなきゃならない事だってある……しかも早急に。
バーの依頼が来るまでには何か対策を考えないとね!




