キラキラ
少し動くとビリッと痛みが全身に広がって、後は何も感じなくなる。
そんな一瞬だけえげつない程の激痛生活を続ける事半日程度、ルシフェル曰くドラクルが魔王島に戻ってきたらしい。そしてポチ達も。
港からここまでどれ位の時間がかかるのかは分からないけど、ポチ達が一緒にいるのなら、きっと10分もかからないのだろう。
「キリク無事か!?大丈夫か!?」
おぉっと…。
まさか、1分もかからないとは思わなかったよ。
けど、戻ってきたのは1番移動が早いというポチ1人みたいだ。
「まだ大丈夫。今のうちにドラクルに挨拶して帰路につきたいかな」
「まだ大丈夫?」
盛大に首を傾げてしまったポチに細かい説明をしようとしたのだが、
「痛覚まだブッ飛んでんだよ。で、痛覚戻ってないうちに帰りたいってさ」
エドが完璧に代弁してくれた。
「え?どゆ事?」
傾げたまま質問を続けるポチ。今度こそ説明をと思ったのに、
「ドラクルに元気な姿を見せて帰りたいそうだ」
ルシフェルが完璧に代弁を…。
「そう言う事なら、連れて来る」
スグに把握したポチは窓から出て行き、そして3分ほどしてからドラクルを小脇に抱えて部屋に戻ってきた。
流石に窓からではないけど。
「おかえりー。リッチには会えた?」
小脇に抱えられているドラクルに向かって、少しばかり大袈裟な笑顔を向けて手などを振ってみる。
「お帰りって…。うん…兄貴には会えたよ。そしてもう当分会いたくない」
床に足を付け、乱れていた髪と服を調えながら、ドラクルはプゥッと頬を膨らませた。
あれだけ必死になって開放を願っていたリッチに対して、当分会いたくない?
「なにかあったの?」
まさか戦闘になったとか?だとしたらポチがこんなにも落ち着いている訳ないし、真っ先に報告がある筈だし、こうしてピヨとペペを置き去りにしてドラクルだけを連れて来る事もないだろう。
でも、たいした事がないならこれほどまでの膨れっ面を浮かべる意味が…
「人の事チビチビって!でかくなるまで絶対会ってやんねーんだ!!」
あ~…。
これ、笑っちゃ駄目な所だよな?でも、なんと言うか…微笑ましいと言うか、平和というか。
「あははは」
ポチですら笑いを堪えているという中で、エドさん容赦なく大笑い!
笑顔が見られて俺は嬉しいんだけど、この状況ではね、流石にね?だからもう強引に話を進めよう。
「えっと…じゃあそろそろ帰るね」
痛覚がないうちに屋敷に戻れたら良いんだけどな…船の中でスコンと痛覚が戻ったらどうしようかな?薬もないし、病院もないから、ちょっとした地獄になるかな?下手すると商人の島で一旦休憩って事にもなるかも知れない。だったら体に負担がーとか言ってる場合でもないし飛んで帰った方が結果的に安全かも?
「帰るのか……」
床とかシーツを何度も血に染めてしまった俺の事を少しは惜しんでくれているのか、ドラクルは寂しいと呟くから、さっきまでは大笑いしていたエドの表情が見る見るうちに無表情に…。
俺が帰るって言ってるんだから、ここでドラクルが、例えば“帰さない”とか言っても帰るよ?1人じゃあ出来ないんだろうけど、ここにはエドも、ルシフェルも、ポチもいるんだから強行突破が出来るでしょ?
「大きくなったらリッチに会いに行くんだよね?その時に俺とも会ってよ」
帰路についての相談は、まずはこの部屋を出てからにしよう。そうと決まれば窓からおいとましよう!
ゆっくりと足を床に下ろして体重をかけようとしてビリッと走る激痛。少し表情に出てしまったらしく、ルシフェルが慌てて手を貸してくれて、それで立ち上がる事は出来たのだがジンジンと少しの間痛みが続き、プツリと痛覚が消えた。
マズイな、痛む時間が少し延びてる。
「あ、ちょっと待った。えっと…コレ…俺の血で作った結晶を加工したんだ」
笑顔で手を振りながら和やかに窓から立ち去ろうとする俺達を呼び止めたドラクルは、少し気まずそうにポケットから赤色の綺麗な…なんだって?
吸血種族であるドラクルが、自分の血を結晶化して作った?え?それって結構大変な事なんじゃないの?
一生のうちにそう何個も作れるような代物じゃない事は分かる。
「綺麗な色だね」
そんな宝物ともいえる結晶を見せてくれるなんて、友好的な証だ。言葉は少ないけど、もしかしたら友達になろう。とか思われてるのかも?だったら嬉しいなぁ。
「そ、その…似合うと思って、さ。作ったんだ」
ん?
「あっ、ペンダントになってるんだね!確かにドラクルに似合うと思うよ」
最高のアクセサリーを着けて会いに行った兄にチビ呼ばわりされたら、そりゃ確かに膨れっ面にもなるか。それでも微笑ましい事には変わりないんだけど。
「俺じゃなくて!キリクにさ…迷惑、かけたし?その…それに!船の中って暇だったし、それで、ついで!ついでだから!」
俺に!?
ついでで作れるような物じゃないでしょ…って事は…え?受け取って良いのだろうか?だってこれはドラクルの血液で出来た宝石。吸血魔物の命とも言える血液がふんだんに…いや、ふんだん所じゃないよ。まじりっけなしの血液100パーセントの宝石。これ1つ作るのにどれだけの魔力と命が必要だったのだろう?
そんな物凄いネックレスは俺なんかじゃなくて、家族とか、将来を使った相手に渡すのが大正解!だというのに、いつまでも受け取らない俺に痺れを切らしたドラクルはゆっくり近付いてくると俺の首に両手を伸ばし、パチンと着けたんだ。
フワリと微かに感じたのは優しげな空気?気配?
天使に戻りきれていないから気配を感じる事が出来ない筈の俺にも分かる位だ、相当な力を秘めたネックレスなのだろう。
本当に、もらっても良いの?ここまでされて返すのも失礼なのかな?
「ありがとう。大事にするね」
だけど、返して欲しくなったらいつでも言ってね。それまでは大事に、大事にするから。
「そ、そんなのいつでも作れるしっ!今度はもっとデカイの作るし…」
いつでもは無理でしょ!?これより大きなものって、無茶だよ!
リッチに会って無事を確認出来たからなのかな?なんだか一気に弟って感じだ。
「宝物にするよ。それじゃあ…またね」
さて、今度こそ本当においとましよう。
「またな!」
窓から飛び出して気付いた事1つ。
そうだった、俺ってまだ羽生えてきてなかったんだった…とか後悔するよりも早くルシフェルが俺を抱えて飛んでくれて、俺と一緒に窓から飛び出したエドとポチは飛ぶでもなくそのまま急降下、着地と共に1回転し、何事もなかったかのように走っている。
あの高さから落ちて無事って…ポチはともかく、エドの体はどうなってんだ?武器を使わない戦闘スタイルだから、体の鍛え方が違うのかな?
怪我が治ったら俺も鍛えてもらおうかな…。




