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お隣さんのギャルが僕を惚れさせたくて全力過ぎる【リメイク前】  作者: 枩葉松@書籍発売中


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第28話 ベストカップルコンテスト

 文化祭二日目。

 店は昨日以上の忙しさに襲われ、僕は朝からひたすらパスタと格闘していた。


 昼時を過ぎても客足は途絶えず、作っても作っても注文が入る。

 そして、午後二時半頃。僕はあることに気づき、「おい!」とチラシを取りに戻って来た平太を呼び止める。


「材料が足りないぞ! 早く買い足さないと!」

「あー、そうか。意外と早かったな」


 今入ってる注文分は問題ないが、これ以上客が入れば作れなくなってしまう。

 そんな非常事態だというのに、平太はさもわかっていたかのような顔で言う。


「少なめに買ってたんだよ。二日目は途中からデザートだけの提供にしようと思ってな。デザートなら、真白が作り置きしてくれてるのを出すだけで済むし」

「は? いやでも、まだまだ客は入るだろ?」

「昨日はあんなに忙しくなるなんて、誰も想像しなかったからな。流石にお前にも休んでもらおうって、皆で話し合って決めたんだ。……お前も暇な時間あったら抜けさせてくれって行ってただろ。天城が待ってるんだから、ちょっとくらい遊んで来いよ」


 「ほら見ろ」と、平太は店内へ目を向けた。

 厨房から顔を出すと、端の方の席に杏奈が座っていた。僕に気がつき、はにかみながら手を振る。


「今入ってる注文片付けたら、あがってくれていいから。ついでに自分の分も作って、天城と食って行けよ。あと、給料はちゃんと満額払うから心配すんな」

「……小学校の頃から思ってたけど、平太って意外といいやつだよな」

「意外って何だよ。給料カットすんぞ」


 「それじゃ、俺は行くから」と肩を叩かれ、平太は再びチラシを配りに行った。

 その背中を見送ってからフライパンに視線を戻し、僕はラストスパートに取り掛かる。



 ◆




 遅めの昼食を終えて、僕と杏奈は文化祭へと繰り出した。

 昨日はトイレへ行くのも忘れて厨房に張り付いていたため知らなかったが、想像していたよりずっと賑やかだ。アニメキャラのような服装でチラシ配りをする生徒や立ち並ぶかなり凝った出店の看板、窓の外へ目をやれば中庭では軽音部によるライブが開催されており、音に合わせて着ぐるみの集団が踊っている。


「で、どこ行くんだ?」

「ないしょー」


 行きたいところがある、という杏奈に連れられ、人ごみの中を縫って歩く。

 はぐれないようにと繋がれた手。美墨に見られたらどうしよう、という不安はあったが、しかし確かにはぐれては面倒だ。これは仕方ないこと、仕方ないこと……と言い聞かせながら、彼女からの熱を享受する。


 人にもまれて、押されて、手がわずかに解けた。

 たったそれだけで妙に不安になり、焦り、急いで握り返す。


「痛っ」

「あ、ご、ごめん」

「もーっ。気をつけてよね」


 言いながら立ち止まり、繋いでいた手を離した。

 まずいことをした、と青くなる僕に、「こうするの」と再度指を絡める。


「こうやって、ほら、優しく。ね、わかった?」

「お、おう」

「しっかりしてよ。そんなんじゃ優勝できないよ?」


 ため息を漏らして、杏奈は歩き出した。


「……優勝?」


 何のことかわからず首を傾げながらも、杏奈はぐいぐいと前へ進む。

 五分ほど歩いて、体育館についた。すごい人だかりだ。

 何か催しものでもあるのだろうか。そう思いながらキョロキョロしていると、「いたー!」と生徒会の腕章を着けた男子生徒に指を差される。


「遅いぞ! もうみんな揃ってるんだから!」

「すみません、ちょっとご飯食べてて」

「わかったから、早く行って! ほら走って!」


 杏奈に引っ張られて壇上の方へ走りながら、僕はそれを目にした。

 壇上に設置された垂れ幕。そこにはデカデカと、ベストカップルコンテストと書かれていた。



 ◆



『ただいまより! 生徒会主催、第七回ベストカップルコンテストを開催します!』


 司会の開催宣言に、数十人の観客たちは一斉にワーッと湧いた。


 参加カップルは八組。……その中の一組が、僕と杏奈だ。

 舞台裏へ行くなりブレザーを剥ぎ取られ、代わりにTシャツを着せられ何もわからないまま壇上にあげられた。ちなみにTシャツには、「LO」と書かれている。杏奈のTシャツには「VE」とプリントされており、恥ずかしいことこの上ない。


「おい、僕はこんなの参加するなんて聞いてないぞ……!」

「エントリーしといたって、一昨日言ったじゃん」

「僕がいつ了承したんだよ……!?」


 小声でのやり取りは、『それでは、コンテストの概要を説明します!』という司会の声に遮られた。


 コンテストでは、三つの戦いを制してより多くのポイントを獲得したカップルが勝者だ。

 まず最初はクイズ。生徒会が事前に彼女側に取材し、それを元に制作されたクイズで、彼氏なら絶対に回答できて当然のものらしい。

 その次は、ラブレターの朗読。彼女側が書いたラブレターを観客の前で読み、より多くの拍手を得たカップルにポイントが入る。

 最後は歌。デュエットソングを歌って、お互いの相性を確認する。


 ……もう本当に、頼むから帰して欲しい。

 僕は彼氏じゃないのに、何でこんなことに……。


『それではまず、彼氏さんの本気度が丸わかりになっちゃうクイズからー!』


 舞台裏から黒子たちが出て来て、マーカーとフリップボードを渡された。

 杏奈から「頑張ってね」と小声で応援されるが、本気もクソもない僕は何を頑張ればいいのだろうか。


『第一問! 彼女さんの好きな食べ物はなんでしょー! ここで求めるのは、一番好きな食べ物です! それをどういう風に食べるのが好きかも添えて、回答をお願いします!』


 かなり簡単な問題が来た。

 白紙で出せば会場が白けて僕に非難が飛ぶし、見当違いの回答を考える脳みそもない。流石にこれくらいなら他の参加者も正解するだろうから、僕も真面目に書くとしよう。


 ……が、しかし。


 ます最初に回答を公開した男は、別に好きでも何でもない食べ物を書いていた。女曰く、「あなたが好きっていうから付き合いで食べてただけ!」らしい。


 そこから地獄のような痴話喧嘩が始まり、観客は「やれやれー!」「そこだー!」とヒートアップ。黒子たちに裏へ連れて行かれ、次のカップルに回答が移る。


 しかし、そこも不正解。


 次のカップル、次のカップルと順に回答していくが、第一問にして正解者はゼロ。好きな食べ物は当てられても食べ方となると難しいらしい。


『それでは最後に、佐伯真白さん、回答をお願いします!』

「えーっと……す、好きな食べ物は酢豚で、ピーマンと豚肉を一緒に食べるのが好き……なんじゃないかと。そのあとご飯を食べて、タケノコ、ニンジンの順で食べて、またピーマンと豚肉、っていう流れで――」

『ピンポーン! 正解せいかーい! すごいですね、事前調査以上の回答が飛び出してきました! 彼女さんをよく観察していないと、こんな答えは出ませんよー!』


 観察するのは当たり前だ。

 もし不味いって思われたらへこむし、かといって素直に言うようお願いしても難しいだろうから、観察して察するしかない。実家でも散々そうしてきたし。


 なんて事情を話せるわけもなく、観客たちは歓喜に湧いた。

 他のカップルの女性陣からは羨望の眼差しを向けられ、杏奈は鼻高々。対して男共は、非常にバツが悪そうに俯いている。


 おかしいだろ! 好き者同士なら普通に回答しろよ!

 ……いや、僕たちはカップルじゃないけど!


『えーっ、では第二問です!』


 問題は全部で十問設けられていた。

 一問目の時のようなことはなく、他のカップルも正解し多少のポイントの動きはあったが――。


『すごい! 佐伯真白さん、全問正解ですよ! 彼女さんのこと、好き好きなんですね! 羨ましいですー!』


 どうしてこうなった。


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― 新着の感想 ―
[気になる点] これで親にでもバレたら天城さんはどう責任を取るのか。
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