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掌
何もない掌をじっと見つめる
硬直して動かない
私には何もない
何も残されてはいない
地位も名誉も金もない
いつ死んでも構わない
生存本能は理性に押さえつけられ
握り締めた拳には後悔と挫折
過去の事象は散り散りに
起きたことも散り散りに
開いた掌には何もない
掌を見つめながらに想う
何もない人生だった
何も得られない人生だった
どうしようにも報われない
この儚い想いは
きっと別の人生だったとしても
こうして心を蝕んでいくのだろう
地位も名誉も金も
あったとしても
この心だけはどうしようもない
握って開いた掌
掴んでいたのは何なのか




