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雰囲気

 身長の高い天井に埋め込まれた橙色の電球が、地下の薄暗いコンサート会場を照らす。


 円形の机が七つ、その周りには六つずつ――白い丸椅子が並べられていた。




 静かな空間――床には赤い絨毯が一面に敷かれ、微かにクラシックが耳に入り込む。


 舞台にはスポットライトに照らされたグランドピアノが寂しく鎮座している。


 客はまだ居ない。




 片側の壁に沿うように、地上へと繋がる階段が口を開く。


 カツンカツン……。


 薄暗いこの空間に、ひと際目立つ白い衣装を着た女性が階段を下りて来た。


 短いショートの髪に整った小顔、キリっとした目つきは衣装と違って少しボーイッシュに感じる。


 しかし、胸の膨らみと階段を下りる際にチラ見えする魅惑的な足のラインは、女性が女性であるということを証明するには十分だった。


 優雅に、静かに、緩やかなクラシックの曲に合わせるように。


 女性は階段を丁寧に下りていく。



 階段を下りて二歩進み、数段しかない段差をゆっくりと踏んでいく。


 女性が向かう先は舞台の上、背中から腰の辺りまで開いた衣装が女性のスタイルの良さを強調する。



 舞台へと上がるための段差――カツン、コツン、コツ……。


 茶色の木製の板を上がった彼女はその場で振り向いた。


 舞台から見える会場は四角い空間ではなく、奥が深い長方形。




 そよ風をイメージさせるようなクラシックの音楽。



 眠気を誘うような穏やかな空間。



 照らされたグランドピアノ。




 品性を漂わせる女性の唇は綺麗な赤に染まっていた。

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