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 こじんまりとした室内には椅子と机の形をしていたものが、見事に崩壊して土煙を放っていた。


 マッチに火を灯して投げ入れる。何度か繰り返した時、ようやく火が燃え広がった。


 煙が部屋という世界の天井に吹き当たり、ふわりとした円形の雲を作り上げる。


 手元には何も入っていないフラスコを握り締めて、私は不敵に笑っていた。


 なぜ笑ったのかすら、数秒後の私は覚えていなかった。いや、記憶を辿れば思い出せるのかもしれないが、私の頭は考える事を放棄した。


 雷雲のような暗雲がこの世界を満たそうとする。


 元々、このフラスコには水が入っていたように思う。水、のようなものと言う方が正しいのかもしれない。


 それは、どのタイミングで失ったのか。記憶を振り返るが砂嵐のような映像が全ての過去を掻き消した。


 私はなぜ此処に居るのだろう。


 黒い煙が目線の高さまで迫る頃、私はふとそんな疑問を頭に浮かべていた。


 けれど、記憶はない。そして、過去は見えない。


 燃える崩れた椅子と机、手元にはフラスコ。


 もう、必要ないだろう。


 私はフラスコを逆さに持って、地面に叩きつけた。


 割れた瞬間、私が消えた。

空っぽの器でも、何かを留めておくには必要なものなのかもしれない。

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