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第七話 魔法と魔術

すみません。投稿の順番間違えました。

入学式が終わり次の日、私が教室に入るとクラスのみんながいきなり私のところへ押し寄せてきた。


「ミーシャさん、私ミカって言うんだけど——」


「俺は、ジノンって言うんだけだけどさ——」


「私は、モニカよ。それで——」


クラスのみんなは一斉に私へ自己紹介をしてきた。

ふぇぇぇ、そんなに大勢で来られても覚えられないよ。

私がみんなの勢いに気圧されていると、救世主が現れた。


「お前ら私のミーシャが困っているだろ。いい加減にしろ」


後ろからやってきたセリナがクラスのみんなに言うと平静を取り戻したみんなは私に謝ってきた。


「うっ、すみません」


「あ、その、すまない」


「も、申し訳ございませんわ」


「だ、大丈夫です。急に来られてびっくりしただけですから」


「やれやれ、すまなかったなミーシャ」


「うん。ありがとう、セリナ」


「「「ぐっ……」」」


「「「ふぁ……」」」


私がセリナ笑顔でお礼を言うと何故かセリナも含めたクラスメイト達が鼻や口元を隠した。


『可愛すぎでしょ——』


『これが尊いというものなのか——』


『す、すまない俺はもうだめだ……ミーシャさんのこと頼んだぞ』


『おい!し、死ぬんじゃない——』


『無駄だ。この血の量は致死量だ。しかし、なんて幸せそうな顔で死んでいるんだ』


『彼女の笑顔を見れて死ぬんだ。やつも本望だっただろう——』


クラスメイトの男子の数人は鼻から血を流し、倒れるものもいた。

あ、あの私、何もしてないですよね?なんか不穏な声が聞こえたような気がしたんですけど……。

なんかみんなニマニマしてたり、顔が赤い人とか、ヤバくないですか?というか尋常じゃないくらい鼻血を流しているやつがいるんですけど!これ殺人にならないですよね?

だ、誰か救急車は無いから先生を呼んでー!

私が起こした?状況に戸惑ってセリナに目を向けると彼女も鼻血を流していた。


「セ、セリナなんかクラスのみんなが……」


おい!なんでセリナも鼻血を流してんだよ!あ、つい前世が蘇ってきてしまいました。


「ミーシャすまない。今の私では君の笑顔に耐えることができない……」


「わ、私の笑顔をなんだと思っているですか!」


私が原因で起きた流血(鼻血)沙汰は一人の人物が登場したことで収束した。


「こ、これは何が起きたんだ……」


「チグリス先生実は———。」


先生に私はこれまでの経緯というか起きたことをありのまま伝えた。


「はぁなるほど事情はよく理解できた。ミーシャどうやら君の容姿は相当危険なものらしいな。まぁだからといってそれで罰するのも馬鹿らしいな……ちなみにどんな顔をしたんだ」


「どんな顔って普通に笑っただけですけど……。こんな感じです」


私は先ほどした外向き用の笑顔を先生にした。作り笑顔と言えど対パパリーサルウェポンの一つとして磨き上げた笑顔だ。目、口の角度、頬の筋肉全てが計算された完璧な笑顔を披露した。


「な……なるほど……ミーシャ今日の放課後、先生の家に来ないか?」


「え?先生何を?」


「あ、いや。冗談だ。しかし……うむ。多少教室が血生臭くなってしまうが仕方ないな」


チグリス先生は神妙な面持ちで言っているが、血は血でも鼻血ったなんかダサいですよ。

鼻血臭い教室ってどんだけ変態なやつらの集まる教室なんだよって感じですよね。

まったくいくら私が可愛いからって教室を血で汚さないで欲しいものです。


朝からアクシデントはあったものの予定より若干遅くなりはしたが、平常通り授業は始まった。

クラスメイトの何人かの男子は大量の出血(鼻血)を流していたが、救護室で魔法薬をもらい、共に授業を受けている。

うん?数人?出血で死にそうになっていた人って一人じゃなかったんですか!


入学して一日で大勢の男子生徒が一人の女子生徒によって救護室送りにされたこの事件。

大量の出血、瀕死の男子生徒など一部の情報だけが誇張され他のクラスに伝わり、のちにある噂が生まれるのだがそれは別の話である。


初めての異世界の学園の授業、さぁ何をやるのかなって期待してたんですよ。

魔法の授業とか剣の授業があるのかなって思ってたんです。

ほら魔物もでるし、レベルなんていう概念があるんですから。

それで始まったのが、魔国語の授業なんですよね……。


魔国語。魔族や獣人、エルフなどこの国に住んでいる人々が使っている所謂母国語だ。

そりゃ学園ですからね、識字率とかの問題を解消するための授業なんでしょうけどさ……期待を返してよ。

ちなみに次の授業は算術、前世でいう数学、算数にあたるものを学んだ。前世では一応、国公立大学に進んでいた私だ、頭の出来は悪いほうではないのです。魔国語は兎も角、算術は前世ほど発展しているとは言えず、とてもつまらなかったですよ。まぁラプラス変換とか出てきたら発狂していたかもしれないけど。


そんなこんなで午前中の授業はそれで終わり、お昼を食べてから午後の授業を受けた。

え?お昼?もちろんボッチ飯じゃないですよ。

まったくいつの話をしているんですか?

ふふふ、私にはもうセリナという立派な友達がいるのですよ。いつまでもボッチじゃありません!

二人で仲良く教室でママの作ったお弁当を食べましたよ。


そして午後の授業はなんと待ちに待った魔法の授業でした。

私はうきうきしながら授業を聞いていた。

なんせ私は既にある程度の魔法は使えるのだ。ここらで私がチート野郎ってところを見せつけてやろう。

なんてことを思っていました。

はい……浅はかでしたわ。

私の自信は先生の開口一番で喪失しました。


「では、これより魔術の授業を始める。魔術とは魔法から発展して生まれた技術であることはみんな理解しているな?」


チグリス先生はまるでみんなが既に知っているかの様なふうに話、クラスのみんなもまるで常識であるかのように聞いていた。

魔術ってなに?私、里でそんなの教えてもらってないんだけど!

私は内心焦りつつも他のクラスメイトにあわせるように知っているふりをした。だって恥ずかしいんだもん。


「専門的な授業に入る前に、まず常識的なことから教えていく——」


チグリス先生はありがたいことに基礎の基礎から魔術について教えてくれた。

まずは魔法と魔術の違いについてだ。

魔法と魔術のもっとも大きな違いは魔法陣の構築の過程であるらしい。

魔法陣とは、魔力を事象に変換するものであり、大きさ、密度、形などで変換される事象は変化する。

どちらも魔法陣を使用することは同じであるのだが、魔術は詠唱によって魔法陣を構築し、魔法は使用者のイメージを基に魔法陣を構築するのだ。

前者の詠唱とは、魔法陣を構築するための魔法式を言葉に変換したもので唱えることで発動に必要な魔力があれば誰にでも発動ができる。

後者の魔法は使用者の起こしたい事象をイメージし、魔力で魔法陣を自力で構築しなければならない。

言わずもがな、後者の魔法陣を自力で構築する過程の難易度は非常に高く簡単な魔法ですら使えるようになるにはそれなりの修練がいる。


また、魔術の強みは必要な魔力さえあれば誰にでも発動でき、同じ効果を発揮する点であり、魔法よりも安定して運用ができるのだ。だが、魔法が劣っているわけではない。魔法は魔法陣構築のためにも魔力を消費するため高コストではあるが、起こす事象の自由度は魔術の比ではない。


「魔術は一つのことに特化したローリスク・ローリターンな技術であり、魔法は極めればそれこそ世界を作ることのできるが難易度が非常に高く扱える者が限定されるハイリスク・ハイリターンな技術であると言えよう」


難しい話であったが、つまり魔術は詠唱さえ覚えれば誰でも使えるけど、練習しても効果は変わらない。

魔法は魔法陣の構築が難しいけど色々なことができるってことなのかな?

魔法の魔法陣の構築は練習すればするほど、より速く、効率的になるのはこの十年で里で学んだ。

おかげで簡単な魔法なら発動には一秒もかからないくらいには早いのだが……。

魔術と魔法どっちがいいのかな?

私は思い切って聞いてみることにした。


「先生、魔法と魔術どっちがいいんですか?」


「短期的に見れば魔術のがよいが長期的にみれば魔法と言ったところだな。魔術は詠唱さえできれば誰にでも使える技術だ。しかし、魔法は修練さえすれば魔術よりも効率的になる——だが、あまり魔法は勧めないな。魔法の魔法陣の構築は結局のところ本人の才能による。才能があるやつでも十年、無い奴だと百年経っても魔術の効率を超えることができないからな」


先生はそう言うと目を一度つぶり深呼吸すると、手のひらに小さな赤い魔法陣を構築した。

そして手の平から小さな火の玉が現れた。

え……なに?ちっさ。

私は小さな火の玉に呆れていたのだが、クラスメイトの反応は違った。

火の玉が現れるとクラスのみんなは歓声を上げたのだ。


「私はあまり得意ではないのだが、まぁこれが魔法だ」


歓声を上げるクラスメイト達にちょっと私はイラっときた。

あれが魔法?あんなしょぼい火の玉で歓声なんてあげてばっかじゃないの!

私が本当の魔法見せてあげる。


過去になって思うがその時の私はどうかしていた。前世の記憶を持っているのに子供みたいだった。

まぁ子供なんですけどね。


歓声の中、私は席を急に立ちあがった。クラスメイトたちの視線は当然私に吸い寄せられるように集まった。

注目を集める中、私は右手を前に突き出し、魔法を発動した。


「『氷魔狼フェンリル』」


突き出した手を中心に青い魔法陣が瞬く間に構築された。

そして、構築された魔法陣から全身が氷でできた狼が出てきた。

狼は魔法陣から出ると私の背後に周り警戒するように周囲を睨んだ。


「これが本物の魔法です——」


『ワォーン』


私は髪をフサッと払った。どうだ!これが本物の魔法ですよ。

狼も私の動作に合わせて咆哮をした。

すると教室は、先程よりも大きな歓声が上がった。


「まさか、その年でそれほどの魔法発動できるとは流石だな。ミーシャ」


「いや、それほどでも——」


チグリス先生は驚愕したかの様な顔を一瞬するとにこやかだが、冷たい声音で言った。


「だが、誰が教室で魔法を使えと言った?」


「ご、ごめんなさい」


『クゥーン』


私は『氷魔狼』の魔法を解除すると狼は空間に溶けるように消えていった。

幸いお咎めはなかったが、みんなの前で注意されてすっごく恥ずかしかったです。

はぁなんで見栄を張ったんだろう……。


その後の授業も何事も無く進んだが、後悔のせいであんまり覚えていなかった。


「これで今日の授業は終わりにする。来週の授業は野外学習を行う。各自、週末までに冒険者登録をしておくようにじゃないと魔法も打たせないからな」


魔法のところでこちらを見てニヤリとしてきたチグリス先生はそれだけ言うとすぐに教室を出ていったしまった。うぅ恥ずかしい。

授業が終わり私はすぐに家に帰ろうとした。


「待ってミーシャさん。さっきの魔法すごかったね。他にも魔法使えるの?」


「ミーシャさん。私に魔法の使い方教えてよ!」


「えっと、えっと——」


「まさか、ミーシャが魔法も使えるとは、可愛くて魔法も使えるとは流石だな」


クラスメイトが私に押し寄せ、助けを求めようとセリナを探したのだが、セリナもあっち側であった。

私は仕方なく魔法についての話をクラスメイト達にすることにした。

幸いほとんどが女の子であったので、退屈ではあったけど話はしやすかった。

ごめんなさい、嘘つきました。女の子達に囲まれながら魔法の話してすごく楽しかったです。

やっぱりまだ私には前世のオタクの血が流れているのかもしれない。自分の詳しい話するのって楽しいし、やっぱり女の子達と話すのも楽しいです。

今日の授業で魔法を使って怒られたのは恥ずかしかったけど、クラスの女の子達の友達が増えた。


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