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第四話 住民証

生まれ変わって初めてのお風呂に大満足したあと、私達は荷ほどきをした。

まぁ荷ほどきと言っても私の荷物の中は、ほとんど着替えだけで荷物と言えるほどの量ではなかったので直ぐに終わった。

パパとママの手伝いをしようとしたのだが、私が手伝いに入る前にどうやら終わってしまったらしい。

引っ越しの荷ほどきだからもっと時間がかかると思っていたのだが、事前に家具や食器類は家ができたときに買い揃えていたらしくパパとママの荷物も私と同じようにほとんど衣服だったらしい。

早々に荷ほどきが終わった私達は、三人で外へ出掛けた。


「パパどこ行くの?」


「街の役場だよ。パパ達が今日からこの街に住みますよっていう手続きをやりに行くんだよ」


「へーそうなんだ」


ファンタジー世界にも役場ってあるんだ……。

手続きってことは住民登録とかかな。でもちゃんと管理とかできるかな……。

なんてことを考えていたらママがクスクスと私を見て笑っていた。


「ミーシャ、大丈夫よ、そんなに怖い顔しなくて」


「ち、違うから、怖い顔なんかしてないもん。考えごとしてただけだから」


「はいはい、ふふふ、ごめんなさいね」


「だから違うって——」


そんなやり取りをしていたせいか、気が付くと目的の役場についていた。

役場と言っても所詮は異世界、現代日本と比べればそこまで大したものじゃないだろうと思っていました。

だが、それはいい意味で裏切られた。

エレベーターやエスカレーターなどは無いもののほとんど日本の市役所と変わらない光景がそこには広がっていた。


この世界の技術レベルって低いはずじゃなかったの?

あれ、でも私の家の家具もテレビとかはないけど机とか椅子はしっかりしていたし、私が思うほど文明レベルって高いのかも……。


「ミーシャ、こっちで住民登録するからいらっしゃい」


「うん」


おっといけない。あまりの文明レベルに驚いて私はいつの間にかパパとママから離れていた。

私は急いでパパとママがいるカウンターに向かった。


「それでは今から、住民登録をいたします。こちらに名前の記入と必要事項の記入をおねがいします」


「はい」


受付のお姉さんから紙をパパが受け取るとスラスラとペンで文字を書きママに確認をとってから提出した。


「ありがとうござます。では準備してまいりますので少々お待ちください」


そう言って受付のお姉さんは紙を受け取ると奥へ下がっていってしまった。


「ねぇパパ、準備ってなにをするの?」


「うん?あぁ今から住民証を作ってもらうんだよ」


「住民証?」


どうやら住民証というのは、簡単に言えばこの街に住んでいる証明証のようなものらしい。

この証明書があればこの街を自由に出入りすることができ、身分証の代わりにもなる。

そして、なんとこの住民証、自分の銀行口座のキャッシュカードとしても使える。

銀行なんてこのファンタジー世界にあるの?それがあるんですね。

この世界には転移魔法やら通信魔法やらがあるおかげで現代日本のATMほど便利ではないがきちんとした銀行がある。

そしてなんと言っても一番すごいのが、この住民証、所有者の魔力を記録して本人以外ではしようすることができなくするセキュリティ能力。

前世で一度、財布を落としたせいでクレジットカードなんか色々大変でした。

けれどもうその心配がない。はぁなんて素敵なものなのでしょう。

まぁこの住民証にも流石にクレジットカード機能はないし、落としたら再発行にめっちゃお金かかるからなくさないようにとママに言われました。


お姉さんから新品の銀色のカードを受け取るとそこには見慣れない名前が書いてあった。


「どうしたの、ミーシャ?」


「ミーシャ・フォン・シリウス?」


「あぁ、それはミーシャの正式な名前だよ。パパはアーサー・フォン・シリウス。ママはシェリー・フォン・シリウス。パパもママ、もちろんミーシャも騎士の爵位を持っているから姓があるんだよ。」


「えぇ!私達、貴族だったの?」


「貴族と言っても、領地もお金もない貧乏貴族だけどね。ふふふ」


私に姓があることにも驚いたが、まさか私が貴族だったとは……。

それにシリウスとか何それ少し厨二チックだけど私、そういうの嫌いじゃないですよ。

寧ろ好きです。ミーシャ・フォン・シリウス。うん。カッコいい。


私が自分の姓に満足している様子を見て、アーサーは胸をなでおろした。

もし、娘が自分たちの姓をイヤに思ったら……なんてことを思っていたのだが、そんなことにならずホッとしたのだった。



帰り道パパとママから根掘り葉掘り私は貴族のことに聞いた。

なぜ今まで貴族であることを黙っていたのか。

貴族とは何なのか、とか色々聞いた。


貴族であることを黙っていたのは、別に悪気があったわけではないらしく、知っていても知らなくても別にいいかなぁと思っていたらしい。

なんでやねん!

里で勉強していたとき、貴族のことを教えられ存在は知っていた。

けれど一度も私達も貴族ということは教えられなかった。

貴族としてやらなくていけないこと『ノブレス・オブリージュ』というのだっけ?

そう言う貴族の義務とか特権とかないのかなんてものも聞いた。

だが、そういうのはあまりないらしい。爵位は公爵、伯爵なんていう位がありその中で騎士の爵位は一番下の爵位だという。

特権も姓を名乗ることと納税の免除だけで大して権限は与えられていないなんちゃって貴族なんだとか。

そしてそのなんちゃって貴族は私達だけではなくどうやら里にいた全員、騎士の爵位を持っているらしい。

みんな同じ地位ならそりゃあ、貴族でも関係ないけどさ、せめて自分の名前くらい知っておきたかったかな。

でもこれでようやく門で兵士の人の腰が急に低くなった理由に納得がいった。

おそらくパパは騎士の証的な奴を兵士に見せて、相手が貴族だから態度を変えたのだろう。

なるほど、なんて名推理なんだ。

私は自分のたどり着いた結論を得意げに二人に言った。


「そっか、私達が貴族だから、門にいた兵士さんの腰が低くなったんだね」


「うん?あれは——」


パパが何かを言いかけようとしたが、ママがパパの口を塞いだ。


「そうね。でもミーシャ、騎士の爵位があるからって偉そうにしたり、他人を傷つけてはいけないのよ」


「そんなのわかっているよ。ママ安心して私も騎士だからみんなを守れるようになる。だから——」


「レベル上げたいんでしょ?」


「うん!」


「そうね、学校が始まるし、そのうち連れて行ってあげるわね」


「やったー!」


やったー!とはしゃいでいる私を傍目にパパはママにだけ聞こえるように話掛けた。


『ママ、あれは騎士だからじゃなくて——。』


『わかっていますよ。でもああやって言わないとミーシャ泣きますよ。せっかく得意げに話しているのにわざわざ本当のことを教えては可愛そうです。それに寧ろ勘違いされていた方が今後のためにも安心ですし』


『それもそうだな』


『はい』


「パパ、ママ何話してるの?」


「いや、何でもないよ」


「さぁ早く家に帰ってご飯を食べましょう」


「うん」


その日は、家に帰りご飯を食べてからお風呂(二回目)に入り、家族三人で寝た。

一応私の部屋、パパの部屋、ママの部屋ちゃんと各自の部屋があるのだが、まだ私は十歳。

まぁ前世の年齢を足せば三十なのだが、精神の幼児化?しているせいで結局パパとママのところに自然にきてしまうのだ。

そろそろ親離れする時期なのかなとは思うのだけど……。

ひょっとしたら私は重度のファザコン?ではないにしろマザコンなのかもしれない。

別にパパのことは嫌いじゃないけど、極々たまにパパの抱擁がウザかったする……。

これが思春期女子のパパ嫌いというやつのか?うん?でもなんか違うような気がする。

ママにハグされると豊満な双丘に癒されるんだけど、パパのハグはなんていうか硬い。

腹筋とかバキバキに割れているのを見る分にはいいと思うんだけど……ハグは嫌……。


そうだからパパとママに挟まれながらベッドで寝る私に抱き着くなー!シャー

せっかく大きなベッドなんだから広く使おうよ。

私はママの柔らかい方が好きなの!

筋肉は来るな!ハウス!あ、ここ家じゃん……。もう、ママ、ヘルプミー。


私の願いが通じたのかママが目を覚まし、パパに抱き枕にされている私を見つめた。


「ふふふ。パパったらミーシャのことが大好きなのね」


「ママ、助けて~」


「スヤスヤ……」


「やー、嘘寝するなー」


ママはあからさまな嘘寝をするとそのまま本当に寝てしまった。

結局その夜は、私はパパの拘束から解放されることはなかった。


もうパパの隣では寝ません。


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