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第七百四十八話 無心の弱点

YouTubeで一話早く、先行公開中ですので気になる方はYouTubeをごらんくださいm(__)m


「遅かったな?」

「おまたせ」


 空で肩を並べながら、俺はレオに声をかける。

 そんな俺にレオは笑顔を見せた。

 一方、そんな俺たちを見て、ダンタリオンは険しい顔を見せている。

 当たり前だ。

 勇者しか召喚できない聖剣。

 それをレオが召喚して、ここに戻ってきたのだ。

 レオが足手まといといったダンタリオンの言葉はこれだけで否定される。

 今、レオこそが一番警戒しなければいけない相手だ。


「さて……さっさと終わらせるぞ、レオ」

「うん!」


 聖剣を召喚したレオが戻ってきた。

 そのことに喜んでばかりもいられない。

 さきほどから俺は自分の力をどんどん解放している。

 空に浮かぶ門が拡大しているのも確認済みだ。

 長引けば、修復不可能な次元の穴が空いてしまう。

 それにそこからの敵増援を食い止めているエルナたちから、切り札ともいえる聖剣をこちらに引き抜いてしまった。

 戦力バランスは偏った。

 こちらが早めに決着をつけなければ空の防衛線が崩壊する。

 そうなれば帝都を制圧している連合軍も敗走を余儀なくされるだろう。

 ここが正念場だ。


「アードラーには幾度か勇者の血が混じっている。たしかに召喚できても不思議ではない……だが、それがどうした!? すでに私の力は魔王を超えている!! 貴様ら二人とて、私は止められない!!」


 そう言ってダンタリオンは羽からさらに剣を作り出し、二刀流の構えを見せた。

 徹底抗戦の構え。

 それならこちらもやるべきことをやるだけだ。


「行くぞ」

「任せて」


 二人で同時に接近。

 俺の剣とレオの聖剣をダンタリオンは左右の剣で受け止める。

 だが、レオの剣はもう一本ある。


「はぁぁぁぁぁっっ!!」


 体をひねりながら、レオの皇剣がダンタリオンの首へと迫る。

 だが、ダンタリオンの羽がそれを防御した。

 けれど。

 そんなことは承知の上。

 単調な攻撃だからこそ、受けやすい。

 だから。

 力ずくで防御を突破する。


「うぉぉぉぉぉぉ!!!!!!」


 レオのほうに意識が向かった瞬間。

 全力で剣を押し返す。

 ただの力押し。

 けれど、片手で抑えるには強すぎる。

 羽が俺に攻撃して、退かせようするが、その瞬間。

 ダンタリオンの直上から魔力弾が降り注ぐ。

 羽はそちらの防御に当てられて、俺はその隙にダンタリオンをどんどん押し込む。

 ダンタリオンの剣がダンタリオンの首筋に迫るほど押し込んだが、ダンタリオンはたまらずレオの聖剣を弾いて、二本の剣で俺の剣を受け止める。

 二人で歯を食いしばり、押し合いが発生した。

 その瞬間。

 レオがダンタリオンの懐に潜り込んでいた。

 目を見開き、レオは左右の剣を広げる。

 普段のレオらしくはない。

 瞳孔が開き、獰猛な獣のようにダンタリオンの首を狙っている。

 危険を察知したダンタリオンは一枚の羽で防御するが、レオの聖剣がその羽を両断した。


「くっ!!」

「はぁぁぁぁぁっっ!!」


 皇剣がダンタリオンの首へ向かう。

 咄嗟にダンタリオンは急速降下することで、その攻撃を避けた。

 けれど、羽は一枚切り落とされ、避けきれなかった皇剣によって頬に深い傷がつけられている。

 だが、ダンタリオンは一呼吸置くと。


「うぉぉぉぉぉっっっ!!!!」


 ダンタリオンの体が活性化し、そして失ったはずの羽が再生され、頬の傷も消えていく。

 さすがの再生能力というべきか。

 ただ。


「さすがにあの羽の再生は消耗するみたいだね」

「奴はあの羽を捨てられない。捨てれば俺の魔法に対して無防備になるからな。けれど、致命的な攻撃を受けるわけにもいかない。だから、羽を犠牲にしてでも防御する。繰り返せば隙が生まれるぞ」

「まずは羽から一枚一枚、落としていくとしようかな」


 クルクルと二本の剣を回したあと、レオは素早くダンタリオンの背後に回る。

 背後からの攻撃は基本、羽の防御に任せているからだ。

 けれど、今のレオには羽を落とせる聖剣がある。


「くっ!!」


 羽で受ければ落とされる。

 仕方なく、ダンタリオンは振り返って剣で聖剣を受け止める。

 俺への対処を羽に任せるつもりなんだろう。

 間違ってない。

 けれど、俺はそんなダンタリオンの予想を超える動きをした。

 ただの体当たり。

 羽の攻撃を防御して、そのまま肩でダンタリオンの背中に体当たりしたのだ。


「なに!?」


 バランスの崩れたダンタリオンは、背中側にいる俺を追い払おうとする。

 今、俺は背中に密着している。

 攻撃を受ければ危険だからだ。

 しかし、ダンタリオンはすぐに危険視するのは俺ではないと気づいた。

 俺ですらゾクリと体を震わせるほどの殺気を放ちながら、レオが聖剣を振りかぶっていた。

 強い一撃。

 今までとは違ったその一撃を、ダンタリオンは右手の剣と二枚の羽で受け止める。

 しかし、耐えたのは一瞬。

 剣は折れ、二枚の羽も両断された。

 そのまま、右肩口に聖剣が食い込む。

 その隙に俺はダンタリオンの腹部に剣を突き刺す。


「ぐぅぅぅっっっ!!」


 ダンタリオンは顔をしかめながらも、足でレオを蹴り飛ばし、左手で俺を掴むと放り投げた。

 超高速での投擲。

 どうにか姿勢制御するが、何かにたたきつけられていたらダメージは避けられなかっただろう。

 そういう攻撃をしなかったのは、そういう余裕がなかったから。

 腹部を刺され、肩から胸にかけての一撃。

 普通なら致命傷だ。

 それでもダンタリオンは失った羽はもちろん、傷を癒して見せた。

 ダンタリオンの肉体は仮の物ではない。俺たちと同じ、唯一の自分の体。

 定命の者となったのに、たいした再生力だ。

 けれど、消耗はしている。


「もう一度だ!」

「うん!!」


 レオと共に俺は突撃をかける。

 消耗しているダンタリオンは動く気配を見せない。

 防御を力押しで突破されている以上、ダンタリオンはこれ以上、攻撃を受けるわけにはいかない。

 けれど、すべて避けることはできない。

 このまま続ければいずれ。

 そう思った時。

 俺の腹部に熱が走った。

 すぐにそれが痛みだと気づき、口の中が血で満たされた。

 見れば、ダンタリオンの羽が背中側から俺の腹部を貫通していた。


「無心で攻めれば警戒も薄くなる……私が弱ればなおさらな。強者にはあえて晒して引き付ける。貴様が良く使う手だ、アルノルト」


 誘われた。

 これは切り落としたダンタリオンの羽。

 落下したあと、潜ませて奇襲用に残していたのか。

 吐血しながら、俺は羽を無理やり引き抜いた。

 やられた。いつぶりだ? こんなに綺麗にはめられたのは。

 そもそも無心で攻撃するなんて、絶対にしない行為だ。

 あえてそれをせざるを得ない状況に追い込まれた時点で、奴の策の中だったか。

 無心で攻めることに慣れさせて、力押しでの防御突破が成せたタイミングで奇襲。

 絶妙といえる。

 隙を突かれた。

 良く俺のやる手が俺に返ってくるとはな。

 考えなしで攻撃してきた相手を策で返り討ちにする。

 ニヤリと笑っている姿まで、俺みたいだ。

 けれど。

 よくやる手だからこそ、対策もわかる。


「うおぉぉぉぉぉぉぉぉ!!!!!!」


 動きを止めたのは一瞬。

 腹部の傷を治癒することもなく、俺は強く剣を振った。

 間違いなく治癒しなければ致命傷。けれど、下がっては駄目だ。

 この策は諸刃の剣。

 劣勢は演技ではない。

 ならばこそ、攻撃し続ける。

 あえて隙を晒した。確かに意図的だろう。

 けれど、隙は隙。

 そこをつく。


「くっ!!」


 渾身の一振り。

 それをダンタリオンは受け止めるが、その隙にレオが迫る。

 俺を行動不能にして、レオと一対一という発想だっただろうが。

 俺もレオも止まらない。


「正気かっ!?」

「覚えておけ……アードラーは異常者の一族だ」


 俺の攻撃を受け止めてしまったダンタリオンは、レオへの対処が遅れる。

 片側六枚の羽で防御を試みるが、それらはすべて切り落とされる。

 絶対防御が破られた。

 俺はダンタリオンの首に左腕を伸ばす。

 そして。


「この距離じゃ防げまい……」


 シルヴァリー・レイ。

 呟くと同時に全方位から銀光が俺ごとダンタリオンを飲み込む。

 爆発と共に、俺とダンタリオンはボロボロの状態で帝都に落下していく。

 だが、痛み分けではない。

 俺たちは二人。

 回復する暇を与えまいと、落下するダンタリオンにレオは肉薄する。


「兄が死ぬぞ!?」

「兄さんは死なない!!」


 ダンタリオンは叫びながら、体の傷を優先して癒す。

 羽の再生は追いつかない。

 けれど、二本の剣でどうにかレオの猛攻を防ぐ。

 そんなレオの後ろから、切断された羽が飛んでくる。

 だが、レオはそれを容易く弾いてみせた。


「その攻撃は……もう見た!!」


 血走った目で攻撃をし続けるレオを見続けながら、俺は帝都の家に激突したのだった。


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― 新着の感想 ―
[良い点] 800話おめでとうございます!! [一言] やっぱりこの兄弟最高すぎる
[良い点] 兄さんは死なない!!←尊すぎんか
[一言] 最後の戦いで、最後の敵に好感を持たせる描写が多い、というのがうまいにもほどがあります
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