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外伝2 第二十六話 長きもの


 山頂に転移した俺の目に飛び込んできたのは、山に巻き付く巨大すぎる白蛇だった。

 とはいえ、蛇といいつつ手足がある。どちらかといえばトカゲかもしれない。あまりにも胴体が長すぎるが。

 その体長はぱっと見で数百メートル。

 見てきたモンスターの中でもトップクラスの大きさだ。

 あまりにデカすぎて、少し動くだけで大地が揺れている。

 その蛇の視線の先。

 アレンとパトリシアがいた。

 周りにいた護衛たちは役に立たない。

 完全に二人は無防備だ。

 注意を俺に向ける必要がある。


「こっちを向いてもらおうか」


 千を超える魔力弾を生成し、蛇の顔に向かって集中的に当て続ける。

 効果は期待していない。

 注意を俺の方に向けられれば、それでいい。


「アレン! 走れ!」


 声をかけると、アレンはすぐさま反応した。

 パトリシアを連れて、山頂からの撤退を開始し始めた。

 恐怖で蹲るエルフたちとは違い、アレンに硬直はない。

 どれほど巨大な存在であっても、アレンはすでに覚悟を決めている。

 今更、恐れるものはないんだろう。

 大したものだと思いながら、俺は魔力弾を浴びた蛇を見つめた。


「さすがにデカすぎか……」


 小さく呟き、俺はため息を吐く。

 ダメージはゼロ。

 デカすぎて、あの程度の攻撃ではかすり傷すら与えられないのかもしれない。

 しかも、蛇は決して俺を見ない。

 見つめる先にいるのはアレンとパトリシアだ。

 まるで窓から外を覗くかのように、蛇は首を伸ばして、二人のほうへ寄る。

 大した動きじゃない。だが、それによって山は大きく揺れ、アレンたちは走ることができなくなってしまう。


「無視は堪えるな!」


 どうせ魔力弾程度じゃ効かない。

 そう判断して、俺は全速力でアレンたちのほうへ向かう。

 そして、アレンたちと蛇の間に結界を張った。

 五重の結界。

 前進を阻害するためのものだ。

 だが、蛇は意にも介さず結界を壊して進んでいく。

 ちょっと硬い壁程度の感覚で俺の結界を破らないでほしい。


「大きさは正義ということか」


 呟きながら、俺はアレンの傍に転移門を開く。

 これ以上、アレンたちをこの場に留めるわけにはいかない。


「シルバーさん!」

「行け! こいつは任せろ」

「シルバー様! お気をつけください! ヴリトラの鱗はすべてを跳ね返すと言われています!」

「承知した」


 パトリシアからの情報を受け、俺は静かに頷く。

 そして、二人が転移門に入ったのを見届けると、ヴリトラと向かい合った。


「さて……すべてを跳ね返す鱗がどれほどのものか。見させてもらおう」


 山頂付近に人影はない。

 恐怖に震えていたエルフたちは、残念だが、ヴリトラの移動に巻き込まれた。

 動くだけで大災害。

 封印されたのもわかる怪物ぶりだ。

 だが、動きは鈍い。

 きっと長年の封印によるものだろう。

 弱体化しているならばやりようはある。


≪我は天意を代行する者・我は天と地の法を知る者・断罪の時来たれり・咎人は震え罪無き者は歓喜せよ・我が言の葉は神の言の葉・我が一撃は神の一撃・この手に集まるは天焦がす劫火・天焔よ咎人を灰燼と化せ――エクスキューション・プロミネンス≫


 巨大ゆえに倒すには火力が必要となる。

 しかし、そういう相手は得意だ。

 魔法陣から放たれた輝く炎の閃光はヴリトラの頭部を完全に飲み込み、大爆発を起こす。

 これでヴリトラの防御力がわかる。

 効き目を見て、魔法を選べばいい。

 そう思っていたが……。


「これはまずいか……」


 煙が晴れたとき、ヴリトラは無傷だった。

 まったく効いた様子がない。

 いくらなんでも馬鹿げている。

 何かで防いだ様子もない。たしかに当たっている。

 それなのに効いていない。

 その事実からみて、俺は状況を分析する。

 そして。


「……魔法耐性のある鱗ということか。古代魔法文明が封印するわけだ」


 魔法に対して圧倒的な防御力を誇る鱗。

 魔導師の天敵みたいなモンスターだ。

 さらにそもそも巨大で頑丈な鱗を破りたければ、物理攻撃をしなければいかない。

 だが、これほどの巨大生物の鱗を物理で打ち破れる奴が何人いるのやら。


「相性最悪とはこのことだな」


 体中を覆う鱗。

 それを壊さないことにはこちらの攻撃が通らない。

 最大出力なら攻撃は通るかもしれないが、それを試してダメだった場合、打つ手がなくなる。

 とにかく鱗への対策が先決だ。

 しかし、この怪物の足と止めないと周辺が更地になる。

 どうしたものか。

 思案していると、大山脈の周囲に四本の光の柱が立った。

 それは大きく光を放つと、それぞれが無数の線で結ばれ、ヴリトラを覆う檻へと変化していく。

 それによって、ヴリトラの移動が阻害される。


「エルフ王の結界か……」


 長年の研究成果。

 たしかに大賢者アグネスの結界のようにはいかないだろう。

 だが、少しの間、ヴリトラの足を止める程度の効果は期待できそうだ。

 そうなると、時間ができた。


「わざわざ強力な鱗を突破する必要もないか」


 記述を信じるならば、かつての戦いでヴリトラの鱗には傷をつけている。

 傷を負った鱗ならば、万全の防御力を発揮できないはず。

 そこがこいつの弱点となりえる。

 それを探すとしよう。

 火力で押し切るのはそこを突いてからだ。


「どこの鱗に傷をつけたのかまで書いておいてくれれば、楽をできたんだがな」


 文句を言いながら、俺は傷ついた鱗を探すためにヴリトラの付近を飛び回り始めたのだった。


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― 新着の感想 ―
外がダメなら体内から
山に巻きついてるならパッと見でも数kmいくんちゃうかな? 思い描いてた山よりだいぶ小さかった模様… 巻き付く 2~3周はしてるイメージ 数百メートル 200~400メートルをイメージ 山1周が100…
[一言] アレンが言ったように、長年の封印で弱体化していてサクッと倒せて肩透かしってなパターンにはならなかったか。
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