第二百六十三話 帝都縦断・上
24時更新分。
活動報告でクリスタ、リンフィア、ザンドラ、ゴードン、エリクのキャラデザインを上げています。
また、二巻のSS情報についても触れているので気になる方はチェック!!
そして!!
12月25日よりヤングエースUP様より、出涸らし皇子のコミカライズが連載開始です!!
ぜひ見てください!!(/・ω・)/
帝都は広い。
クリスタの足に合わせていたらいつまで経っても城門には着かない。
どっかで馬でも調達しようかと思っていると、数名の兵士が俺たちを見て叫んだ。
「いたぞー!! 出涸らし皇子だ!!」
「ありゃ、見つかったか」
後ろからの敵はエルナが完全に抑えている。
しかし、横から来る敵はさすがのエルナでも抑えきれない。
まいったな、と思っていると逆方向からまた違う一団がやってきた。
「殿下を守れ!!」
「道を作れ!!」
エルナの言葉に触発されたのか、反乱に参加していない兵士たちが俺とクリスタを守るように立ちはだかった。
彼らが敵を抑えている間に、俺とクリスタは先へと進む。
そうやって小さな集団同士の小競り合いに遭遇しつつ、俺たちは着々と東門へ向かっていた。
父上はさすがに帝都の外に出ただろうが、リーゼ姉上は性格的に帝都から撤退するとは思えない。
たぶんこのタイミングを好機ととらえて攻めに出るだろう。
そこらへんを総合すると、東門へ向かうのが一番安全だ。
問題なのは東門に行くまでに敵が多すぎるという点だろう。
「はっはっはっはっ!!!! 出涸らし皇子がまんまと現れたぞ!!」
「げっ」
大通りを進んでいると、進行方向を封鎖する一団がいた。
その数はざっと見て五百から六百。
笑い声をあげているのは四十代の将軍だ。
褒美は望むままといわれ、妄想が止まらないんだろう。
正直、笑い声がきもい。
「この俺の出世の糧となってもらうぞ! 出涸らし皇子!!」
「いやいや、ごめんだな。そんなの」
そう俺が言ったとき、北側から傷を負った兵士が馬に乗ってやってきた。
将軍の前で馬を降りると、兵士は告げる。
「伝令! 北門が破られました!!」
「北門が破られただと!? 守備兵は何をしていた! 外に誰も出さぬように見張っていたはずだぞ!」
「そ、それが守備兵は何の反応もなく……」
「馬鹿者! 油断しおって!!」
そう将軍は怒るが、きっと守備兵はそこまで油断していなかったはずだ。
ただ油断していようがいまいが、気づけなかっただけの話だろう。
そういうのが得意な面子を外に置いておいたからな。
聞こえてきた馬蹄の音に俺はニヤリと笑った。
「あそこを通りたいんだ。道を開けてもらえるか? 大佐」
「お任せを、殿下」
馬蹄の音は後ろから聞こえてきた。
振り返るまでもない。
彼らは北門を抜けて、俺のところまで進んできたんだろう。
俺の横を通り抜ける瞬間、先頭を走る男、ラースが俺の言葉に応じた。
続々と俺たちの横を騎馬が通り過ぎて、進路を塞いでいた一団に襲いかかる。
勢いのついた騎馬隊の突撃を受けて、敵兵はコテンパンに蹴散らされていく。
騎馬の掲げる旗に描かれているのはバツ印の付いた盾。
自らの信念に従って、主に傷をつけた異質な騎士。
帝国軍唯一の騎士団。
「ご苦労、ネルベ・リッター。面倒事ばかり頼んで悪いな」
一瞬で敵兵を制圧し終えた彼らに俺は告げる。
それに対して彼らは敬礼で応じた。
「お安い御用ですよ」
そう言って俺の前に出てきたのはネルベ・リッターの隊長であるラース大佐だ。ラースは俺の分の馬を引いて来てくれていた。
「気が利くじゃないか。そろそろ走るのが億劫になっていたところだ」
「そうだろうと思いまして、良さそうな馬を見繕わせました」
そう言って俺とラースは笑い合う。
俺は馬にまたがると、クリスタを引っ張り上げて自分の前に乗せた。
「さて、じゃあ行くか。護衛を頼む」
「はっ」
こうして俺たちはネルベ・リッターの護衛を受けて東門に向かうことになったが、クリスタは周囲を見渡して誰かを探してた。
「どうした? クリスタ」
「アル兄様……ジークは?」
「そのうち来るさ」
そう言って俺はクリスタの頭を撫でる。
ジークのことだ。今頃、リンフィアにこき使われているんだろう。
クリスタはジークがいないことに不満そうだが、俺の正確な居場所がわからない以上、彼らは散らばったはず。
たまたまネルベ・リッターが俺の近くにいただけの話だ。
場所さえわかれば戦力は集結する。
といってもそれは敵も同じこと。一発逆転のためにゴードンたちは俺を狙うしかないからだ。
「なかなか厳しい戦いになるぞ、大佐」
「望むところです。我々には我々の矜持があります。同じ反乱者でも我々は大義のために動きました。しかし、彼らは違います。反乱者の風上にも置けません。反乱者の流儀というものを教えてやろうと思います」
そう言ってラースは男前な笑みを浮かべる。
彼らは元は騎士だ。主が不正を行ったため、大義のために主を裏切った。決して自分のためではない。
そこに彼らの誇りがある。
ゆえに、今回の反乱は許せないんだろう。
「前方に一団! 数は一千から一千五百!」
「大人気ですね」
「溢れんばかりの魅力を抑えきれなくてな」
「そのようですね。突撃準備! 殿下たちを守りながら突破する!!」
俺とクリスタを囲むようにネルベ・リッターが一塊となり、敵に突撃する。
ラースが先陣を切って道を切り開き、その道を俺たちは辿っていくが、敵もなかなかに強い。
武闘派の将軍の部隊だろうな。
「敵も手練れが出てきたか」
そう俺が呟いたとき、敵の中から二人の将軍が飛び出てきて、俺の首を狙ってくる。
ネルベ・リッターの隊員がその将軍の攻撃を防ぐが、防ぐのが精いっぱいで体勢を崩された。
やはり武功で出世したタイプの将軍か。この手のタイプが一番面倒だ。
力もあるし、たたき上げのせいか油断もしない。
とはいえ。
「アルノルト皇子!」
「その首貰った!!」
「舐めないでもらおうか。手練れがいるのはそっちだけじゃない」
俺に向かってきた剣は二本の槍によって逸らされる。
そして二人の将軍を含めて敵が一気に弾き飛ばされた。
ようやく来たか。
「ジーク様! 華麗に参上!」
「ジーク!!」
「痛ーい!! 引っ張るんじゃねぇ!!」
俺たちが乗る馬の頭に着地したジークだったが、すぐにクリスタに後ろから耳を引っ張られて痛みでもだえる羽目になった。
しまらない奴だなぁと思っていると、横からもう一人の手練れが声をかけてきた。
「ここはお任せを。アル様は先へ」
「さすがはリンフィア。良いタイミングだ」
ジークとは対照的に静かに現れたリンフィアは、槍を振るって敵兵を眠らせて俺の道を作ってくれる。
「この先は帝都の中層。冒険者が敵と衝突しています。その混乱に乗じれば抜けられるかと」
「良い情報だ。助かるよ」
冒険者たちも立ち上がったか。
まぁ彼らは気まぐれだ。
気に入るか気に入らないか。結局、彼らの判断基準はそれだけだ。
ゴードンは気に入らないという結論になったんだろうな。
そんな風に思っているとリンフィアがジッと俺を見てきた。
「どうした?」
「いえ、お怪我がないようで安心しただけです」
そう言ってリンフィアは微かに笑う。
リンフィアなりに心配してくれていたらしい。
「オレも安心したぜ! 元気いっぱいだな! おい!」
クリスタにもみくちゃにされて、ジークがそう叫ぶ。
若干皮肉交じりだが、クリスタは気にしていないようだ。
そんなジークだったが、リンフィアによって救い出される。
「あー……ジークが……」
「助かったぜ……リンフィア嬢……」
「遊んでないで働きなさい」
「ひどい!? あー!!」
リンフィアはジークを敵の将軍めがけて投げつける。
まさかそういう攻撃が来るとは思わなかったのか、敵の将軍が一瞬、対処に迷った。その隙を逃さず、ジークは空中で回転して体勢を整えると将軍の肩に乗った。
「なんだと……?」
「熊舐めちゃいけないぜ。可愛くて強いからな」
そう言ってジークは槍の柄で将軍の顔を殴りつける。
間合いに入られた将軍は思いっきり吹き飛ばされた。
その隙に俺は半数のネルベ・リッターと共にその場を走り抜ける。
残りはリンフィアたちと共に残って足止めだ。
まぁリンフィアたちならさっさと制圧できるだろう。
難関はここからだ。
「簡単に突破できると助かるんだがなぁ」
「そう簡単にはいかないでしょう」
ラースの返答に俺は肩をすくめた。
敵の視線は俺に集中している。当然、行かせまいと集まってくる。
元々、敵の戦力のほうが圧倒的に上だ。
のんびりしてると量に押しつぶされかねない。
だが、かといってさっさと突破できてしまうのも困る。
もうしばらく俺に夢中になっていてもらわないと援護にならないからな。
ニヤリと笑いながら俺は馬を走らせる。
「アル兄様……悪い笑い方してる」
「そうか? そんなことないぞ」
ニッコリと笑って、俺はクリスタの頭を撫でるのだった。




