21話:婚約1
時は遡り、あれから2年が経ち、私たちは正式にそれぞれ婚約を結んだ。
ルヴィーとシルビア。
私とハーヴェ。
アルとハーヴェの妹君。
特に、第一王子の婚約ということで、ルヴィーとシルビアの婚約は貴族も平民も注目していた。ただ、ルヴィーのシルビアへの誤解は解けたものの、当然他の面々のシルビアへの誤解が解けたわけではない。一部の貴族では、シルビアは王妃にふさわしくないという声が上がっている。
彼女が精霊を見えることは、正式な婚約の際に国王陛下。私的には叔父に当たるのだが、彼にもすでに話されている。精霊が見える人間は希少であり、狙われる可能性も高い。しかし、シルビアが王妃になればそれは=になる。
結果、シルビアが精霊を目にすることができるということは、彼女が成人を迎えた時に大々的に発表されることになり、それまでは口外されないとのことだ。
ちなみに、私やアルについては、私の成人と同時に話す予定になっている。つまり、また先の話になる。
とりあえず、しばらくは今の生活が続くことになる。まぁ変わったことといえば、婚約が正式なものになったのをいいことに、ハーヴェの出入りが激しくなったことぐらいだ。彼は暇さえあれば我が家に来る。全く、暇なら剣の稽古でもすればいいのに。
「お言葉ですが、それはトレーフル様にも言えることではないでしょうか?」
心の声が漏れていたのか、私の発言に向かい側に座っている薄紫色の髪を風に揺らす、愛らしい少女が真っ直ぐな言葉で言ってきた。
「あら、別に暇ではないわよ」
ニッコリと私が笑みを浮かべれば、少女の眉間にシワがよる。
せっかくの可愛い顔が台無しだ。
「暇以外の何だというのですか。この席は、私とアルヴィルス様。婚約者同士のお茶会です」
ラルエリナ・カルシスト。
アルの婚約者であり、ハーヴェの実の妹。
本編上ではあまり登場しなくて、あくまでアルの婚約者ということで名前だけ記載していた子だ。
この子もまた、イメージしていたよりも顔立ちが綺麗。それに、気の強い令嬢って感じの振る舞い。
淑女らしい淑女というイメージかな。
「だって、ラルが来ると聞いたらいてもたってもいられなくて」
「気安く愛称で呼ばないでください!」
「あら、将来的に私たちは姉妹になるのだからいいじゃない」
「そうですが、まだ婚約段階なのですよ!」
「あら、アルと別れる予定が!?」
「そんなわけっ!」
ふふっ。あぁからかいがあるわ……。
この子、アルが大好きなのよね。それに、こうやってからかうと感情的になるところ、可愛くて仕方ない。
「姉様。あまりラルをからかわないでください」
「はぁ、アルは愛称で呼んでるのに、私はダメだなんて悲しいなぁ」
まぁこの子が私を嫌ってる理由は、単純にアルに懐かれているからなのよね。アルったら、婚約者と二人っきりなのにいつも私の話ばかりするから、ヤキモチ焼いちゃってるのよ。おかげで顔を見るなり敵視されるのよね。
「私のことは気にしなくていいわ。しばらくすれば稽古の時間だから、その時に失礼するわ」
「すぐにでも席を外して欲しいのですが……」
「ふふっ。気にしないで」
ニッコリ笑みを浮かべれば、またラルの顔が歪む。2年経とうとやっぱり子供は子供。私も人のことは言えないけど、一応中身は大人だからね。構いたくもなるのよ。
「ラルはご存知ですか。レインボーバタフライ」
「いえ。珍しい生き物ですか?」
「はい。滅多に見れない生き物なんです。七色に光る蝶なんですが」
本来、虫は女性が嫌いものなため、話の場では使わないものだけど、ラルはアルの好きなものを否定せずに、ちゃんと話を聞いて、機会があれば実物を一緒に見ることもある。まぁ流石に無理なものもあったりするけど。
「ミナコの森の奥にある花畑に、満月の夜に現れるらしんですが、魔物もいるので中々見にいけず……」
二人はこの年で、すでに研究者だった。
アルは植物や虫に。ラルは魔道具に興味を持ち、時間があればその研究に時間を使っている。だからこそ、この二人は相性がいい。まぁ研究に没頭しすぎてすれ違いにならないか心配だけど。
「大きくなったら、自分の足で行こうと思うのですが、ラルも一緒に行きませんか」
「……え、あぁ是非」
微笑ましい。年下カップルの姿。いやー和むね。
さて、そろそろ席を外さないとラルはともかくお母様に怒られてしまう。それは勘弁して欲しい。
「それじゃあ私は稽古に行くね」
「あ、はい。姉様」
「ラルエリナ嬢。またの機会に。今度、私ともお茶会しましょうね」
「……えぇ考えておきます」
ふふっ。内心どう思っているのか手に取るようにわかるな。
そんなに毛嫌いしても、私はあなたが大好きだから。諦めたほうがいいのに。




