閑話 愚王たちのその後Ⅱ①
「これより会議をはじめる」
今日は春になって最初の会議だ。
今年の冬はいろいろあった。
一冬で私は一気に老け込んでしまった気がする。
「軍務大臣。報告を頼む」
「はっ!この冬の軍の収支はお配りした資料に書かれている通りで……」
未だに妻や娘たちは口を利いてくれないし、安酒で酔わないと眠れない夜は続いているが、国の方はだいぶ安定してきた。
魔の森が見えないところまで軍の前線を下げたことで軍の被害は減り、予算内で何とかなるようになってきた。
魔の森の侵食が進んでいるとの報告はあり、魔物襲撃の頻度は上がっている。
だが、魔物の質は下がってきているので、このまま侵食が続いてもこれ以上の被害を出すことはないだろうとのことだ。
魔の森が今の前線の位置までくるのに後十年はかかり、その頃には魔物の強さは冒険者でも対処できるようになるので、中央軍を引っ込めることができるだろう。
今までは魔物が強すぎて我が国には冒険者がいなかったが、その頃には隣国と同じ程度には冒険者がいるに違いない。
魔の森の前線も隣国と同じになるのだからな。
「……以上です」
「うむ」
軍部は特に問題なく運営されているようだ。
「それでは、次は内務大臣。報告を頼む」
「は、はい」
内務大臣は立ち上がって話を始める。
内務大臣の立場はこの冬にかなり悪くなった。
内務大臣はその役職上、貴族派閥と呼ばれる貴族の権利を守ろうとする派閥に属していた。
その派閥のトップはディズロールグランドハイト家だったのだが、そこの嫡男がルナンフォルシード公爵を殺害した。
嫡男は切り捨てたが、それでも公爵家の罪がゼロになるわけではない。
公爵家は派閥の上位の者の不正を王家に告発して派閥を抜けた。
おそらく、不正の対処でこちらを手一杯にしてディズロールグランドハイト家への対処をできなくしたのだろう。
トップだった公爵家が抜け、上位の貴族の不正が明るみになったので、貴族派閥全体が力を落としたのだ。
そこに属する内務大臣もこの会議で肩身が狭そうにしている。
「……い、以上です」
内務大臣は肩身狭そうに席に座る。
「うむ、そう言えば、内務大臣にはレイン=ルナンフォルシードの捜索も任せていたな。そちらはどうなっている?」
「は、はい。隣国にも問い合わせているのですが、それらしき人物の報告はありません」
「そうか。苦労をかけるが、引き続き捜索を頼む」
「早く見つけて欲しいものですな。彼は軍の強力な戦力になってもらう予定なのであるから」
「っ!」
一方で力をつけたのが軍派閥だった。
この機に目障りな貴族派閥の力をそごうとしたのに、やりすぎてしまったようだ。
特に大きな手柄を上げたわけでもないが、貴族派閥の力が弱まっていくのを見て日和見の貴族は第二位の規模だった軍派閥に鞍替えをしたのだ。
特に、伯爵位の貴族が軍派閥に流れてしまったのが大きい。
軍派閥の貴族もお手付きの女性を伯爵家に押し付けていたようなので、つながりもあったのだろう。
結果的に、軍派閥が以前の貴族派閥と同じくらいの勢力になってしまった。
そして、何より痛いのが伯爵家に手が出しづらくなってしまったことだ。
伯爵家の待遇を他国と同じようにしようとしていたのがそれでご破算になってしまった。
次は軍派閥の力が弱まるような何かが起こらない限り、これ以上の国内の改革は進めにくいだろう。
……いや、何も起こらないのが一番だな。
何か起こってしまっては結果的に我が国の国力が落ちることになる。
レイン=ルナンフォルシードがいなくなったせいで我が国の国力や威信はかなり落ちてしまったのだ。
これ以上は何も起こらないほうがいい。
「も、申し上げます!」
会議室に息を切らせた兵士が飛び込んでくる。
どうやら、私の願いは聞き届けられなかったらしい。
前も会議をしているときに問題ごとが飛び込んできたが、もしかして狙っているんじゃないだろうな?
まあ、そんなことはあり得ないか。
だが、何か起きたなら対処をする必要がある。
とりあえず話を聞く必要があるだろう。
「どうした?」
「り、隣国が! 隣国が攻めてきました!」
「なに!?」
神様はどうやら私のことが嫌いなようだ。
いや、もしかして先ほど一瞬だけ考えた軍派閥の力をそぐ出来事が起こったとでもいうのか?
神様、どうか願いをかなえるのであれば我が国の利益になるように願いをかなえてください!
私は椅子に深く腰掛けて手を組み、神へと心からの祈りをささげた。
はい。
というわけで、愚王たちのその後のⅡは隣国の侵攻編になります。
予想されている方もいましたが。
中央軍を魔の森の対策に当てたり、騎士団がなくなったり、色々してるので、ゴタゴタしていくと思います。
明日も二話投稿します。
明日の朝は入れ忘れていた開拓村から逃げた若者の話を投稿する予定です。
明日の夜の投稿からアリアの王都に向かう話を投稿します。
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