修行のせいか①
「みんな! 連れてきたぞ! 三匹!」
「「「了解」」」
リノが俺たちのほうにかけてくる。
その後ろを三匹のグレイウルフが追いかけてきている。
「アリア、お願い」
「わかった」
先頭のグレイウルフをアリアが盾で受ける。
「ここは通さないわ」
その隙にアリアのわきを二匹目のグレイウルフが抜けようとする。
「はぁぁぁぁぁ!」
「ぎゃん!」
アリアが振るった剣がグレイウルフを大きく後ろに吹き飛ばした。
「通さないって言ってるでしょ!」
「きゃんきゃん」
「あ! 待て!」
アリアが吹き飛ばしたグレイウルフを踏み台にするように飛び、三匹目のグレイウルフがアリアのわきを通る。
アリアは剣をふるった直後で体勢が整っていない。
三匹目のグレイウルフは悠々とアリアのわきを抜けて行った。
「ごめん。一匹止められなかった」
「任せて! えい!」
「きゃん!」
キーリがグレイウルフに小袋を投げつける。
グレイウルフの嫌うにおいを出す臭い袋だ。
普段はグレイウルフなどの狼系の魔物から身を守るために使う。
だが、魔の森の中ではその効果はほとんどない。
魔の森の魔物を引きつける力の方が強いからだ。
ここでは主にグレイウルフに投げつけて使っている。
投げつけることで一瞬だけグレイウルフの行動を止めることができるのだ。
この臭い袋は俺の知らなかったもので、キーリが見つけてきた。
ほんとによくこんなものを見つけたと思う。
「ナイス。キーリねぇ」
一瞬あればリノがグレイウルフの急所を攻撃するには十分だ。
リノがグレイウルフの首を切り裂き、グレイウルフは魔石に変わった。
「やったね、リノ!」
「おう。やったな。キーリねぇ!」
「ちょっと~。まだ二体残ってるから~。こっちを手伝って~」
サムズアップをして喜び合う姉妹に、アリアが苦情をつける。
そうは言っているが、二匹のグレイウルフを相手にアリアは危なげなく立ち回っている。
ミスさえなければ三匹のグレイウルフを十分相手できるのだ。
二匹なら十分余裕だろう。
「ごめん。すぐ行くよ」
「その、必要は、ない。準備、できた」
アリアの加勢に向かおうとするリノをスイが止める。
どうやら、スイの魔術の準備が整ったようだ。
「『水矢』」
魔術の発動によって、二十本の水の矢がスイの周りに生れる。
その水の矢はそれぞれ違う軌道をたどり、アリアを避けるようにグレイウルフへと飛んでいく。
「「ぎゃん!」」
不規則な軌道で飛んでくる水の矢をグレイウルフはよけることができない。
それぞれ十本の矢がささり、ハリネズミのようになったグレイウルフは魔石だけを残して消えていった。
「みんなお疲れ。もういい時間だし、そろそろ村に戻ろうか」
「そうね。そうしましょ」
五人はすぐさま帰る準備を始めた。
リノとスイは魔石を拾い、それをアリアに渡す。
キーリはその間に近くにある採集可能なものを手早く採集していく。
ミーリアは全員の様子を確認して、誰もけがをしていないのを見て胸をなでおろす。
その後、『祝福』の魔法を皆にかけなおす。
みんな手慣れた手つきで作業をこなしている。
まあ、もう魔の森の探索を始めて季節を一つ越えようとしているのだ。
無理もない。
季節は春を迎えようとしていた。
***
「明日は休みよね。ミーリアは何する?」
「昨日野草が生え始めていたので、それを採集しに行こうと思っています。ほらあそこにも生えています」
「ほんとだ。私も行こうかしら」
「じゃあ、キーリも一緒に行きましょう」
魔の森を出て、村が見えだすとみんなの緊張がゆるみ、おしゃべりを始めた。
家に帰るまでが遠足というように、村に戻るまでが探索なので、今気を抜くのはあまりいいことではない
だが、春になって陽気もよくなっているし、気が緩むのも仕方ないだろう。
明日は週に一度の休みだし、余計にだ。
週一の休みは今も続いている。
村の周りは雪が溶けはじめ、地面には草花が生え始めている。
うちの娘たちは花より団子らしく、草花より食べられる山菜の話ばかりのようだが。
「あ、そういえば、アリア」
「なに? レイン」
「今年はどこまで開墾するんだ?」
ミーリアが錬成鍋で作った『木のクワ』は十分な数に達している。
いつでも耕作に入ることができる。
まあ、雪が完全に溶けた後のほうが耕作に入りやすい。
雪が解け切ってからでも問題ないとは思うが、今後の探索の予定とかもあるので、早めに予定だけは知っておきたいのだ。
「うーん。実はちょっと悩んでることがあるのよね」
「悩んでること?」
去年も一年耕作をしていたんだし、何か悩むことがあるんだろうか?
「去年より人数も減ったし、耕作面積を減らすかどうか。考えてるの」
アリアは今後の予定を話し出した。
第二部始まりです。
正直、冬は外との関わりが取りにくかったので、春に進めました。
明日も一話投稿する予定です。
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