休日の過ごし方④
「あ! レイン兄ちゃん! どこ行ってたんだよ」
「荷物持ちだよ。俺だってリノの釣った魚を食べたいからな。ミーリアを手伝って村まで魚を運んでたんだよ」
俺とミーリアが湖に帰ってくると、湖の近くではリノたちは楽しそうに雪苺狩りをしていた。
雪苺狩り用に持ってきたかごの中には山もりの小さくて赤い果実が入っている。
おそらくこの野イチゴのような果物が雪苺なのだろう。
相当大量だ。
「あ。自分だけずるいわよ、レイン。私もリノの釣った魚食べたかったのに」
「アリアは料理の手伝いをすればいいだろ? おいしい魚が食べたいけど、俺は料理の手伝いができないからな……」
「……そうね」
料理の話をするとアリアは黙ってしまう。
俺の料理はなぜか全然上達しない。
食べられるものはできるのだが、アリアたちが作ったものに比べて全然おいしくないのだ。
魔術を教えるお礼にとアリアたちが手を変え品を変え教えてくれたのだが、いまだに改善の気配が見えない。
もしかしたら、魔導書の呪いの中に料理が下手になる呪いも含まれていたのかもしれない。
前に呪いを受けていた俺の母さんも料理が下手だったし。
……いや、ないか。
料理が下手になる呪いがかかった魔導書とかどんな魔導書だよ。
「そ、そろそろ昼になるし、お昼ご飯を作りましょうか!」
「そ、そうね! それがいいわ」
「魚を〆るのは俺がやるからな!」
「はいはい。お願いしますね。リノ先生」
キーリが空気を変えるように言い出したことにアリアがのっかった。
まあ、俺としても異論はない。
「じゃあ、リノ、魚を取ってきて」
「わかった!!」
「あ、俺も手伝うよ。それくらいなら手伝える」
リノはキーリに言われて生簀のほうに魚を捕りにかけていく。
俺はリノの後を追って生簀のほうへと向かう。
「しかし、リノも魔術が上達したな。この生簀はリノが作ったんだろ?」
「えへへ~!」
生簀は腰くらいの深さがあり、壁面はがっしりと土が固められていて水を通さないようになっている。
魔術を始めて二か月くらいなのに相当な上達だ。
「水は、私が、出した!」
「スイも上達したな。魔力のたくさんこもったいい水だぞ!」
俺たちについてきたスイも自慢げに水を出したことを主張する。
その様子がかわいかったので、頭を撫でながらちょっと大げさにほめておいた。
「あぁ~! スイだけずるい! 俺も撫でて撫でて!」
「おぉ~。リノも偉いぞ~」
「えへへ~~!」
リノもスイの隣に並んで頭を突き出してくる。
俺はスイを撫でていたのと反対の手でリノの頭を撫でた。
しかし、子供の髪の毛ってのはサラサラで気持ちいいな。
シャンプーもリンスもトリートメントも使ってないはずなんだが不思議だ。
そういえば、こっちの世界はそういったものがなかったな。
作ってみるのも一興かもしれない。
(いや、慎重にする方がいいな)
なぜか、ミーリアにめちゃくちゃ詰められる絵が見えた。
切り出すタイミングは慎重に選ばないと、大変なことになる気がする。
「ちょっと~。三人とも何してるの~? 早く魚もってきて~!!」
「おっと。さっさと魚を捕まえて持っていくか。アリアに怒られちゃいそうだからな」
「「うん」」
俺たちは手早く魚を捕まえてアリアたちのもとに戻った。
***
「遅かったわね」
「ごめんごめん。ちょっと魚の活きが良くてな」
「……まあいいけど」
(よかった。ゆるされた)
魚を持って帰るとアリアにジト目で見られたが、深く突っ込まれることはなかった。
まあ、ここから生簀が見えるから、俺たちが何をしていたのかは見えていただろう。
いや、俺は弟子の成長をほめていただけだ。
特に下心とかなかったし。
むしろ、動物をかわいがってる気分だった。
スイが猫系でリノがイヌ系だな。
「じゃあ、私たちは魚を調理するから、レインはあっちで雪苺を洗っておいて」
「了解」
「私も、手伝う」
「……そうね。スイはレインの監視をよろしく」
「わかった。監視する」
「監視って……。まあ、強く否定はできないんだが」
野菜を洗うとか、ただ切るというだけでも失敗することがあるんだよな。
前世ではそんなことなかったと思うんだが。
「まあいいや。スイ。湖から水を汲んでくるからちょっと待ってて」
「水を出すのは任せて」
「……たしかに、湖の水で洗うより魔術で作った水で洗うほうがいいか。よろしく頼む」
「(コクリ)」
スイは最近、何でも魔術でやってしまおうとする。
さっきも『水操作』の魔術で水ごと魚を捕まえてたし。
(そういえば、俺も魔術を覚えたての時はなんでも魔術でしようとしてたっけ)
俺は嬉々として魔術で水を作り出すスイを見守った。
明日が一部の最後の話になります。
明後日「愚王たちのその後」の6を投稿する予定です。
要望が多かったので、第二部でも「愚王たちのその後」の続きを書こうと思います。
第一部の時みたいに「ざまぁ」っていう感じより「わちゃっわちゃ」感が強い話になりそうですが、よろしければ読んでみてください。
明日も1話投稿予定です。
一九時頃に投稿する予定です。
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