愚王たちのその後⑤
「はぁ」
「……国王陛下。浮かない顔をしておりますな」
「いや、大丈夫だ」
今日は月に一度の会議の日だ。
私は思わず出たため息を飲み込んで会議に臨む。
アーミリシアはルナンフォルシード家への嫁入りを快諾してくれた。
学園に通っていた彼女を退学させてルナンフォルシード家へ送り出すのは身を切る思いだった。
アーミリシアについて行った騎士からは毎日のように抗議の手紙が来ているので、あちらの扱いは相当悪いのだろう。
最近は少しルナンフォルシード伯爵、いや、今は公爵だったか。
ルナンフォルシード公爵との関係が好転したらしく、抗議が五割、嘆願五割くらいになった。
嘆願内容もルナンフォルシード家の利益になるような内容だ。
内容も聞けないようなものでもなかったので可能な限り叶えている。
国王の個人で使える予算がさらに削られた。
飲まなければやってられないのに、最近は平民も飲まないような安い酒で晩酌をすることになっている。
だが、まあ、ルナンフォルシード家関係はそれ以外に大きな問題はないといっていいだろう。
だが、私の苦難はそこで終わらなかった。
アーミリシアは皆に好かれていた。
近衛騎士の中からも数名が騎士団を辞めてついていったほどだ。
正直、今騎士が減るのは痛い。
騎士団が壊滅状態の中、王の周りを固めていたため被害を受けなかった近衛騎士だけが今騎士と言える。
だから一人だけでも影響は大きいのだ。
その上、妻と娘が口をきいてくれなくなった。
息子はそこまでではないが、昔ほど親しく接してはくれない。
王城は今、私にとって針の筵だ。
「そうですか。それでは、会議を始めます」
「うむ」
いつものように会議が始まる。
魔の森から離れたところに軍を配置したことで、軍の被害は減り、なんとか平時の予算内に収まるようになったようだ。
魔の森で取れる魔石による収入はなくなってしまったが、贅沢をしなければ何とかなる。
軍の保養所や貴族なら無料で泊まれる宿などはかなりの数減らすことになったが、仕方ないだろう。
騎士団が使っていた無駄な予算が大幅に削れたのでそれも大きい。
再編はする予定だが、使いすぎだった部分は戻す必要はないだろう。
「……以上になります」
「うむ。騎士団の再編は急がねばならぬな」
「はい。幸いと言うか何と言うか、王立第一学園の卒業生がどこにも行く当てがなくなっているので、そこの卒業生を雇用する予定です。軍の新兵教育に入れて鍛え直してもらうことになっています」
「……そうか」
王立第一学園は私も卒業した学園だ。
今回、アーミリシアはそこで道を踏み外した。
今回の件を受けて、学園は大きく校則が変更された。
男女の接触は最小限にされ、大きな権力を与えられていた生徒会を含む貴族のグループもすべて解散させることになったらしい。
何より問題だったのが、今回の件に学園の教師やOBが多くかかわっていたことだ。
彼らは本来してはいけない行為をいろいろとしてアーミリシアの婚約破棄が成功するようにしていた。
そうでもしなければ曲がりなりにも伯爵家の当主が当日まで何も知らないなんてことは起こりえなかっただろう。
おそらく成功すればお咎めがないと踏んでいたのだろうが、結果は大失敗。
多くの人や組織が処分を受けることになった。
そして、処分を受けた大部分が学園と深い関係を持つ人や組織だった。
当然そのものたちは処分したが、学校に関係があれば粛清されるとの噂が立ってしまった。
その結果、いろいろな所の関係者が学園との関係を知られることを嫌った。
普段はコネでいろいろな就職口があったが、すべてなくなってしまったのだ。
まだ成人が先のものは第二学園や第三学園に転校してやり直すことができるが、今年卒業のものはそうはいかない。
今年卒業の中で領地持ち貴族や家業があるもの以外は行く先がなくなってしまったのだ。
「血筋はいいですし、魔術の授業は受けているので、皆、初級魔術であれば使うことができます」
「……まあ仕方ないであろう。それで進めてくれ」
「承知しました」
軍務大臣が嬉しそうに言う。
今回の件で騎士団は軍の組織下に置かれることになった。
今までは目の上のたん瘤のような存在だった騎士団が自分たちの下について喜びが隠せないようだ。
「では、これ――」
「し、失礼します!」
会議を進めようとすると、息を切らせた兵士が駆け込んでくる。
どうやら、また悪い知らせが来たようだ。
ここ最近で悪い知らせにはだいぶ慣れてしまった。
私は疲れた声を絞り出すようにして兵士に聞く。
「……なにごとだ?」
「はい。ルナンフォルシード公爵邸にディズロールグランドハイト公爵の嫡男が押し入り、当主を殺害したとの知らせが入ってきました」
「なんだと!?」
私が予想していたよりずっと悪い知らせに、私は椅子を倒して席から立ち上がった。
公爵嫡男はやらかしました。
明日も二話投稿します。
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