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【WEB版】追放魔術師のその後 ~なんか、婚約破棄されて、追い出されたので、つらい貴族生活をやめて遠い異国の開拓村でのんびり生活することにしました~  作者: 砂糖 多労
なんか、呪われてるんだ。

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母と転生者②

「何を言ってるんだよ? 勝てないんだろ?」

「あぁ。勝てないだろうね」

「じゃあ、――」

「でも、挑まずにはいられないんだよ」


 母さんは俺の頭を優しくなでる。

 今までこんな風に母さんに頭を撫でてもらったことはない気がする。


「実はね。私はもうそう長くないのさ」

「え? でも、母さんはまだ三十だからあと十年くらい生きられるはずじゃ」


 俺たちの一族は呪いで寿命が半分になる。

 この世界の人間の寿命は大体八十年くらいらしいので、四十年くらいで命を終えることになる。


 母さんの年齢ならあと十年は生きられるはずだ。


「レインが気にするかもしれないと思って黙ってたけどね。女性の呪い持ちは呪い持ちの子供を産むとその子に寿命を譲ってしまうらしい。そのせいで寿命が縮むんだよ。実際、子を産んだ女性の呪い持ちは短命で、その人から生まれた子供は呪い持ちでも長生きする。まあ、途中で殺されちゃうこともあるから絶対ってわけではないらしいけど」

「そ、そんなこと、どこにも……」


 今までいろんな文献を読んできたが、そんなことが書いてある文献は見たことがない。


 俺が目を白黒させていると、母さんが微笑みかけてくる。


「それはそうだろ。全部私らのご先祖様が調べたことだ」

「ご先祖、様?」

「そうだよ。あんたにはまだ言ってなかったけど、庭に埋まってる木の根元に隠し扉があってね。そこから隠し部屋に行けるんだよ。先祖代々書き溜めてきた記録をそこに保管してある」


 庭には大きめの木が埋まっている。

 別に花見ができるわけでもないし、近づいたことはなかったが、どうやら、そこには隠し部屋があったらしい。


 たまに母さんが夜にいなくなるのももしかしたらそこに行っていたのかもしれない。

 てっきり夜にもかかわらず修行にでも行っているのだと思っていた。


「私の日記もあるからまだレインには教えてなかったけど、私はたぶん今日死ぬから、あの部屋のことも頼むよ。あの竜を倒せるようになるまで引き継いでくれ」

「な、何も今日戦わなくても、もしかしたらもっと生きられるかもしれないし」

「……」


 俺が食い下がると母さんは右の二の腕の部分の服をめくりあげる。

 そこには気持ち悪い模様の刺青のようなものがある。

 ふつうの刺青と違うのはその刺青がドクン、ドクンと脈打っていることだ。


「これが呪いが進行してきたあかしだよ。これが五年くらいかけて全身に広がり、体が動かなくなっていく。もう右腕の感覚はおかしくなり始めてる」

「ご、五年は生きられるんだろ。じゃあ、五年間生きればいいじゃないか」


 五年もあればもしかしたら呪いを解く手がかりをつかめるかもしれない。

 五年もあればいろいろなことができる。

 対魔貴族の役目を放り出してどこかに一緒に行ってもいい。


「今日は一緒に帰って対策を考えよ?」

「この機を逃せばもうあの竜とは戦えない。戦えなければ意味がない」

「死ぬよりましじゃないか!」

「ここで何もしなければ死んだのと一緒だよ」


 母さんが空虚な瞳で俺をのぞき込んでくる。


「夢を捨てて、目標を捨てて、戦うこともできず、ただ衰えていくことにおびえ。毎日飯食ってクソして寝る。そんな生活死んでるのと何が違うんだい?」

「それは……」

「私は最後の瞬間まで生きたい。この心臓が動きを止める、その瞬間まで」


 俺にはきっと母さんを止められない。

 俺はつかんでいた母さんの服を離す。


「……ほんとに困った子だね」


 泣きそうな顔をしている俺を見て、母さんはいつも以上にやさしく頭を撫でる。


「私が親父を見送るときもそんな顔はしなかったよ」

「……母さんも、父親をこの場所で見送ったの?」

「あぁ。親父を、な。いい死にざまだった」


 母さんは遠くを見るような目をする。


「あいつは何もしなければ逃げる奴を追ってはこない。だからあんたは手を出さずにここで見ているんだよ。全部が終わったら一目散に逃げる。いいかい?」

「……」


 すぐに「はい」とは言えなかった。

 母さんが戦っているのを見て、手を出さない自信はない。


 だが、俺が答えを出すより早く事態は進行する。


「おっと。お目覚めのようだ」


 竜は目を開けてゆっくりと動き出す。

 すでに空は夕日で真っ赤に染まっていた。


「じゃあ、行ってくるよ。ちゃんと見ておいておくれよ?」


 母さんがゆっくりと竜に近づいていく。

 母さんの真紅の髪が風にたなびく。

 竜は寝起きのぼーっとした様子から次第に焦点があっていき、母さんのことを見据える。


 母さんのほうを認識はしているようだが、体を起こす気配はない。

 まるでお前など取るに足らない存在だといわんばかりだ。


「おい! デカトカゲ! 今から私があんたを退治する。自分を倒すものの名前くらい知っておきたいだろ? だから名乗ってやるよ」


 母さんが名乗りを上げる。

 竜はじっと母さんのほうを見ている。


「私の名前はアルテリア。アルテリア=ウォルフィードだ!」


 名乗りを上げて、母さんは竜に切りかかる。

 こうして、竜と母さんの対決が始まった。

 こういうキャラ好きなんですよね。

 自分なりの美学があるキャラ。


 そしてこういうかっこよさげセリフをちょっと言わせたかったんです。

 ごめんなさい。


 明日も二話投稿します。


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― 新着の感想 ―
[一言] どの様に闘うか我が子に引き継ぐ、子はたまりません。
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