遺跡に行ってみよう!②
「おぉ! 工房だ!」
「工房だな」
隠し部屋の中は工房だった。
中央に大きめの錬成鍋が置かれており、壁には素材などが入っている棚が設置されている。
「見たことない、素材、沢山ある」
「そうだな。今は貴重なものも多いと思うぞ」
スイは素材の棚を覗きこみながらいう。
棚には素材もいくつかは残っているようだ。
まだ残っている素材は劣化しにくいレアなものが多いからこれは大収穫だ。
「大手柄だぞ! リノ!」
「えへへ〜」
俺がリノの頭を撫でると、リノは嬉しそうに頬を緩める。
「ねぇ。これ、錬成鍋じゃない?」
「そうだな」
部屋の中央にある錬成鍋にキーリは興味津々の様子だ。
彼女が今使っているものの十倍はある錬成鍋は彼女が欲しがっていたものだ。
あれがあれば『木のクワ』の制作も捗るし、ほかにもっと色々なものも作れるようになる。
この部屋はいろいろな物があるため、各々部屋の中を探索する。
罠探知はかけてあるし、危険はない。
俺はそのときそう思っていた。
「ねぇ。レイン、ここにも、本がある」
「え?」
俺がキーリと一緒に部屋の中央に置きっぱなしにされていた錬成鍋を調べていると、スイから声がかけられる。
スイのほうを振り返ると、スイの前に青い表紙の本が置かれていた。
本自体は抜けるような青色だが、どこかまがまがしい気配を感じる。
俺はそんな本を以前一度見たことがある。
「スイ! ダメだ! それに触るな!!」
「え?」
俺の声は一足遅く、スイの指先が本に触れる。
その瞬間、本から黒いものがブワッとあふれ出し、スイを包み込むように広がる。
「きゃぁぁぁぁ!」
「スイ!」
俺は一目散にスイのもとに駆け寄り、スイを黒い煙から隠すように抱え込む。
黒い煙はそんな俺にしみこむように入ってくる。
「ぐわぁぁぁぁぁ……あ? あんまり痛くないな」
黒い煙は思ったほどきつい呪いではなかったようだ。
俺は心配そうに見上げてくるスイの頭をできるだけ優しく撫でる。
「スイは大丈夫か?」
「うん。でも、レインが……」
「俺も何ともないよ」
腕の中にいたスイに尋ねると、スイは恐る恐る俺のほうを見上げながら答える。
スイに何もないならよかった。
「レイン。あなたその顔……」
「顔?」
アリアに指摘されて近くにある鏡をのぞき込むと、首筋から左頬にかけて、呪印が浮き出していた。
「うん。これは前からあるやつだから大丈夫だ。五十までに死ぬ呪いだけど、それまでは身体の弱体化程度の影響しかないから」
「なぁ!?」
近くにあった鏡でしっかり確認してみたが、この呪印は前からある方の呪印だ。
俺は、と言うか、対魔貴族の一族はずっと昔から魔導書に呪われている。
身体の弱体化と寿命の半減の呪いだ。
普段は自分の中の魔力を使って抑え込んでいるが、他の呪いに触れたことで活性化して表に出てきたのだろう。
「五十くらいまでに何とか解ければ問題ないから、ボチボチやっていくよ」
「……レインがそういうならそれでいいけど……」
アリアは納得していないようだが、ここは収めてくれるらしい。
正直、今すぐどうこうできる部類のものではないのだ。
なんせ、これは『魔法』に分類される『呪い』なのだ。
魔術の知識しかない俺では到底太刀打ちできない。
『呪い』を抑え込む魔術は習得しているので、それを使いながら魔法について調べていくしか今は手がないのだ。
まあ、この時代は医学とかも衰退してるし、魔物もはびこっているから五十くらいまで生きられれば普通の部類になるからそこまで頑張る必要もないかもしれないが。
「しかし、なんでこんな何もない民家が遺跡として残っているんだろうと思っていたけど、まさか『魔女教』の隠れ家だったとは……」
「『魔女教』って何?」
「『魔女教』っていうのは古代魔導士文明の中期以降に禁じられていた『魔法』を復興させようとしていた人たちのことだよ」
第二次魔術師戦争以降、すべての魔術は明るみに出た。
だが、魔術とは別の法則で成り立つ魔法に関してはわからない部分も多かった。
だから、ドライアスでは魔法は禁忌とされていた。
だが、そんな中でも魔法を復活させようとしていた集団がいた。
そういう人たちがまとめて『魔女教』と呼ばれていたのだ。
「この魔導書は魔法を使う媒体であり、魔法が書かれた書籍でもあるんだよ」
俺はそういって魔導書に手を伸ばす。
だが俺の手は「バチ!」と静電気のような強い力を受けてはじかれた。
「痛っ! はじかれた?」
「どういうことなの?」
所有者の決まっていない魔導書は簡単に触れることができる。
というか、所有者からの魔力パスがないと魔導書は何もできないただの本なのだ。
前の所有者の残存魔力によって『呪い』が一度だけ発動するが、それが発動してしまえばあとはただの本と変わらなくなる。
「いや、まさかーー」
「どうか、した?」
俺はまだ腕の中にいるスイを見下ろす。
「スイ。ちょっとこの魔導書に触れてみてくれないか?」
「え?」
「大丈夫、もう呪いは発動しない。呪いは一度発動すると次の発動まで結構な間魔力をためないといけないからな」
「でも、レインみたいに、バチって、ならない?」
どうやら、俺がさっきはじかれたのもスイにとっては怖いことだったらしい。
「たぶん大丈夫。もしはじかれたら、俺がなんでも一つスイのお願いを聞くから」
「……わかった」
スイは恐る恐る魔導書に手を伸ばす。
スイの手ははじかれることはない。
魔導書は軽々と持ち上げられ、スイの腕の中に納まった。
「やっぱり、そういうことか」
「どういうことよ?」
「この魔導書はスイを主人に選んだんだ」
「えぇ!?」
アリアの衝撃の声が遺跡の中をこだました。
レイン呪われてる案件はうまく伏線がはれてたかわかりません。
ジルおじさんとの会話とか、細々と伏線は貼ってたつもりだったんですが……。
今日も二話投稿します。
気に入っていただければ下にある【☆☆☆☆☆】を【★★★★★】にして評価していただけると嬉しいです。




