魔の森で鍛えよう!⑦
「はぁ。はぁ。なんとか帰ってこれた」
「みんなお疲れー」
「ははは! 全然問題なかったぜ!」
俺たちは家に帰ってきた。
どうやら、アリアはかなりギリギリだったらしく、帰ってきて直ぐに『身体強化』の魔術を切って座り込んでしまう。
俺はそんなアリアから荷物を受け取る。
「じゃあ、とってきたものの処理をしてしまおうか。キーリはまだ魔力に余裕はあるか?」
「え? 今すぐ? まあ、大丈夫だけど……」
キーリはくんできた水をアリアに渡しながらそう答える。
「まあ、別にすぐじゃなくてもいいんだけど、すぐやったほうが良質なものができやすいんだよ。放置しておくと素材の中にある魔力が霧散していくから。そうならないためにスイに容器に強化魔術をかけてもらってたんだし」
魔の森で取れる素材は基本的にたくさんの魔力を含んでいる。
その魔力はそのまま放っておけば次第に抜けていき、魔の森の外にあるものと同じ素材と同程度になってしまう。
だが、強い魔力がこもった容器の中に入れておくと、その魔力の拡散が抑えられる。
スイに容器に強化魔術をかけてもらっていたのはこの強い魔力のこもった容器というのを再現するためでもあった。
「そうだったんだ。良いわ。すぐやりましょう」
「よし」
俺はそう言ってテーブルの上にとってきた素材を並べる。
スイはまだ強化魔術を切っていないようで、容器からはうっすらと魔力を感じる。
「これならかなり良質な土属性の魔術成分が取れそうだな。『抽出』」
今回取ってきた薬草は土属性の力を強く持った素材だ。
ここから土属性の魔術成分だけを取り出せば、植物を育てる栄養剤を作ることができる。
俺はキーリのお手本として、『抽出』の魔術を一枚の葉っぱに使う。
葉っぱから、緑色の液体が出てきて、俺が作ったポーション瓶の中へと流れ込む。
このポーション瓶は保管に使うため、スイの強化魔術で誤魔化すわけにはいかなかった。
これは昔俺が作ったやつだ。
中には回復系のポーションが入っていたが、捨ててしまった。
まあ、それほど貴重なものでもないし、良いだろ。
キーリは俺の魔術で瓶の中に液体が溜まっていくのをじーっと見ていた。
「こんな感じだ。キーリもやってみてくれ。この緑のが土属性の魔術成分でこれを取り出すイメージを乱さないように」
「わ、わかったわ。……『抽出』!」
キーリが魔術を唱えると、葉っぱから緑の液体がポーション瓶に注がれる。
だが、その量は俺がやったときよりもすくなく、色もくすんでいる。
「あ、あれ?」
「まあ、初めてならそんなもんだよ。何回もやっているうちにだんだん上手くなる。量は魔力を大量に込めれば絞り尽くせるから、質を良くするように意識してやってみて。対象はちゃんと抽出できているから、それのみを抽出するように……」
「わ、わかったわ。『抽出』!」
数回やっているうちに色はだいぶ透明に近づいたが、そこでキーリの魔力が切れ、残りは俺がやってしまうことになった。
***
午後は魔術の修行だ。
正直、魔の森でまる1日中過ごせば魔力は1くらい上がるので、効率だけを考えるのであれば魔の森で鍛錬をするのが良いんだろうが、何かの事故が起きれば命を落とすかもしれないところで鍛錬をするのは流石に気が引ける。
それに、魔術の練習もしないといけないという理由もある。
魔力量ばっかり増えてもちゃんと扱えなければ自分自身を傷つける結果になることも考えられるからな。
それに、今日は村の外壁を作りたいと思っていたし。
「じゃあ、ミーリアとキーリは勉強で、他の3人はこれまで通り、魔術の訓練をしておいて。チャチャッと壁を作っちゃうから」
「壁を作っちゃうからって、そんなに簡単に壁って作れるものなの?」
「ん? 気になるなら、窓から見てると良いよ。色々とまだ教えてないテクニックを使うから、近くで見るのは許可しないけど」
アリアの質問に俺が端的に答えると、アリアは訝しげな顔で俺の方を見てくる。
「レインは私たちのために秘密にしているんですから、困らせてはダメですよ」
「そうだけど……」
俺がどうやって説得しようかと考えていると、ミーリアが助け舟を出してくれる。
いや、危険だから、自衛ができるようになるまでは習得できる部分の魔術しか教えないとはすでに言ってるんだから、ゴネてくるアリアがおかしいのか。
「魔術の知識というのは本当に危険なものなんです。知っているというだけで命を狙われることもあるんですから」
ミーリアは教会が半分独占状態にしようとしている回復系の魔術を練習しているから、余計にそう思うのかもしれない。
どうやら彼女はあの使えない回復魔術を習得するために家が傾くほどの寄進を教会にしたらしい。
どこの世界も宗教ってのはヤバイな。
「まあ、窓から見るのは止めないからさ。アリア自身も同じことができるくらいに魔術を習熟したら教えるから、それまで我慢してくれよ」
「……わかったわ」
俺は渋るアリアを残して、村の外周に壁を作りに出かけた。
***
私は家から出ていくレインの背中を見送った後、食堂の奥の廊下に続く扉を開ける。
「アリア? どこに行くの?」
「展望台。見ていてもいいって言ってたから、一番見晴らしのいいところで見ようかと思って」
「もう、そんなにムキになることないのに……」
レインは窓からなら見ていてもいいといった。
だが、どこの窓かは指定していなかった。
なら、一番見やすい窓から見るのがいいだろう。
別にムキになってレインの裏をかこうとしたわけではない。
ないったらないのだ。
「私も、展望台から、レインの魔術が見たい」
「俺も! 俺も展望台からレイン兄ちゃんの魔術を見たい!」
リノとスイも私と一緒に展望台から魔術の発動を見たいらしい。
まあ、一人しか入れないわけではないし、一緒に行けばいいか。
「そうですね。私もいきます。家を作ったときは魔術の発動を見ていませんから」
「ミーリアも行くの? じゃあ、私も行こうかな。私だけここで居残りっていうのは嫌だし」
結局、全員で展望台からレインの魔術を見ることになり、みんなで展望台へと向かった。
続きは夜に投稿します。
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