魔の森で鍛えよう!①
「ちょっと外に出てくるよ。何かあったら大声をあげてくれれば飛んでくるから」
「わかったわ。いってらっしゃい」
レインはそう言って家から出ていった。
昨日は本当に大変だった。
まさか、私たちが村の外に出ている隙にあんなに強い魔物が攻めてくるなんて思わなかった。
レインは襲撃を受けたのは自分のせいだと言っていたけど、魔の森のそばの村なのだ。
強力な魔物の襲撃は予想しておくべきだった。
「アリア、今度はいつ街に向かうつもりなの?」
「……どうしよっかな」
キーリの質問に私はすぐに答えられなかった。
もう一度あの魔物が攻めてこないという保証はない。
もしそうなった場合、レインが村にいなければ、今度こそ誰かが命を落とすことになるだろう。
ミーリアも興味があるようで、先ほどまで読んでいた本から顔を上げて私たちのほうを見ている。
それに、春に登録して移住税を払ってもいいかもしれないと今は思っている。
レイン一人の移住税くらいであれば、払えなくはない。
レインはどこか掴みどころのない雰囲気があったので、いろんな方法でつなぎとめようと思っていた。
大切な男手だし、魔術使いが一人いるだけで村の防衛力は飛躍的に上がる。
村の住民として登録してしまうのもつなぎとめる手段の一つだった。
彼の性格上、書面に残っていたら勝手にいなくなったりはしない気がしていたのだ。
だが、今回、必死に村に戻って戦闘してくれたのを見て認識が少し変わった。
レインは私が思っている以上に私たちのことを大事にしてくれている。
そんな気がした。
だから、私が打算で彼がいなくならないように動くのは何か違うと思う。
「……レインと相談して決めるわ。レインに関することだしね」
レインは打算抜きに私たちのために動いてくれるなら、私もレインのために何が最適かを考えて動こう。
今はそう思っている。
できるだけレインに頼り切らないようにしないと、彼に愛想をつかされるかもしれないのだ。
仲間としてそれほど悲しいことはない。
「……それがいいわね」
キーリも色々言いたいことはあるだろう。
昨日あんな目にあったのだ、できれば強い魔術を持ったレインには近くにいて欲しいはずだ。
だが、キーリもわかっているのだろう。
レインに守られるだけの現状があまり望ましくないと。
実際、今朝は起きてすぐに私が魔術の訓練をしていると、キーリも私の隣で黙々と訓練をし始めた。
今までは魔力切れの状態で調理をするのは危ないからと理由をつけて朝や昼食、夕食前は彼女は魔術の訓練をしていなかった。
心境の変化があったのは間違いない。
「おはよー」
「うぅ。眠い……」
私とキーリが会話をしていると、スイとリノも起きてきた。
「おはよう。二人とも。ご飯は食べれそう?」
「今日は、大丈夫」
「食べるー」
そういって二人はテーブルに座った。
この二人は相変わらずだ。
私とキーリはそんな二人の様子に安心を覚えながら笑いあう。
ゴゴゴゴゴゴゴ!
その時、大きな音が聞こえてきて地面が揺れる。
「な、なんだ? 何が起きたんだ?」
「わからない、でも、いやな感じはしない」
「た、確かに」
私たちは五人で抱き合って揺れをやり過ごす。
私とキーリとミーリアの三人は何が起こるのか戦々恐々としていたが、今さっき目を覚ましたらしいリノとスイはあまり恐れている様子はない。
いやな感じはしないってどういう意味だろ?
「外を、見に行ってみましょう」
「ミーリア、正気!?」
ミーリアが外を見に行こうと言い出したので、私はつい思ったことを口に出してしまう。
だが、ミーリアは不快になった様子もなく私のほうを見る。
「外にはレインがいるわ。彼が何かやったのかもしれない。それに、今この家はかなりゆがんでいて崩れてしまうかもしれない。それなら、外に出てレインのもとに行ったほうが安全だと思わない?」
「……それはそうかもしれないけど……」
レインに頼りきらないようにしようとさっき決めたばかりなのに、さっそくレインに頼る羽目になるのはちょっと恥ずかしい。
まあ、頼り切らないようにしようと決めたのは私の心の中のことなので、ミーリアはそんなこと知らないだろうし仕方ないことではあるが。
「レイン兄ちゃんは外にいるのか? じゃあ、外に行ってみようぜ」
「レインが、何かしたのかもしれないし、レインに聞いてみないと、結論は出ない」
「……それもそうね。じゃあ、みんなで行ってみましょう」
私がそういうと、キーリとミーリアもうなづく。
「じゃあ、さっそく行こうぜ」
「あ、一人で勝手に行かないの」
一人で外にかけだしたリノをキーリが追いかける。
私とスイ、ミーリアもその後を追った。
「ななな! なんだこれーーーー!」
「うそでしょ!」
だが、リノとキーリは家の外に出てすぐに立ち止まって大きな声を上げる。
私たちも急いで外に出ると、家の目の前に大きな要塞のような建物が立っていた。
明日も二話投稿する予定です。




