閑話 愚王たちのその後②
騎士団二番隊隊長視点です。
「ちっ。貴族の私がどうしてこのような辺境に来なくてはいけないのだ」
「仕方ありませんよ隊長。軍のような下賤な血の輩では我々のような貴き者たちのようなことはできないのですよ」
「それもそうだな。満足に魔物も狩れない軍など解体してしまえばいいのに、国王陛下もお優しいことだ」
およそ1週間前、国王陛下から我ら騎士団に魔の森から出てくる魔物を倒すように王命が下った。
どうやら、ふがいない軍が対処しきれず国王陛下に泣きついたらしい。
まったく、これだから下賤な軍というものは好かん。
しかし、四番隊や三番隊だけではなく、我らの二番隊にまで出動がかかるとは思っていなかった。
騎士団長率いる一番隊も後方で待機しているらしい。
「お待ちしておりました、隊長閣下」
「出迎えご苦労」
軍に駐屯地につくと、士官らしき男が出迎えに来た。
彼の案内されたのは作戦室だった。
「なんだここは」
「は? ここは作戦室です」
「そんなことは見ればわかる。貴族である騎士団が来たのだ。歓迎をもって出迎えるのが当然であろう」
軍の士官というのはここまで無能だったのか?
貴族が来れば酒と女を用意して歓迎会を開くものだ。
これは国王陛下に進言して軍内部の査察をしていただく必要があるかもしれんな。
「で、ですが、いつ魔物が出るかわからない状況ですので、戦時中と同じ扱いをさせていただきたいのですが」
「むぅ」
「花は用意いたしますので、飲酒はお控えいただけないかと……」
なるほど。
彼の言う分には一理ある。
すると、副隊長が私の前に出た。
「貴様、我らを愚弄するつもりか。少々酒気が入った程度で対魔貴族ごときが狩っていた魔物を我ら騎士団が狩ることができないと!?」
「め、滅相もございません」
「副隊長。その辺にしておけ。そうだな。酒を入れないものを2名作ろう。それでどうだ?」
素面のものを2名だけにすることで副隊長も立て、士官も立てる。
我ながらよい判断ではないだろうか。
士官は少し何か言いたげだったが、頭を下げる。
「かしこまりました。準備いたします」
「それと、士官」
「はい。なんでしょう?」
「騎士団で倒した魔物の核は騎士団のものとする。異論ないな?」
「なぁ!」
士官は驚愕の顔をする。
「これまでも魔の森の魔物の核は軍のものとして取り扱っていたはずです」
「我々は対魔貴族のような野蛮人とは違うのだ。貴族の権利として、戦場で得たものはそれを成したものの手に渡るのが当然であろう?」
貴族の特権として戦場で得たものはそのまま持ち帰っていいことになっている。
これは貴族で構成されている騎士団にも適応される。
「そ、それは私の一存では決めかねます。上に問い合わせてみないと」
「……まあ、かまわんだろう。きっと国王陛下もお許しくださる」
もともと、軍がふがいないために我らが出てくることになったのだ。
拒否されるようであれば、騎士団を引き上げるまでだ。
苦々しい顔で退室していく士官を私は見送った。
***
「隊長! 魔物が出たそうです」
「うむ! 皆のもの。出発するぞ」
「「「「おう!」」」」
士官と別れて1時間ほど。
歓待の宴を開いている途中に魔物が現れたとの知らせが届いた。
魔物というのも本当に厄介なものだ。
私は知らせを聞くと団をまとめて魔物のもとへと急いだ。
***
「「「「GAAAAAA」」」」
現場につくと、小屋くらいはありそうな熊の形をした魔物が魔の森から出てきたところだった。
その周りには数匹のクマ型の魔物を引き連れている。
「まずは取り巻きから倒すぞ。『風刃』用意」
「「「「はっ!」」」」
対魔貴族はいつも『風刃』で魔物を倒していると聞く。
その程度の初級魔術であれば騎士団のものは全員使える。
全く、初級魔術で倒せる魔物のためにこんな国境まで来なければいけないとは。
いや、魔の森の魔物の魔石は結構な値段で売れると聞く。
それが手に入ったと思えば安くはないか。
「放て!」
「「「「『風刃』」」」」
私の声に合わせて騎士団の団員が一斉に『風刃』を発動する。
どの個体を狙うか指定しなかったため、一体につき数人の『風刃』が飛んでいく。
取りこぼしもあるようなので、今後は誰がどれを狙うか少し作戦を立てたほうがいいかもしれないな。
『風刃』は狙った通り、魔物に突き刺さる。
「「「「GAAAAAAA」」」」
……だが、魔物は何の痛痒も見せない。
それどころか、我らに狙いを定めて駆け出した。
そして、すぐに我らの目の前にまでやってきた。
「わーーー」
「た、たすけてー」
「ひーーーー」
団員たちがなすすべもなく魔物に殴り飛ばされていく。
「な、なぜだ」
『風刃』一発で倒せるのではなかったのか。
全然効いていないではないか!
私はほかの団員同様に魔物に殴り飛ばされて意識を失った。
お読みいただきありがとうございます。
本来辺境までは馬車で一ヶ月かかりますが、軍馬で駆け抜けたので一週間くらいで辺境まで付いている設定です。
まあ、大して変わりませんが。
また、騎士団の魔術がどうして効かなかったのかは次話で出てくる予定です。
実は、「閑話 愚王たちのその後①」のアクセスがほかの話に比べて多いです(笑)
正直、ざまぁ≒復讐といういんしょうでした。
なので、こういう主人公が全然関わらないところで進んでいく話は需要あるのかなと不安だったんですが、感想もいただけて自信になりました。
今回は①とは少し雰囲気が違いますが、楽しんでいただければ幸いです。
気に入っていただければ下にある☆から評価していただけると嬉しいです。
次話は明日投稿予定です。
この話の続きはまた十話くらい後に入る予定です。




