秘密を聞こう③
「なるほど。そうだったのね」
「黙っていて申し訳ありません」
ミーリアが話があるというと、みんなゲームをやめてすぐに聞く体勢に入った。
やっぱりみんな誕生日が原因ではないとは気づいていたのだろう。
それに、ミーリアが外からこの村がどう見られているかをかくしていることもみんなは気づいていたらしい。
共同生活をしているのに、隠し事をするなんて不可能だからな。
リノがミーリアのお気に入りの小説を汚してしまってベッドの下に隠しているのも、スイが魔法の練習で村の壁を一か所豪快に破損させたのも、キーリが錬成用に魔石を隠し持ってるのもきっとみんな気づいている。
気づいていて黙っているんだろう。
俺もみんなの隠し事を全部知っているとは思っていないが、今回みたいな大きいことはさすがにバレる。
でも、その秘密がそこまで影響を与えないと思っていたからみんな聞かなかっただけだ。
なんだかんだで、ミーリアも隠し事をすることを楽しんでいた節があったし。
「ミーリアは、その友達のことを助けにいきたいのよね?」
「……できるなら、助けに行きたいです。向こうはどう思っているかわかりませんが、私にとっては大切な友達なので」
だが、今回予想外のことがあった。
ミーリアの友人がけがをしてしまったのだ。
村の外にいるミーリアの友人が大けがを負い、その治療のために魔力の多い俺たちの力が必要になってしまった。
「じゃあ、助けに行けば良いんじゃない?」
「でも、そんなことをすれば、国に追われることになります」
アリアはあっさりと助けに行こうと言うが、そう簡単にはいかない。
この世界では魔術は戦力とほぼ同等の意味を持つ。
魔力量三十を超えるミーリアは地球で例えると戦車を所持しているようなものだ。
個人所有の戦車なんて、危険すぎる。
国の管理下に置こうとするのは当然のことだ。
戦車なら取り上げておしまいとなるが、魔力は取り上げることができない。
「その時は逃げればいいわ」
「逃げても同じですよ。手配書は隣国にもすぐに広がります。どこまでも情報は追ってくると思います」
強力な個を危険視するのはどこの国も一緒だ。
取り込むか、取り込めなければ殺そうとする。
国に仕えるといってもおそらくそこまで良い待遇は期待できない。
良くて幽閉、悪ければ戦場で使いつぶされることになる。
貴族のような後ろ盾のない戦力なんて便利なコマ以外の道はないだろうからな。
何より、力を持つことを自慢にしている貴族からしたら自分より力を持っている平民なんて目障りだ。
この国に仕えれば辺境伯様もすこしはかばってくれるかもしれないが、あの人にだって立場がある。
どうなるかなんて予想もできない。
「うーん。バレないように助けにいければ良いんだけど」
「簡単」
「え?」
今まで黙っていたスイがそういったため、俺たちはスイの方を見る。
スイはいつものように眠たそうな顔で俺たちを見返した。
「顔を隠して、助けに、行けば良い」
「それ良いな! 魔術仮面みたいに仮面で顔を隠せば良いんだよ!」
リノは俺が持っていた古代魔術師文明の本の中にあった小説の主人公を引き合いに出す。
前世の漫画のように顔をかくしてさっそうと悪を倒す物語だ。
あの物語は挿絵もあり、ラノベみたいな感じだったので、リノのお気に入りだった。
「いや、顔を隠すって。やったことで誰か大体バレるだろ」
だが、現実はそう甘くはない。
いくら顔を隠しても、アニメや漫画と違って顔を隠すことで正体がバレなくなるようなご都合主義はない。
行動からミーリアが怪しまれることはわかり切っている。
いや、逃げ切ればなんとかなるか?
この国の捜査能力では、今は面識のないことになっているミーリアにたどり着かないかもしれない。
俺が真剣にそんなことを考えていたが、スイの思惑は違うところにあったらしい。
「『天誅』の、フリを、すれば、良い」
「!! 確かに敵国が魔物を使っているから『天誅』が出てきてもおかしくないわね」
「? は? てんちゅう? なんだそれ?」
わかっていないのは俺だけのようだ。
「教会の秘密組織です。背教者を粛清する役割があると言われています。背教者一人を殺すために街ごと焼き討ちしたりもするんだとか」
「なにそれ。怖い」
教会ならやりかねないというところが怖い。
俺が知らないということは、このあたり特有の派閥なのかもしれない。
……いや、俺は町の人とかかわってなかったから知らないだけかも。
ジルおじさんともそんな話をすることはあんまりないし。
「噂話だけどね」
「え? ないの?」
「あるという噂は聞いたことがありますが、実際に動いているところを見たものはいません」
「焼き討ちされた村があることは知ってるけど、みんな口をつぐむから詳しい話は伝わらないのよ。教会に触れるのは危険だから」
アリアは肩をすくめる。
教会は結構謎の多い組織だ。
古代魔術師文明時代から続いている組織なんだから当然かもしれない。
繁栄したり衰退したりを繰り返し、前世のキリスト教で言うところのカトリックやプロテスタントみたいな流派も百以上あるらしい。
過激な組織もあるようだから、そんなのがあってもおかしくないか。
過激派テログループみたいな。
(確かに、教会組織のフリをしていれば、追われることはないかもな)
教会は回復魔術を牛耳っているので、どこの国も手は出しにくい。
それに、魔物を使っていたものを倒すなら、教会からもお目溢しを受けられるかもしれない。
教会は同じ神を信仰している。
だから、別の組織とはいえ、教典に沿った行為をしていればその行動には寛容だ。
追われないと言うことも十分あり得る。
……でも、本当に大丈夫か?
もし本物がいたら、かえって追われることになるんじゃないだろうか?
(うーん。ま、なんとかなるか)
アリアたちも魔力濃度の濃いところでの修行で相当な力をつけてる。
そうそう遅れをとることはない。
ダメだったら全力で逃げればいいだろ。
今のアリアたちなら俺がついてれば魔の森を突っ切るくらいはできるだろうし。
魔の森の反対にある国なんて誰も知らないから、そこなら追っても来ないだろうし。
危険だからできればやりたくないけどな。
「よし。じゃあ、その方向で動きましょう」
「いいんですか? 私のために」
「気にする必要ないわ。そこまで大変なことでもないし。それにミーリアの大切なものは私たちにとっても大切なものよ」
俺が悩んでいる間に方針が決まってしまったらしい。
ミーリアはチラリと俺の方を見てくる。
失敗した時一番大変になるのは俺だろうから、俺の意見も聞きたかったんだろう。
俺は反対意見を言うつもりはない。
もともと、なんとかしてミーリアの友人は助けに行こうと思っていたのだ。
他にアイデアもない以上、反対するわけにもいかないだろう。
それに、助けに行くなら早いほうがいい。
ミーリアの友人が思っているよりやばい状況かもしれないしな。
俺はうなずきを返す。
「ありがとうございます」
ミーリアは深々と頭を下げた。
すみません、本業の方が忙しくなってきて、2月いっぱいは更新が不定期になりそうです。
できるだけ早く次の話を投稿する予定です。
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