魔物を倒そう②
「そういえば、ミーリア。痴漢撃退用の魔道具はできたのか?」
「あぁ。それでしたら、できましたよ」
商品を売る話をしていて、ミーリアが前々から作っていた痴漢撃退用の魔道具のことを思い出した。
俺は材料を取りに行くくらいしか手伝えていないが、どうやらちゃんとできたらしい。
できてしまったのか。
少し前にキーリとリノが疲れた顔をしているからかなり大変な作業だったんだと思う。
最近はその話はあまりしていなかったので、どうなったのかは知らない。
だが、どうやら、あきらめたわけではなく完成したらしい。
俺が話題に出した瞬間、キーリが嫌な顔をしたから量産するのも結構大変なんじゃないだろうか。
きらきらした顔のミーリアと疲れた顔のキーリの対比が結構やばい。
ミーリアも普段は気を使える子なんだけど、お金が絡むと人が変わるんだよな。
「これです」
きらきらした顔でミーリアは懐から白い小瓶を取り出した。
どうやらそれが例の痴漢撃退用の魔道具らしい。
「持ち歩いているのか? 魔狂キノコの液体が入ったやつを。危なくないか?」
「大丈夫です。キーリが魔狂キノコを無毒化する方法を見つけてくれたので」
なるほど。それでキーリが疲れた顔をしているのか。
魔狂キノコの無毒化はたしか、俺が持ってた本のどこかに書いてあったはずだ。
もし間違って食べた時の対処法の補足説明にこうすると体内に入ってしまった魔狂キノコが無毒化できますみたいな感じで書いてあった記憶がある。
手順も複雑で、最後に「とても大変なので、必ず市販の解毒剤を買っていきましょう」と締めくくられていたはずだ。
じゃあ書くなよな。おかげで世代を超えて被害者が出てるんだぞ。
「あれ? 容器は透明な容器じゃないんだな」
俺はミーリアの持っている小瓶を見て少し疑問に思った。
その小瓶は白い陶器製で中身の液体がまったく見えなかったのだ。
サイリウムみたいなものになると思っていたから容器は透明か半透明みたいなものになると思っていた。
中身が発光するのであれば、透明でないといけないと思うのだが。
「レインのアドバイスを受けて大きな音も出すことにしたので、どうしても外の容器が耐えられなかったんです。それに、一度使えば中身はただの水のようなものに変わってしまって再利用は無理みたいでした。ですので、いっそ地面にたたきつけて容器を割って使おうかと」
「……なるほど」
火炎瓶みたいなものか。
ほんとに悪漢撃退用か?
暴徒が使うのではなく?
「この容器は単純で、中に仕切りを入れた瓶です。リノに形を作ってもらってキーリに錬成鍋で陶器にしてもらいました。その時に液体も中に入れてもらっています」
「……確かに、それがちょうどいいかもな」
よく見るとあの容器にはふたがない。
毒性はなくなったとはいえ、魔狂キノコは危険物だから緊急時以外は取り出せないようにしたのかもしれない。
……いや、そんなもの撒き散らして大丈夫なのか?
それに、中身が混ざってしまえば液体みたいになるとはいえ、そんなものを路面にまき散らしても大丈夫なのだろうか?
ついでに言うと、容器のガラスの破片が残ることになると思うのだが、それは誰がかたづけるのだろうか?
疑問は絶えない。
「きっとよく売れますよ!」
「……」
キラキラした瞳で語るミーリアに何もいえなかった。
こう言う表情に弱いんだよな。
みんな普段大人びているから余計に。
いやなことは大人であるジーゲさんに任せてしまおう。
俺はまだ十六歳の子供なのだ。
前世と合わせればもうすぐ五十だろとか言ってはいけない。
「……早くくるといいな。ジーゲさん」
「はい。早く来て欲しいです」
ジーゲさん。
本当に早く来てほしい。
ポーション瓶は数個だけでいいから今日にでも来てくれないだろうか?
俺は心からそう思った。
ちょっと短いです。
次話は明日更新予定です。
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