特産品を作ろう!パートⅡ⑦
「ふー。疲れた」
「お疲れ様」
「あれ? キーリ?」
村に帰ってくると、キーリが出迎えてくれた。
村の外まで出迎えに来てくれるなんて珍しい。
というか、いつ帰ってくるかわからないのに外に出迎えに来るなんて不可能に近い。
もしかして、村で何かあったのか?
何かあったのかもしれないと思って村の方をみるが村の様子に違和感はない。
キーリ自身も焦った様子はないし何か起きた訳ではないんだろう。
ではなんで外まで迎えにきているんだろうか?
少し考えて、答えがわからなかったので本人に聞いてしまうことにした。
「何かあったのか?」
「実はジーゲさんがくるの。さっき先ぶれの人が来たわ。でも、ミーリアはいないから探しに行こうかと思ってここまできたら二人がちょうど帰ってきたってワケ」
「ごめんなさい」
ミーリアが申し訳なさそうに頭を下げる。
ジーゲさんの対応はミーリアがすることになっていた。
自分で言い出したことなのに守れなかったから悪いと思っているんだろう。
帰りには暴走もかなり落ち着いていたから、いきなり吸音草を取りに行こうとしたのも悪いと思っているのかもしれない。
今のミーリアの様子はお酒で失敗した後、素面になってから後悔している同僚に似ている。
「まだ来てないから大丈夫よ。商人さんくらいなら私でも対応できるもの。それに、ジーゲさんならアリアも大丈夫そうだって言ってたし」
たしかに、アリアが対応するのであれば失礼にはならないだろう。
アリア本人が大丈夫だって言っても実際は大丈夫な気はしないが。
アリアはいつも頑張りすぎちゃうからな。
キーリもそう思ったからわざわざミーリアを探しに来てくれたのだろう。
キーリの考えはミーリアにもわかったのだろう。
ミーリアはさらに申し訳なさそうな顔をする。
キーリはミーリアに肩の力を抜いてもらおうと思ってそういったのだろうが、ミーリアはさらに罪悪感を感じてしまったようだ。
「とりあえず、ジーゲさんを迎える準備をした方がいいだろ」
「そうですね」
俺が空気を換えるようにそういうと、ミーリアは家に向かう。
帰ってきたのだから対応はミーリアがすることになる。
それまでに売るものの整理や買いたい物の確認なんかもしたほうがいいだろう。
俺たちは一度家に帰ってジーゲさんを迎える準備をした。
***
「じゃあ、私たちは工房か私室のほうにいるから。よろしくね」
「はい。任せてください」
アリアたちは工房の方へと行く。
私はアリアたちと反対に家を出て跳ね橋の方へと向かった。
少し危なかった。
みんなにはできるだけ外の人と交流して欲しくない。
アリアにはレインが辺境伯様の予想以上の魔術師なら召し上げられるかもしれないから、レインを隠しておいてほしいといって引っ込んでもらっている。
レインにはアリアが交渉事には不向きだから、一緒に隠れておいてほしいとお願いしている。
二人ともそのことを信じているようで、相手が出てこないように気を使ってくれているようだ。
あの二人が交渉に出てこなければほかの三人が出てくることはないだろう。
私は辺境伯様にもみんなが魔術を使えることを黙っている。
そのことはみんなも知らない。
こんなに簡単に魔術師を量産できるとわかれば、レインの危険性は一気に上がる。
そうなれば辺境伯様はレインをどう扱うかわからない。
よくて召し上げられる。
悪ければ討伐命令が下るだろう。
この国の現状を考えると後者になる可能性も高いと思う。
切れすぎるナイフはかえって不便だと考える人間が多いのだ。
このことはアリアやキーリにも話していない。
貴族を騙すということはかなりの罪になる。
私一人が貴族を騙して、村のみんなも私に騙されていたのであれば罪は私一人で取ればいい。
そういう意味では、アリアが人前に出なくなったのは少し助かった。
徴税官などの相手も私がすることができる。
ジーゲさんと違って徴税官とは面識がないからアリアには対応させられないだろう。
もしアリアが対応したとしても、辺境伯様の養女であるアリアと徴税官では立場が違う。
今のアリアであれば大した話はしないはずだ。
流石に辺境伯様がくればアリアが対応する必要があるが、辺境伯様も、そうそうこの村に来たりはしない。
「……来たみたいですね」
跳ね橋のところまでくると、遠くから馬車が近づいてくるのが見える。
おそらくあれがジーゲさんの馬車だろう。
思っていたより大きい馬車だ。
そんなにいろいろと注文しただろうか?
橋を操作していると馬車は村のすぐ近くまでやってきた。
御者台にはジーゲさんが乗っており、その周りには護衛がいる。
護衛はいつも通り三人だ。
あの三人は最初からずっと一緒に来ている方で、二回目以降はあまり村人に接触して来なくなった。
おそらく、レインを刺激しない様に辺境伯様から厳命されているのだろう。
そうでなくても、錬金術師がいる場所に行くときには気をはるか。
錬金術師は上位に行けば行くほど偏屈な人が増えていくと聞く。
何が逆鱗に触れるかわからない以上、口は慎むだろう。
今ならなんとなくその理由もわかる。
魔力で知力が上がっていろんなものが見える様になってくると、見えている世界が変わってくる。
今まで何気なく見ていた小さなものが、実は大きな何かの予兆だったり、何気ないことが原因で大変なことが起こっているなんてこともわかってくるようになる。
本当に住む世界が変わったような気分だ。
レインも多分、私たちに合わせてくれているんだと思う。
レインは私たちの発言に奥歯に何かが挟まった様な顔をする時がたまにある。
そういうことがあると、私も早くレインと同じ領域にたどり着きたいと思う。
「頑張らないといけませんね。色々と」
私は近づいてくるジーゲさんたちの馬車を見ながら一人呟いた。
明日も夜に一話投稿する予定です。
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