特産品を作ろう!パートⅡ④
「キーリってもうポーション瓶を作れる様になってたのか?」
「あとちょっとでできる様になるの。だから、また支援魔術かけてくれない?」
「……」
キーリが上目遣いにお願いしてくる。
ちょっとだけ可愛いけど俺は騙されない。
どうやら、それが目的だったらしい。
「ダメだ」
「お願い! ちょっとだけだから!」
「いや、ちょっとって、俺は最後までやる以外できないんだが」
いやにしつこくお願いしてくる。
本当にちょっと足りないだけなのかもしれない。
総魔力量が一か二足りないだけとか。
それくらいなら、ちょっと修行に付き合ってやってもいいかもしれない。
「……どれだけ足りないんだ?」
「……全部装備をつけた状態で十くらい?」
「全然たりてないな」
今から十も上げようと思うと、ブラックウルフのエリアを抜ける必要がある。
というか、完全装備でも十足りないってことはベースの状態だと倍くらい必要ってことじゃないか?
そんなの却下に決まってる。
「レインに魔力を上げてもらえればいろんなものが作れるようになるの! ね? お願い。先っちょだけ。先っちょだけでいいから!」
「先っちょってなんだよ! っていうか、リノに変なこと教えたのはキーリだったのか!?」
「……えへ」
どうやら、たまにリノが内容もわかっていないことを言うと思っていた。
どうせ兄の影響だろうから、姉のキーリが矯正すると思っていたが、原因がキーリなら改善は見込めない。
キーリもリノの姉だけあってこう言うお調子者な面をたまに見せるんだよな。
今度、アリアとミーリアを交えて矯正する方法を考えたほうがいいかもしれない。
そのときはキーリもなんとかしよう。
それにしても、予想外に食い下がってくる。
まさか中毒になったわけじゃないだろうけど。
「……もしかして、キーリ、楽しようとしてる?」
「……」
中毒にこそなっていないが、楽して能力を上げる方法を見つけてしまったから味を占めたのかも。
キーリは面倒くさがりとかではないと思っていたけど、やっぱり楽ができるとそっちに流れちゃうものだからな。
こういうこともあるから支援魔術が古代魔術師文明時代は禁止されてたのかもしれないな。
「ちゃんと修行して魔力量を上げなさい」
「えー」
「だめだよ。リノがまねしたらどうするんだ?」
セリフのことといい、子供は大人のマネてほしくない部分ばかりマネをする。
今はリノとスイは積極的に鍛えているけど、楽をすることを覚えてしまえば修行の効率は落ちてしまうかもしれない。
「二人とも、なんの話、してるの?」
俺たちが言い合いをしていると、部屋にスイがはいってきた。
おそらく食事の準備ができたことを言いに来たのだろう。
「いや、キーリが前みたいに俺に支援魔術をかけて欲しいっていうから、ダメだって言ってたところだ」
「『完全耐性の指輪』より必要魔力量は少ないから大丈夫よ」
「そんなこと言われても、俺が調整できないんだって。それに、ポーション瓶なら買えばいいじゃないか」
「でも、錬成鍋で作ったものの方が性能がいいんでしょ?」
ポーション瓶は二種類の製法がある。
手作業で作る方法と錬成鍋で作る方法だ。
手作業で作るものは対魔ガラスという魔力を通しにくいガラスを加工して作る。
これはどこかの種族が伝統工芸的に作っているようで、結構な量が出回っている。
使い回しもできるし。
一方、錬成鍋で作る場合はほかの魔道具と同じように材料を錬成鍋に入れて作る。
こちらで作ったポーション瓶は使い捨てになってしまうのだが、品質が少し上がったり、効果が長持ちしたりするらしい。
確かにキーリの言う通り、錬成鍋で作ったポーション瓶のほうが性能がいい。
「でも、今作るレベルのポーションならどっちでも大して変わらないよ。次にジーゲさんがくるときにポーション瓶を買おう? 『土液』が結構な利益を出しているらしいからミーリアもダメとは言わないだろ」
「そうだけど……」
キーリはまだあきらめきれていないらしい。
全部自分で作ったほうが気持ちがいいっていうのはわからなくはない。
それに、少しでも性能を上げたいという考え方は錬金術師として正しいだろう。
だからといって支援魔術をかけるつもりはないけど。
「レイン」
「ん? どうした? スイ」
俺がキーリと言い合いをしているとスイが俺の服の裾を引っ張ってきた。
どうやらさっきからずっと俺たちの言い合いを聞いていたらしい。
「私も、レインの支援魔術、受けてみたい」
「……いや、ダメだって」
「キーリだけ、ずるい。私も、大魔術、撃ってみたい」
スイはキラキラした瞳で見上げてくる。
たしかに、俺の支援魔法ありだと撃てる魔法は増える。
だが、それは相当危険だ。
支援魔術で体内の魔力が増えるわけではないのだ。
周りから俺の魔力で覆って誤魔化すだけ。
当然、必要な分の魔力はスイ自身が出す必要があるだろう。
おそらく魔術は機械的にスイから魔力を必要量だけ吸い上げる。
それは命の危険すらあることだ。
錬成という比較的消費魔力の少ないことをしていたキーリでさえ気絶するほど魔術を持っていかれたのだ。
魔術なんて打てばどうなるかわかったものではない。
というか、さっき俺が想像していた通り、スイがキーリをまねちゃったじゃないか。
「……キーリ」
「ごめんなさい」
俺が恨みがましくキーリを見る。
キーリも自分のせいでスイが危険なことをしようとしていたと気づいたのだろう。
しょんぼりと項垂れる。
しかし、これは本格的に支援魔術を練習しておかないといけない気がする。
スイまで言い出したっていうことはリノたちが言い出すのも時間の問題だろう。
そうなればいつまで断り続けられるかはわからない。
この村で俺は少数派なのだ。
胃袋もつかまれてるし。
俺は久しぶりに本気で魔術の練習をすることを心に決めた。
明日も夜に一話投稿する予定です。
もうちょっと練ってから投稿したいので申し訳ありませんが11月から更新速度を2日に1回に落とさせてください。
今月いっぱいは予定通り一日一話投稿を続けます。
気に入っていただければ下にある【☆☆☆☆☆】を【★★★★★】にして評価していただけると嬉しいです。




