魔道具を作ろう⑨
総合四半期ランキング10位記念、感謝の不定期投稿です。
この話は二話目です。
「……」
キーリは人形のように動かない。
怖くなって口元に手を近づける。
どうやら、息はしているようだ。
「気を失っただけか。魔力欠乏かな」
いきなり倒れるからびっくりした。
どうやら、キーリは気を失っただけのようだ。
おそらく魔力欠乏だろう。
古代魔術師文明に作られた錬成鍋は普通、使用者の魔力の半分以下しか使わない。
それ以上の魔力が必要な場合は錬成が止まるようにできているらしい。
魔力欠乏になると危険だからだ。
この錬成鍋も半分以上の魔力は吸わないようにできていたはずだ。
今回魔力欠乏になったのは、おそらく支援魔術でキーリの魔力が向上していたからだろう。
そのせいで錬成鍋が魔力量を読み違えたんだと思う。
やっぱり、支援魔術を使った状態での錬成は危険だな。
下手したら生命力も吸われてたかもしれない。
そうなれば俺が錬成鍋を壊してでも止めていたけど。
なんにせよ、支援魔術はもう使わないようにしよう。
「しかし、一発で成功させるとはな」
俺は錬成鍋の中をのぞき込む。
錬成鍋の底には魔道具になったミーリアの指輪が転がっていた。
確証は持てないけど、たぶん『完全耐性の指輪』になっているだろう。
錬成直後は魔道具が不安定なことがあるらしい。
もう手にとっていいかもわからないので、触れることはできない。
だが、感じられる魔力量から、かなり強力な魔道具になっているのは間違いない。
これであればブラックウルフの魔法くらいであれば余裕で防げるはずだ。
「お疲れ様。キーリ」
俺はそう言ってキーリの頭を撫でる。
キーリを撫でるのは初めてな気がするが、撫で心地はリノと似ている気がする。
やはり姉妹ということかな。
キーリはリノのように屈託のない笑顔で微笑んだ。
***
「あれ? ここは、工房?」
「あ、気が付いたか」
しばらくしてキーリは目を覚ました。
意識がもうろうとしているらしく、しばらく辺りをきょろきょろと見回す。
次第に状況を思い出してきたのか、瞳に光が宿りだしてきた。
「そうだ。指輪!」
キーリは飛び起きて錬成鍋の中を確認する。
キーリがのぞき込むと、錬成鍋の底には魔道具の指輪があった。
完成直後ほど光ってはいないがまだ淡く発光している。
「やった! 成功したのね」
「あぁ。おめでとう」
キーリは喜びの声を上げる。
キーリの目から見ても成功したとわかったのだろう。
リノのように飛び上がって喜んでいる。
「あ! ちょっと待って。ちゃんと確認するわ」
しばらく喜んだあと、キーリはいきなり冷静になって錬成鍋に手をかざす。
ちゃんと目的の魔道具ができたか確認していないことを思い出したようだ。
キーリの錬成鍋には完成したものが何かを解析する能力がついている。
これは魔女教の隠れ家にあったものだし、かなり高性能なものなんだろう。
もしかしたら、古代魔術師文明の後期に作られたものなのかもしれない。
俺も解析魔術は知ってるけど、キーリたちにはまだ使えない。
解析魔術は一覧を『根源』から持ってきているらしく、恐ろしく魔力を食うのだ。
だから俺もあまり使いたくない。
この錬成鍋についている解析魔術は錬成鍋の中に一覧があるらしく、魔力の消費はかなり少ない。
その分、解析できない魔道具もある。
でも、この錬成鍋で作ったものなので、錬成鍋内の一覧に情報がある可能性は高いと思う。
もし、分からなかったらその時は俺が解析魔術をかけるつもりだ。
さすがに本番で使って試すわけにはいかない。
「ちゃんと出来てるわ。よかった」
キーリは胸を撫で下ろす。
どうやら解析できたようだ。
キーリの様子を見るに、『完全耐性の指輪』になっていたのだろう。
「これで明日から探索を進められるわね」
「いや、キーリが状態異常を治すポーションを作ってからだぞ?」
「え?」
どうやら、キーリはこの魔道具が一つできれば探索が再開できると思っていたらしい。
だが、指輪は一つしかない。
当然リノに装着してもらうとして、リノ以外が『恐慌』の状態異常から守ることはできない。
その状態では探索を再開することはできないだろう。
ブラックウルフは誰に『恐慌』の状態異常をかけてくるかわからないのだ。
リノ以外が『恐慌』状態になった時のためにそれを直すポーションは必要だろう。
「え? じゃあ、魔道具は意味なかった?」
「そんなことないぞ? 一人無事なメンバーがいればポーションでほかのメンバーの状態異常を治せるからな」
「そっか」
キーリは少しだけ嬉しそうな顔をする。
自分のやったことがちゃんと役に立つとわかってうれしかったのだろう。
一人無事ならほかのメンバーが『恐慌』状態になったとしてもポーションで治すことができる。
ポーションは予防の薬と違って体にかけるだけでも効果を発揮するし、キーリも抵抗が少ないのだろう。
飲んだ方が効果は高いんだけどな。
「最低でも百本は作ってからじゃないと」
「え? また百本!?」
キーリは驚いた顔をする。
前も木のクワを百本作らされて悲鳴を上げていたからな。
だけど、足りませんでしたっていうのはまずい。
俺が助けに入ることもできるから命を落とすことはないだろうけど、いつまでも俺のフォローを期待されても困る。
「まあ、頑張れ! こんな難しい調合もできたんだ。キーリならできるよ」
「……」
難しいものを作るのと、簡単なものをたくさん作るのでは苦労の質が違う。
だが、みんなの安全のために一人に二十本ずつくらいは持っておいて欲しい。
状態異常は抵抗できるけど、同レベル帯だと抵抗するのはかなり難しい。
魔力が増えてくれば対抗魔術を自分にかけておき、対処することはできるけど、キーリたちではまだ無理だ。
キーリ自身もポーションの必要性は理解しているのだろう。
ガックリと肩を落として力なくうなづいた。
本日二話目です。
明日も夜に一話投稿する予定です。
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