魔道具を作ろう⑤
「もう芽が出てる。何度見てもすごいな」
翌日、俺たちは予定通り休日を取っていた。
朝起きて、俺はやることもなかったのでスイに付き合って畑に来ている。
畑に来てスイが水やりをしている隣で畑を見ると、畑にはところどころで芽が出ていた。
一昨日できあがった畑にはすでに芽が出ており、畑ができ始めていたのだ。
この光景は対魔貴族をしていた時にも見たことがあった。
成長が早い植物だと、前世で見た教育番組の早送り動画みたいに成長するのだ。
この場所は前に俺がいたところほど魔力濃度が濃くないのであそこに比べてはゆっくりだが、それでもありえないくらいの成長速度だ。
「やっぱり、土地の魔力が多いほど成長速度が速いのかな~」
「それだけじゃ、ない、と思う。去年は、ここまでじゃ、なかった」
「そうなのか?」
俺のつぶやきにスイが返事をくれる。
どうやら、スイは俺とは違う意見を持っているらしい。
「去年は、一週間くらいして、やっと芽が出てた。それでも、男の人たちは、はやいって、驚いてた」
「へー。なんでだ?」
土地の魔力だけが原因であれば、去年と今年は同じスピードで成長するはずだ。
違いが出ているということは土地の魔力以外にも影響するものがあるんだろう。
だけど、それを特定するのは難しい。
去年と今年ではいろいろな部分が変わったからな。
アリアたちの魔力量が多くなったのもそうだし、クワもキーリが作った木のクワになってる。
昨日も今日も水やりはスイが魔術でやってるから、それの影響かもしれない。
「うーん。今の情報だけだとわからないな」
「……調べて、見る?」
スイは水やりをしながら俺の方を見上げてくる。
その瞳は心なしかいつもよりキラキラしているように見える。
この様子だと、一人でもやってみるだろう。
スイは理由を調べたりするのが結構好きだ。
読んでる本も魔術の仕組みとかを解説している本が多い。
たぶん前世にいたらきっと理系女子だっただろう。
「一部で、普通の、水を撒けば、水やりのおかげかは、わかる」
「……そうだな。今から調べられるのはそれくらいか」
どうやら、すでにスイはどうやって調べるかも考え始めていたらしい。
今から変えられるのは水やりだろう。
『水生成』をできるのはスイだけなので、スイが作った水と井戸で汲んだ水とで比較することになると思う。
俺が作った水を撒くと呪いのせいで植物が枯れちゃうかもしれないからさすがにそれはできないだろうし。
まさか今から耕しなおすわけにはいかないだろう。
木のクワは全部使いきっちゃってるし。
そこに影響がないのであれば続きは来年になるかな。
「どの辺を、誰が耕したか、覚えてる。だから、耕した人の、違いも、調べられる」
「そうか、そういえば、五人ともそれぞれステータスが違うしな」
アリアたちは総魔力量には大した違いはない。
だけど、全員が方向性を決めて魔力を成長させてるから属性ごとの魔力量は全然違う。
どの属性の魔力が農業に役立つのかみたいなのも調べられるかもしれないな。
「まあ、許可が得られればだけどな」
今は書類上はこの畑は全部俺のものとなってるけど、畑に関しての決定権を持ってるのはミーリアとアリアだ。
当然、二人の許可が得られなければ調査をすることはできない。
みんなの手も借りることになる。
思い立ったからやってみていいっていうものではないだろう。
やりたい理由も気になるからってだけだしな。
「レインが、やりたいって、いえば。たぶん大丈夫」
スイは自信満々に言う。
その根拠はいったいどこから来るのか。
俺はきらきらした瞳で見上げてくるスイの頭を撫でた。
「聞くだけ聞いてみるよ」
聞くだけならタダだ。
スイがやる気になっているんだし、少し頑張ってお願いしてみてもいいだろう。
この後朝食でアリアとミーリアと顔を合わすことになる。
最近は休日も朝食と夕食はみんな一緒に取ってるからな。
昨日何も言っていなかったし、たぶんいるだろ。
俺は水やりを終えたスイと一緒に家へと戻った。
***
「別にいいんじゃない?」
「そうですね。問題ないと思います」
「良いのか?」
俺とスイは朝食の時にミーリアとアリアにさっき言っていた実験をしてもいいかと尋ねると、あっけなく許可が出た。
思ったより簡単に許可が出たので少し肩透かしを食らった気分だ。
それだけ信用されていると思って喜ぶべきか。
「去年より遅くなることはないんですよね?」
「それはないな」
今からまく水を変えるといっても、水は去年も農作業に使っていた水だ。
去年以下になることはないだろう。
それに、今年は木のクワのおかげで去年より一ヶ月近く早く動いている。
ここから去年より遅くなるっていう方が難しいだろう。
可能性はゼロではないが、流石にやばくなれば実験は中止する。
「なら、問題ありません。去年と同じくらいの収穫時期の予定で辺境伯様には報告していますから」
「むしろ、早すぎるのをなんとかしないといけないかもしれないわ。麦なんかは保存が効くけど、保存の効かないものも多いですから」
「そうですね。途中でジーゲさんに売却しないといけないかもしれません」
この村では何を育てるかも事前に連絡しているらしい。
この村はこの国唯一の開拓村で、今後こんな感じの開拓村を増やす予定だからいろいろな作物を育てるように依頼されているそうだ。
その中には日持ちがしない作物も結構ある。
そういったものは納税の前にジーゲさんに売って、金銭で納税する必要も出てくるだろう。
魔の森の近くでは何がどれだけ育つかわからない以上、いろいろなものを育てるのは間違っていないとは思う。
「来年は保存性も含めて何を作るか考えておく必要がありそうですね」
「そうね」
アリアとミーリアは真剣に検討を始める。
作物の名前とかは全然覚えていないので俺では話に入っていけない。
俺が困った顔をして二人の様子を見ていると、スイが俺の服を引っ張る。
「何から、調べる?」
「そうだな、許可も得たしそれをちゃんと決めておこうか」
俺とスイは実験の話を始めた。
明日も夜に一話投稿する予定です。
気に入っていただければ下にある【☆☆☆☆☆】を【★★★★★】にして評価していただけると嬉しいです。




