開拓民、始めました②
ちょっと短めです。
少しだけ時間がさかのぼります。
「申し訳ありません。アリアさんの開拓村への移住希望者は一人もいません」
「はぁ。そうですよね」
私は近くの町にある役場まで来ていた。
一か月前に出した開拓村への移民の募集依頼の結果を聞きに来たのだ。
その返答は予想通りゼロだった。
これは仕方のないことだと思う。
私たちの開拓村は評判が悪すぎた。
私が伯母様から開拓村を任されたのは十五歳になった一年前のことだ。
私が任された開拓村は魔の森の目の前の村。
その立地などからか難しい部分は多かったが何とか回っていた。
つい一か月半前までは。
一か月半前、開拓村の若者のうちの数人が魔の森へと狩りに行ってしまった。
それまで魔の森の近くの土地を耕し、村の土地を広げていたので油断もあったのだろう。
だが、それは大きな失敗だった。
若者は魔の森の中から魔物を引っ張って村へ戻ってきた。
村の男たちが防衛に出て何とか村は守れた。
だがその代償は大きかった。
村の男手の多くが魔物との戦闘で命を散らしてしまったのだ。
夫を亡くした女性たちはつらい開拓村を捨てて故郷に戻ってしまった。
さらに悪いことは続いた。
村に魔物を引っ張ってきた若者が仲間を連れて村を脱走した。
その際、武器や食料など多くのものを持ち去られた。
村に残ったのは女子供だけ。
食料は十分あるしもうすぐやってくる冬をしのぐことはできるかもしれないが、春になって開墾を行う男手がいない。
仕方ないので村に一か月前男手の募集を行った。
冬を越えられるだけの食料は提供できるから数人でもいいので男性の移住者を募集したのだ。
応募はゼロ。
まあ当然といえば当然か。
誰が好き好んで少し前に魔物に襲われた村に移住したがるというのか。
何とか撃退したとはいえ、もう襲撃が来ないという保証はないのだから。
ただでさえこの国は戦争続きで男手が少ないのだ。
もしかしたら冬を越せるかわからないものが来るかもしれないと思ったがそれすらなかったようだ。
私たちの開拓村より街のスラムのほうがましということか。
私が肩を落としていると、受付の女性が話しかけてくる。
「ま、まあ、春までまだ時間はあります。もしかしたら春ごろになったら応募があるかもしれません」
「……そうですね」
正直、春になれば応募が来るなんていうことはまずありえない。
春はどこも作付けなどで人手が必要だし、野山に入れば食料をとることができる。
人が食うに困るのは冬。
応募が来る可能性があるとしたら冬前のこの時期だけだったのだ。
もうすぐ雪が降って村間の移動ができなくなり、募集ができなくなる。
今日が最後のチャンスだった。
「ありがとうございました」
「……アリア様。気を落とさずに頑張ってくださいね」
「……」
私は役場の女性に深々と頭を下げて役場を後にした。
***
およそ二日かけて私たちの開拓村に帰ってきた。
護衛を冒険者に依頼したが、受けてくれる人はいなかった。
片道の依頼になるうえ、帰りは雪が降って村に取り残されるかもしれないのだ。
受けてもらえないのは仕方ないことだ。
だが、「どうせ、この町より辺境に盗賊なんて出ないから護衛なんて不要だよ」といわれたのはとても悔しかった。
村を大きくしていつかあいつらを見返してやりたい。
「まあ、現状ではそれも難しそうだけどね……」
私がそんなことをつぶやきながら歩いていると、村が見えてきた。
「あれ?」
村の前に誰かが立っている。
村の誰かが私を迎えに出てきたのかと思ったが、どうも違うような気がする。
まず、黒髪の子はいなかった気がするのだ。
(もしかしたら、開拓村の移住希望者かも)
大きな村や町の人は町の役場でちゃんと紹介されてくるが、小さな村で口減らしされたようなものは役場を通さずに直接村に来ることがあるらしい。
もしかしたら、そのたぐいの移住者かもしれない。
私は無意識に彼の背中に向かって駆けだしていた。
次回もアリア視点の予定。
次の更新は明日の午前中の予定です。




