魔道具を作ろう③
少し遅くなりました。
「この指輪。ミスリルだったはずです。使えませんか?」
「え? いいの!?」
部屋に戻ってきたミーリアの手には一つの指輪があった。
その指輪はミスリル特有の虹色の光沢がある。
魔力を込めてみると、銀なんかよりずっと魔力が入りやすい。
おそらくかなり高純度のミスリルだろう。
しかも、メッキとかではなく、中まで全てミスリルなようだ。
「こんなものどうしたんだ?」
「元婚約者からもらったものです」
「……」
ミーリアの元婚約者についてはよく知らない。
その辺は誰も話題にしないからだ。
ミスリルの指輪をプレゼントできるくらいだから相当位の高い人だったのだろう。
「……いいの?」
「いいんです。もう終わったことですから」
俺たちはミーリアの方を見る。
まだ振り切れてはいないのだろう。
まだ辛そうな顔をしている。
「アリアも前に進もうとしてる。私だけ立ち止まってるわけにはいけません」
アリアは村に帰ってくるまでの間、出来るだけ人といるようにして、恐怖症を治そうとしていた。
それに、どうやら、俺たちの誰かが一緒にいないと不安なようだが、一人でいる時間も作って克服しようとしているらしい。
ミーリアもその様子を見て、思うところがあったのかもしれない。
「そっか」
キーリはミーリアから指輪を受け取る。
指輪を渡すミーリアの手は少し震えていた。
あの指輪は大切な物なんだろう。
その指輪はいまだに輝きを保っており、傷一つ見当たらない。
ミスリルも銀だから手入れをしないとくすんでしまうはずだから、今でも手入れを怠っていないのだろう。
「……あ、夕飯の支度中でした。私は戻りますね」
ミーリアはキーリに指輪を渡すと慌てたように工房から出て行く。
まるで指輪に対する未練を振り切るようだった。
「……ねぇ。レイン。ミスリルって作ることができるのよね」
「たぶん可能だけど、まだ当分先だぞ?」
ミスリルは銀の加工品だ。
錬成鍋を使って作ることは可能ではある。
だが、採算も合わないし、制作するのに恐ろしく魔力がいるので、作るものはほとんどいない。
「作れるようになったらこの指輪はミーリアに返したいなと思って」
「……そっか。それがいいかもな」
ミーリアはああいっていたけど、別にすべての過去を捨てる必要はないと思う。
今でも大切にしているということはこの指輪はミーリアにとっていい思い出が詰まったものなんだろう。
「あ、そうだ」
キーリは机から別の本を取り出してペラペラとめくる。
「ねぇ。こっちの方の魔道具にしようと思うんだけど、どうかな?」
そう言ってキーリは一つの魔道具を見せてくる。
その本はさっきの本とは違い、きっちりとした文章で魔道具の説明がされていた。
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『完全耐性の指輪』
世の中にはいろいろな危険が潜んでいます。
毒や麻痺などの状態異常は病院で簡単に治すことができますが、それでも治すまでは心身に大きな苦痛があります。
そういったものからご家族を守るために、『完全耐性の指輪』を作ってみてはいかがでしょうか?
市販のミスリル製の指輪をベースに簡単に作ることができます。
【必要能力】
知力:15
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「へー。完全耐性か」
「これなら、ミーリアに返した後も使うことができるわよね」
確かに、毒なんかは結構一般生活でも出会ったりする。
毒耐性の魔道具をつけておくと食中毒なども防げるらしく、旅なんかでは必須のものなのだそうだ。
『恐慌』も防げるはずだし、『恐慌』だけを防ぐ指輪よりはずっと使い勝手がいいだろう。
「確かにこれなら今後も使えそうだな。だけど、知力が15ってキーリはそんなに高かったっけ?」
キーリは知力を重点的に育てているはずだ。
それでも、総魔力量が30くらいだから、多分10くらいだと思ったんだけど。
「私の知力は今11よ。でも、知力上昇の薬とかを飲めばなんとか15に届くわ」
「おいおい……」
バフ系のポーションは無茶苦茶苦い上にしばらくの間そのステータスが伸びにくくなる。
状態異常を防ぐポーションよりやばいものだ。
「もともとリノにポーションを飲ませないように魔道具を作るって言ってたんじゃなかったっけ?」
「私は大丈夫よ。少しの間ステータスが伸びにくくなるだけだもの」
俺は大きくため息を吐いた。
これは言っても聞かないやつだな。
「俺が支援魔術で知力を上げるからそれで勘弁してくれ」
「え? いいの?」
俺の支援魔法はかなりの能力向上が見込める。
だが、ステータスが一気に上がるというのは麻薬のような快感を与えるらしい。
古代魔導士文明では、中毒者もいて、一定以上の強化魔術は禁止されていたそうだから相当やばいのだろう。
そういう理由もあって、俺はあまりキーリ達には支援魔術をかけてこなかった。
魔術の操作範囲では俺の支援魔術をキーリ達のレベルに合わせられなかったからだ。
「今回だけな」
「やった!」
まあ、短い時間なら大丈夫だろう。
支援魔術なら、薬のようなデメリットもないしな。
俺は嬉しそうにするキーリを眺めていた。
明日も夜に一話投稿する予定です。
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