アリアの帰還④
「じゃあ、探索は畑仕事が終わってからってことか?」
「そうね。その予定よ」
「わかった。じゃあ、さっさとやっちまおうぜ」
パーティーが終わって今後の予定を話すと、リノはすぐに仕事の準備を始めた。
俺はリノが不満を言うと思っていた。
だが、そんな様子は全くない。
なんでだ?
俺が首を捻りながらリノを見ていると、リノと目が合う。
「ん? レイン兄ちゃん? どうかしたのか?」
「いや、リノは早く探索したいと言うかと思ってたから」
俺のセリフにリノはキョトンとした顔になる。
俺の言っていることの意味がわからないみたいだ。
「何言ってるんだ? 仕事を終わらせてからじゃないとやりたいことができないのは当然だろ?」
スイの方も見るが、それが当たり前という顔をしている。
どうやら、ここではおかしなことを言っているのは俺の方らしい。
リノとスイはこの春で十三になった。
成人の十五歳まであと二年ある。
まだ子供の年齢だ。
だが、この辺では子供だからと言ってわがままが通るわけではないらしい。
農村では子供でも働いて当たり前なのだろう。
元貴族で一定以上の教育を受けているはずのアリアやミーリアはまだしも、キーリも十六歳にしては落ち着いているなとは思っていた。
子供の頃から仕事をしていて、子供扱いはされていなかったのかもしれない。
すこし悲しく思ってしまうのは俺が前世の記憶を引きずっているからか。
「じゃあ、明日から作業開始ってことでお願いね」
そんなことを考えているうちにも話は進んでいく。
「明日から? 今日からじゃないのか?」
「こら。リノ。アリアたちも疲れてるんだから帰ってきた日くらいはゆっくりさせてあげなさい」
「そっか。それもそうだな」
俺たちは今日帰ってきたところなのだ。
特にアリアはかなり疲れている。
今日は休みにしたほうがいいだろう。
パーティしているうちにもうすぐ夕暮れになる時間になってるしな。
「じゃあ、みんなお願いね。レインは二週間どうする?」
アリアが俺の予定を聞いてくる。
アリアたちはこれから二週間、開墾作業を行うことになる。
農作業のできない俺は戦力外なわけだから、やることがないわけだ。
俺は開墾作業を手伝えないからな。
実はやろうと思っていることがある。
「うーん。俺はちょっと魔の森から出てきた魔物の狩りをしようかと思ってる」
「魔物狩り?」
「そう。今までは村の方に出てくる魔物だけを退治してたけど、他のエリアにも手を広げようかなと」
辺境伯領はかなり広い範囲が魔の森に接している。
そして、この開拓村の近く以外の場所からも魔物が辺境伯領に流入している。
実際、アリアが倒した魔物もこの魔の森から飛び出した魔物だったようだし。
魔物が魔の森から出てくる一番の原因は魔の森の近くにある魔の森の支配の及ばないエリアを潰すためらしいので、開拓村のあるここが一番魔物が出やすい。
ここ以外の場所は魔の森にいられなくなった魔物が逃げて森の外に出てくる。
だから比較的弱い魔物が多い。
それに、ほとんどが魔力濃度の濃い魔の森の近くから離れることはない。
だが、ごくまれに人里近くまで魔物が出て行くことがある。
そして、そうなった魔物は魔力の補充のため人を襲うことが多い。
人間は体内にかなりの量の魔力をためてるからな。
襲われたのが冒険者みたいな力のある相手であればまだいいが、一般人しかいない村なんかを襲ったら大変だ。
一般人は魔物に勝てるわけがないので、軍が討伐しにくるまで逃げ隠れするしか手はない。
対処が間に合わないと、一匹の魔物でもかなりの被害が出るらしい。
せっかく暇なので、この際、魔の森の近くでたむろしている魔物を一掃してしまおうと思ったのだ。
辺境伯様にはお世話になってるんだし、それくらいはやってもいいだろ。
特に春先は魔の森の魔物が活性化して外に出てくる魔物の量が増えるからな。
この開拓村は辺境伯領の魔の森に接している部分のほぼ真ん中に位置する。
身体強化全開でやれば半日もあれば端っこまでいけるはずだ。
「今回は辺境伯様にお世話になったからな。魔物の多い春先に間引いておこうかと。まあ、取りこぼしもでるだろうから、建前は魔石を求めて広範囲を狩るってことにしとこうかな」
「……そうですね。依頼と言う形で受けるとまたお願いされるかもしれませんから、魔石集めという建前でいいと思います」
ミーリアも賛同してくれる。
おそらく、ミーリアが辺境伯様にうまく伝えてくれるだろう。
暇つぶしっていう部分も多いんだけどな。
俺はアリアたちの作業を手伝えないから。
恩を売っておけば何かの時に助けてもらえるかもという打算もある。
「じゃあ、レインはそれでいいとして、私たちの探索再開は二週間後で大丈夫なの?」
「それでいいだろ。そのころになれば開墾作業も終わるだろうし。魔の森も落ち着いてるはずだ」
「魔の森が落ち着く?」
「あれ? 言ってなかったっけ? 春先の一か月は魔物の動きが活発になるんだよ」
なぜかはわからないが、春先は魔物が活性化する。
魔の森の中の魔物も強くなって、魔力濃度も少しだけ上がるのだ。
母さんは嬉々としてこの期間に修行していたが、アリアたちはまだその時じゃないだろう。
今年は期せずしてこの期間は魔の森の探索がなかったが、来年はちょっと気をつけた方がいいかもしれないな。
来年には、みんなそんなこと気にしなくていいくらいに強くなってるかもしれないけど。
「じゃあ、探索再開は二週間後から。それまでに土地の開墾を終わらせましょう!」
「「「「おー!」」」」
こうして、俺たちは探索再開に向けて動き出した。
明日も夜に一話投稿する予定です。
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