アリアの帰還①
「はあ。帰ってこれたわ」
「一か月ちょっとぶりなのにだいぶ離れていた気がするな」
俺たちは開拓村に帰ってきていた。
「帰りは快適だったわ。行きは徒歩だったから大変だったのよ」
帰りは辺境伯様が馬車を用意してくれたので、快適な旅路だった。
まあ、アリアと違って俺とミーリアは行きも馬車だったので、快適さは変わらないが。
「あ! レイン兄ちゃーん!」
「あ。リノ」
俺たちが馬車から降りると、家の中からリノが走ってくる。
「おかえり。レイン兄ちゃん!」
「ただいま。リノ。大丈夫だったか?」
俺はリノの頭を撫でる。
「うん! 出てきた魔物もへんきょーはく様の部隊が倒してくれたから、むしろ、何もできなくて体がなまっちゃいそうだった!」
「そうか」
辺境伯様の執事長さんは俺たちの移動許可と一緒に、この村を守る兵士を貸してくれていた。
リノたちだけでも十分だったのだが、念には念をということなのだろう。
断ることもできたのだが、ミーリアが断るのも失礼になると言ったので、俺たちがいない間の護衛を任せたのだ。
兵士に魔術は見せないことにした。
これもミーリアの提案で、今はこの国は戦争中なので、魔術が使えると知られると、戦争に駆り出されるかもしれないから、見せない方がいいということになったのだ。
結果、リノたちは完全に家に篭っていたらしい。
スイとキーリは魔導書が読めるようになっていたので退屈しなかったようだが、リノはだいぶ退屈していたようだ。
「おかえりなさい。アリア。それから、ミーリアとレインも」
「おかえり」
リノの後を追うようにキーリとスイが家から出てくる。
「ただいま戻りました」
「あ、ただいま。キーリにも心配かけたわよね。ごめんなさい」
「アリア……。ううん。アリアが無事でよかったわ」
そう言ってキーリはアリアと抱擁を交わす。
俺が出発する前に、執事長さんから結構怖い大会だっていうことを聞かされていた。
キーリもアリアのことをかなり心配していたからな。
「私は魔の森を見てくれている兵士さんに話をしてきますね。私たちが乗ってきた馬車で辺境伯様の領都に帰られると思うので、早くした方がいいでしょう」
「頼むよ。ミーリア」
ミーリアはそう言って魔の森の方にある村の出口へと向かって行った。
さっきまで御者さんと話していたのも、いつまで待ってもらえるか聞いていたのかもしれない。
まあ、急ぐ必要もないとは思うが。
「レイン兄ちゃん! レイン兄ちゃんが帰ってきたってことは魔の森に行けるってことだよな! 早く行こうぜ!」
「いや、リノたちが魔術を使えるとバレないように、兵士さんが帰るまでは行けないから」
「えー」
いや、早く帰ってもらった方がいいな。
いつまでもリノを止めてはおけない。
今の様子を見てキーリが苦笑いしているところを見ても、これまでも抑えるのが大変だったんだろう。
「リノ。それより、アリアが帰ってきたら、お帰りなさいパーティーをするんじゃなかったの? 仕上げ、まだ終わってなかったんじゃないの?」
「あ! そうだった!」
リノはそう言って家へと戻っていく。
相変わらず慌ただしい。
だけど、あの様子を見ていると帰ってきたなっていう気分になるな。
「キーリ。別にパーティなんて必要ないのに」
「……そうでもしないとリノが外に飛び出しちゃいそうだったの」
「……それは仕方ないわね」
たしかに、何か理由をつけないとリノはすぐに何処かに行ってしまいそうだ。
それにはパーティの準備はうってつけだろう。
リノは手先が器用だし、何かと凝り性な部分もあるしな。
「本当にありがとうございました」
「いえいえ。任務ですから。お気になさらずに」
俺たちが話をしていると、ミーリアが四人の兵士さんを連れて帰ってくる。
「……っ……っ」
アリアが兵士さんにお礼を言おうとする。
この村の代表者だから当然のことだ。
だけど、声がうまく出ないらしく、手足も震えている。
顔色も真っ青だ。
「本当にありがとうございました」
「おぉ! レイン殿!」
俺は前に出て兵士さんに声をかける。
兵士さんは俺を見てこちらに駆け寄ってくる。
「レイン殿が剣と防具に付与魔術をかけてくださったおかげで楽に戦えました」
「そうです。グレイウルフをあんなに楽に倒せたのは初めてです」
口々に兵士さんがお礼を言ってくれる。
まあ、簡単な付与をしただけなので、そこまでお礼を言われても困るんだが。
内容も『剣強化』と『防具強化』っていう既にある魔術だったし。
「簡単な魔術ですよ。付与魔術はもう少しで切れてしまうので、ここで掛け直しましょうか?」
「お気遣いなく。おそらくもう切れています。付与魔術のおかげで楽をし過ぎて昨日の戦闘は少し手間取ってしまいましたよ。帰ったら鍛え直しです」
そう言って兵士さんは右腕を見せてくれる。
右腕には包帯が巻かれており、怪我をしているようだった。
よく見ると、他の兵士さんも何箇所か傷を負っている。
「……これ、ポーションです。よかったら使ってください」
俺はポケットから取り出したと見せかけて、『収納』から回復ポーションを取り出す。
回復魔術はこの国でも教会の既得権益らしいから易々と使うわけにはいかないが、ポーションなら良いだろう。
このポーションは昔、俺が自作したもので、効能は低いけど、一本で四人の傷を治すくらいはできるだろう。
キーリがすぐに作れるようになるだろうからあげても大丈夫だろう。
というか、瓶を用意するためにすでに何本か捨ててるし。
「……こんな高価なものいただけませんよ」
「大丈夫ですよ。簡単に作れるものですから」
「良いのですか?」
「えぇ。むちゃくちゃ苦いので、水に薄めて飲んでください」
俺の失敗作はめちゃくちゃ苦いのだ。
だからこそ作っただけで全然使っていない。
こんな苦いポーション飲むくらいだったら回復魔術を使った方がいいからな。
「……ありがとうございます。ありがたく使わせていただきます」
兵士さんは俺のポーションを恭しく受け取る。
すみません。
それただの在庫処分なんです。
このポーションの効能が高すぎたせいでポーションの発注が大量に来てキーリが泣きを見るのは少し先の話だ。
明日も夜に一話投稿する予定です。
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