村へ帰る準備をする⑤
昨日の夜に間違ってあげてしまったので少し遅くなりました。
「俺たちは今のうちに帰りの支度をしておこう。昨日の夜のうちにアリアの宿から荷物は運んであるらしい。と言っても、ほとんど何もなかったらしいけど」
「そうね。あ!」
いきなりアリアが大きな声を出す。
どうやら、何かを思い出したらしい。
バツが悪そうに俺の方を見る。
俺には何の心当たりもないんだが。
何かまずいことでもあったのか?
「ごめんなさい。言いつけを破ってレインにもらった剣、折ってしまったの」
「剣? あぁ。あれか」
俺はアリアのベッドの脇に立てかけてあった剣を指す。
アリアがスライムと戦っていた時に持っていた剣だ。
あの場所に落ちていたのを俺が回収してきていた。
アリアはそれを手にとって引き抜く。
剣は半ばでぽっきりと折れていた。
どうやら、この剣が折れたことを気にしていたらしい。
「レインの言いつけを守らずに使い続けていたら折れちゃって」
どうやら、途中の村でアリアは魔物退治をしたらしい。
俺たちも道中その村を通ったので、アリアが村を助けたことは知っていた。
そのあと、キーリがいないから『修復』の魔術を使わずに使い続けたことを言っているのだろう。
「今回は仕方ないさ。まあ、道具っていうのはいつか壊れるものだからな」
「……直る、かな?」
「ん? この剣を使い続けたいのか?」
その剣はもうだいぶ前からずっと使っている。
折れたなら次の剣に持ちかえればいいかと思っていたのだが。
「良いのか? もう少し強力な剣に変えることもできるけど」
「この子は今まで一緒に戦ってきた戦友だし、私はまだこの子を使いこなせてない。これ以上強い剣なんて私では力不足だわ」
「……」
自分より強い魔物と対峙して何か思うことがあったのか。
そういえば、あの村を襲ったブラックウルフの時も、アリアは魔物が倒されてから帰ったしな。
「まあ、アリアがそうしたいならそうすれば良いさ。折れた程度であればキーリに直して貰えば良いだろ」
「直せるのね。よかった」
アリアは優しく剣を撫でる。
「剣に付与するような魔術を教えようか?」
「……レインはどうした方がいいと思う?」
アリアは俺の瞳をじっと覗き込んでくる。
「……魔力消費が多いから、今のアリアにはちょっと早いとは思うけど、今覚えておいてもいいかなと思ってるよ」
「そっか。じゃあ、レインがちょうどいいって思った時に教えて」
ん?
アリアなら食い気味に聞いてくると思っていたが、予想と違う反応が返ってきた。
「良いのか?」
「できないことを覚えると、無理しちゃうから。まずはできることからやろうと思うの」
「……そっか。わかったよ」
俺は黙々と剣をしまい、防具の手入れを始めたアリアの背中を見守った。
***
「じゃあ、気をつけて帰りなよ」
「辺境伯様には大変お世話になりました」
一日はあっという間に過ぎ、午前中の間に出発をすることになった。
ミーリアはやはり自制できなかったらしく、市場が閉まる時間を過ぎてやっと屋敷に帰ってきた。
そのあと、夜遅くまで支度をしていた。
辺境伯様は忙しく動き回ってくれて、二回戦以降の不参加は問題ないらしい。
それ以外にも、貴族籍を残すためや、フローリア辺境伯家の養子としてお披露目する会もすっ飛ばすので、いろいろと奔走してくれていたらしい。
ほんとにこの人には頭が上がらないな。
今だって、時間を割いて見送りに来てくれた。
アリアが、今他人が怖いということも考慮して、護衛は最小限にしてくれている。
そのおかげで、アリアも何とか辺境伯様の前に立てている。
アリアは隣にいるミーリアの手をしっかりと握ったままではあるが、昨日よりはましになったような気もする。
昨日は部屋の前を誰かが通る足音を聞くだけでおどおどしていた。
それに俺かミーリアが一緒にいないと顔が真っ青になっていた。
この調子なら、すぐにでも元に戻るだろう。
辺境伯様も、そんなアリアの様子を見て大丈夫だと思ったのか、ホッと胸をなでおろしている。
「元気でやりなよ。それに、うちの養女になったんだから、お義母様と呼んでくれてもいいんだよ」
「……それでは、恐れ多いですが、お義母様と呼ばせていただきます」
アリアの発言を聞いて、辺境伯様は目を見開く。
「ご、ご不快でしたか?」
アリアが不安そうにそう聞くと、辺境伯様は優しく笑う。
「いや、そんなことはない。そう呼んでくれてうれしいよ。今までは何度言っても叔母様と呼んでくれなかったからね。少し驚いただけさ」
辺境伯様はアリアの頭を優しくなでる。
「アリア。何かあったらいつでも連絡してくるんだよ。あんたは私の養女になったんだから」
「……はい。お義母様」
「よし」
辺境伯様は俺とミーリアのほうを見る。
「レイン、ミーリア。娘のことを頼むよ」
「「はい」」
俺たちが返事を返すと、辺境伯様は力強くうなずいた。
アリアたちの修行にこれまで以上に力を入れよう。
俺はそんな風に思いながら辺境伯様の屋敷を後にした。
今日はちょっと余裕がないので、感想返信は明日にさせてください。
明日も夜に一話投稿する予定です。
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