村へ帰る準備をする②
「……ちょっと無理そうだな」
「そ、そんなこと……」
俺がミーリアに一人で行ってくれるように頼もうとすると、アリアが抵抗する。
だが、その動きもいつものような力がない。
アリア自身も行くのは難しいと思っているんだと思う。
「今無理しても意味ないよ。今はミーリアに任せよう」
俺が諭すようにいう。
ミーリアに迷惑をかけたくないというのも行きたい理由に入っているんだろう。
本来は辺境伯様と会って色々と話をするのはアリアの役目だ。
目覚めた以上、自分がやるべきだと言うアリアの気持ちは分からなくはない。
だけど、今の状況で無理に行けば余計にミーリアに迷惑をかける。
おそらく、ちゃんと返答をできないアリアのフォローをするのはミーリアの役目になる。
数秒、俺と見つめあった後、アリアは弱々しくミーリアを見上げる。
「大丈夫です。任せてください」
ミーリアはアリアに優しく微笑みかける。
「ちょっと辺境伯様と話をしてくるだけですから」
ミーリアはなんでもないことのようにそう言う。
目上の人と会うのが楽なはずはない。
多分、アリアが気にしないようにそう言ったのだろう。
「……ごめんなさい」
アリアは悔しそうに謝る。
今にも泣き出しそうなアリアにミーリアは近づく。
俺が身を引くと、優しく一度アリアを抱きしめた。
「いいんですよ。これまで頑張ったんですから、少し休んでください」
「……」
ミーリアはアリアをベッドに寝かしつける。
アリアは色々と言いたそうに俺とミーリアを交互に見る。
「ミーリアの言うとおりだよ。今は頑張るべきときじゃない。俺もミーリアも近くにいるんだからな」
俺は横になったアリアの頭を優しく撫でる。
多分、色々あって不安だというのもあるのだろう。
王都に来て否定され続けたみたいだしな。
何かをしたがっているのもそのせいか。
だけど、今は体を休めて体力を回復するべきときだ。
体調が万全になれば心の方も少しは回復するだろう。
「とりあえず、今は寝るといいよ。まだ疲れが取れてないだろ?」
「……わかった」
アリアはそう言って瞳を閉じる。
しばらくすると、アリアは再び寝息を立てて眠り始める。
体は休息を求めていたんだろう。
もしかしたら、一昨日は寝てないのかもしれない。
「じゃあ、レイン、少し行ってきますね。アリアの様子も報告してくるので、おそらくすぐに戻ってこれると思います」
「おう。いってらっしゃい」
アリアが眠ったのを確認して、ミーリアは部屋を出て行く。
ミーリアが部屋から出ていくと、部屋の中に静寂が戻ってくる。
アリアはさっきから俺の服をずっと握ったままだ。
おかげで俺は身動きが取れない。
そうでなくてもこの状況の彼女を置いて行くわけにはいかないだろうけど。
「ごめん、なさい」
アリアは寝言で謝罪を続けている。
撫でるのをやめたらうなされ出したようだ。
精神的につらいときは人肌のぬくもりがあると落ち着くと聞く。
俺は再びアリアの頭を優しくなで始めた。
「アリアは本当によくやったよ」
しばらくするとアリアは安らかに寝息を立て出した。
もしかして、ずっと撫で続けなきゃ行けないのか?
俺の腕が疲れる前にミーリアが帰ってきて代わってくれると嬉しいな。
「……しかし、精神病か」
俺はアリアの顔をのぞき込む。
今は安らかに寝息を立てているが、さっきは顔が真っ青だった。
誰が見ても調子が悪いと気づくだろう。
「魔術では何ともできないんだよな」
精神をなんとかする便利な魔術はないのだ。
あるのかもしれないが、俺は使うことができない。
医学書のような専門書は見たことがない。
もしかしたら、古代魔導士文明の後期に図書狩りのようなことがあって無くなってしまったのかもしれないな。
残っている古代魔導士文明の本は魔術や魔道具関係のものばかりだ。
心の問題はアリア自身になんとかしてもらうしかない。
俺は自分の力不足を悔しく思いながらもアリアの頭を撫で続けた。
明日も一話投稿する予定です。
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