45 大決戦
サウリア軍の超巨大アーマシング『クルマラ』に搭載された火砲が一斉に火を噴けば、大轟々音と衝撃で、戦場となったシュミ山麓・ラムダ平野全体が揺らぐ。
着弾爆風の中にあってもセルペ軍の『ブルダ』は隊列を崩さず、砲塔をローテーションさせ応酬する。
巨大兵器同士の砲撃戦の間隙に、対峙したアーマシング『ケンタウロス』と『デュラハン』が正面からぶつかり合う。
共に師団規模の大軍勢は、担いだキャノンと携えたマシンガンを咆哮させ、銃剣と鉈とを交え鎬を削る。
巨人たちの戦場。足元には数千を超す歩兵達が奔走し、一山いくらの生命を鉄と火薬に混ぜ込んで戦の炎へくべてゆく。
「先程の敵砲撃で、ブルダ3機が擱座、5機が中破!」
「砲が生きているならトーチカとして使え。向こうが一発撃つ間にこちらは二発、いや、三発撃てる」
「敵アーマシング部隊の前衛が後退します!」
「第二陣が来る前にこちらの重装型で押し込め。向こうさんお得意の突撃をやらせるなよ!」
ガンナーシートの副官からの報告と、支援機からの通信をもとに大隊の指揮を執るナメラは、操縦桿を握る掌に滲んだ汗を軍服のズボンに擦り付けた。
「さてさて、例の黒い“ロボット”――ファーザーと言うらしいが――ファーザーは、まだ現れていないようだねェ」
窪んだ眼窩に鋭い眼光。
ナメラは戦場を見渡し、この戦争に於いて最も注視し警戒すべき存在の姿を探す。
「少佐。敵三十二脚級から、飛翔体が射出されました。このエリアへ飛んできます!」
「なになに? モニターへ拡大映像を回してくれ」
それは、巨大な鏃であった。
そうとしか形容できない、全長数十メートルの四角錐が、噴進機構から炎を曳いて飛来してきたのだ。
ブルダをはじめ、セルペ軍の砲撃機による対空弾幕を強引に突っ切って、鏃はデュラハン重装型の構築した戦線の内側へと“着地”した。
もうもうと巻きあがる火山灰の粉塵の中、四角錐の外殻が継ぎ目にそって割れ、分解。
巨大な装甲と噴進機構が、大きな金属音を立てて地面に脱ぎ落とされ。
「ぼさっとするな! 敵機であることだけは確かだ。撃て! 撃てェ!」
最も近くに居合わせた小隊長は、唖然とする部下を叱咤して、トリガーを促す。
デュラハンの肩に装備されたカノン砲が火を吹くと、同時。
灰色粉塵のカーテンを貫いて、白い閃光が地を滑った。




