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32/60

その32

ミオのお陰で昨日のうちに羽を消す事に成功したオリヴィアを迎えに、エフラムが朝から湖の屋敷へとやって来た。


王子と聖女がお忍びで町へ出掛けるという事で、馬車はシンプルな物が用意された。

そして、お互いに目立つ金髪にプラチナブロンドの髪を持っているため今日だけは魔法で茶髪へと色を変えている。


服も平服を用意したが、シンプルな服であってもエフラムの産まれ持った気品とは、容易に隠れるものではなかった。



馬車で揺られながら、フェリクスを膝の上に座らせたオリヴィアは、エフラムの姿をマジマジと見た。


「エフラム様の美しい金色の御髪が、隠されてしまうのは勿体ないですわ」

「それはお互い様だね」


オリヴィアの言葉に、エフラムはくすりと微笑む。


「でも、暗い髪色も知的な感じがしてそれはそれで素敵ですわ。エフラム様は何色でも似合いますのね」


そう言って微笑むオリヴィアに、エフラムの顔は見る見る赤らんだ。



この日、カフェに行く前に寄る予定の場所があった。

それはこの国の神殿。この神殿を通してオリヴィアが聖女であるとの神託が下され、そして日々修行に励んだ場所である。


神殿に二人は足を踏み入れる。



白い列柱が並んだ回路をを渡り、中に入ると輝く大きなステンドグラスにそこから差し込む淡い光。描かれるは女神や白い鳥。磨き上げられた燭台。仰ぎ見るその全てが、聖なる象徴。この空間その物が神聖に感じてしまう。

描かれている羽の生えた人型は、天使かまたは聖女なのか。ステンドグラスには文字が読めない人々にでも、聖書が分かるように神話の一節が描かれているのだとか。


そんな神殿の再奥にその人はいた。白銀の長い髪に白の聖服であるローブ。呼ばれて振り返ったのは、まだ若く見える中性的な人物。



「神官長様」

「オリヴィア。元気でしたか?」


中性的だが背が高く、声で男性だとすぐに分かる。

肌もとても白く、瞳を縁取る睫毛も白銀で全体的に白い。


「はいっ。背中に羽が生えて引きこもっていましたが、神官長様にこの子を見せたくて」


オリヴィアは抱き抱えている灰色の鳥、フェリクスを神官長の前に差し出して見せた。この神殿の最高責任者、彼ならフェリスクの事を詳しく知っているかもしれない。そう思って合わせに来た。


「神官長様、この子何に見えますか?」

「太った鳥です」


「ピー!!!!」


神官長の即答に対し、フェリクスは抗議のような鳴き声を放った。

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