7物理法則無し
「遅くなりました?そういうシャードさんは早かったですね」
「待たせたら悪いかなって配慮してあげたんだよ」
ぷりぷり怒りながらも定食を美味しそうに食べているせいで全然怖くない。
「シャードさんの言う通りだよ。ここじゃなくてもいいから、暗くなる前に村や街に戻りな。夜は本当に危ないんだから」
「はい、ごめんなさい」
「なんでテレサさんには素直なのさ…」
「食糧事情握られますし」
女将さんには素直に謝罪し、私も定食をひとつ貰ってシャードさんの隣に座る。
うん、女将さんのご飯は普通に美味しい。お肉に味がしみて……っと、そういえばこのお肉はどこで取れるんだろうか。
鶏肉?っぽいので本当ならサワトリから取れると思うんだけど出なかったんだよなあ。
「ねえ女将さん、このお肉ってどこで取れるのかって聞いても平気ですか?」
「うん?それくらいなら有名だから問題ないよ。ナオタウン手前のサワトリってモンスターが落とすよ」
「ええ、今日一日そこで狩りしてましたけど落ちなかったですよ!?」
もしかして、超低確率だったのか。それともなにか条件付きのドロップだったのか。
真剣に悩んでいると隣からため息が聞こえた。
「まさか君、肉がそのまま落ちると思ってないよね?そんなことになれば土が着いて品質が落ちるでしょ。サワトリの羽、ドロップしなかった?」
「………落ちましたけど、…いや、羽だし」
馬鹿だなあ、って目と声で言われても!
羽は羽だし!インベントリから取り出してもやっぱり羽は羽だし。
「ちょっと貸しな」
女将さんがひょいっと私の手から羽をとると…
「『食材加工』」
羽がパーッと光ってお肉になった。
いや、いやいやいや!!物理法則はどこよ!!!
「動植物系のドロップ品を調理師が加工魔法を使えば食材になる。これくらい当たり前だろ。君だって今までモエモエのジェルから出来たパンを食べていたじゃないか」
いやまあそうだけど、そうだけども!!
開いた口が塞がらず呆然としていると女将さんが自分の所持していた羽を私に1枚返してくれた。
「ちなみに錬金術師が加工すればポーションやポーションの材料になるよ。物によっては鍛治の素材にもなるね」
……これもあれか、容量の関係で複数種類ドロップできなかった、ということだろうか。
女将さんとシェードさんに「世間知らずだねえ」と笑われながらいつか神様を絶対に殴ると心に決める。
「いすずは落ち着いて見えるけれど世間知らずで怖いもの知らずだねえ。そういえばあんた、いくつなんだい」
「…………いくつだと思いますか?」
「ちょっと僕に聞かないでよ」
不意に女将さんに聞かれた質問をシャードさんに返す。
私が何歳か、だって?
リアル年齢は40歳を超えているけれど……このキャラは肌のハリとか、腰が痛まないとか歩いても全然疲れないとか、明らかに40の身体ではない
。
だがこの世界でまだ鏡を見ていないので自分を客観視出来てないのだ。
肩まで伸びてる髪の色が黒ってことしか分からない。
「…10代半ばじゃないの?」
「あー……まあ、当たりですね」
知らんけどそう見えるならそういうことにしておこう。
すごく嫌そうに答えてくれたシャードさんの案を採用したにも関わらず生返事で返したため恐らく嘘ってことが彼にはバレたのだろう。苛立たしげにギロりと睨まれて苦笑を返す。
「…あんたら中々いい感じじゃないの?シャードさんの方が少し上だけど頼もしくて、そういうのはないのかい」
「無いですね。恋愛も結婚も懲り懲りです」
女将さんの悪ノリした発言に、つい脊髄反射でフラグをかき消す。
結婚とかもう本当に懲り懲りだ…。
死んだ目をしていたせいか2人におやつを貰った。下手な恋愛関係より、このおやつの方がよっぽど有益だよ本当に……。




