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第17話 変わり者


 いつからだろうか。私が成功者と呼ばれるようになったのは…。たった数年。それまではズタボロの負け犬。世間知らずの厄介者と親戚中から腫れもの扱いされる日々。大学進学を蹴り、高校卒業と共に企業する事を決めた時から私は波乱の人生が約束された。


 幾つもの失敗を重ねた。借金で首が回らない事もあったし、社員に会社のお金を持ち逃げされた事もあった。一時期人間不信に陥ったが、それでも性善説に縋り新しい事に何度もトライした。


 運がいい事に私が犯罪に手を染めることは無かった。誘惑は何度もあった。その度に初心を取り戻した。私がやりたかったこと。求めていた自分自身の姿をイメージした。


 それは誇れる人格者。世間からも家族からも恋人からも友人からも尊敬されるような素晴らしい生き方を全うした人間。


 そのゴールはまだまだ先だ。人は何の為に生きるのか。この私、大河一歩はどんな終わりを迎えるのか。未だ誰も知らない。今日の行ないがそこへとバトンを一歩ずつ繋いでいく。私はその為に生まれてきたのだ。


 「大河さんですね。お待ちしておりました」


 社長室に招かれた私は、東南工業の現社長である室月博とM&A。つまり会社合併と買収について細かい調整をする。その為にこの場に赴いた。


 「いえいえ、こちらこそ忙しい中、お時間を頂きありがとうございます」


 軽く会釈をし、決まりきった社交辞令をする。穏やかな話し合いで済めば御の字だがそうは行かないのが大人の世界だ。お金の話とはシビアなもので出来た大人でも鼻息を荒くして揉めるものだ。特に今回は難しい局面だろう。今からが私の仕事である。


その頃キロたちはと言うと…。


 「いやぁ〜、どう忍び込んだらいいもんかいな」


 僕と二キロは守衛所のある正門のすぐ横でフェンス越しに中を覗き込んでいた。真正面から中に入ることなど出来ない。大人であれば、業者を装って忍び込む事も可能かもしれないが、見た目は子供で頭脳は大人な僕らにその作戦は不可能であった。


 その時だ。ふと視線に猫が横切る。


 「何や…猫か…。ん?待てよ」


 二キロはその後を追いかけた。


 「急にどしたん?」


 けれど詳しいことは語らず「まぁ一か八かや」とそう言ってまたいつも通りはぐらかした。まさかその猫が僕らの突破口になるとは思いもしなかった。

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