第10話 変化
又もやお巡りさんのお世話になる。あの時の警察官がやれやれと僕を見て言った。
「もう話したらどうやねん。何か隠してへんか?おっちゃん疲れたでホンマに…。何やあの糞みたいなもん。思い出したらまた気持ち悪るなって来たで…」
彼らが動いたのは誰もアレを撤去出来なかったからだ。しかも何かの生き物である可能性が高く、アパートに残された衣服が行方不明だった武田清貴のものだと判明し、尚且つ道にも同じように新しく捜索願いが出たお爺さんのものだとその家族が証言した。
その現場はある現象を想像させる。人間が衣類を残して腐り果てた。そんな超常的で非常識な見解が実しやかに語られるほど、信憑性がある。けれど腐敗が進み過ぎてDNA鑑定で判別する手段が取れなかった。事件はより謎めいた。
僕は一躍有名人だ。それも悪い意味で。学校に行くとその事で揶揄われる。クラスメイト曰く、僕には謎の菌が付いているらしく触られるとその部分が腐り落ちる。誰かに移せば、問題ないらしい。それは明らかなイジメだし正直気分が悪かった。
「うわぁ!キロや!はよ離れよ!キロ菌が映るで!!ギャハハハハハ」
それを耳にした他の子らも笑いながら一目散に逃げる。全然楽しくない。本当にくだらないと思った。けれど何だかそこまで傷付いていない自分を客観的に意識出来た。何故だろうか。恐らくあの死線が僕の世界観を丸々作り変えてしまったのだ。
あの時、本当に死を覚悟した。だからわかる。今生きていることがどれほど嬉しいか。今ならホームレスになっても喜べる。僕は小学生だ。頑張り次第で何にだってなれる。今がスタートラインなのだ。根拠のない確たる自信が漲っている。気付くと僕は彼らよりももっと大きな声で笑っていた。
「あはははははは!ホンマにお前らはおもろいなぁ?!」
そこで彼らは一斉に静まり返る。全視線が僕に集まる。何か気の利いた言葉が言えそうだった。
「ホンマやったらどうすんねん?遊び方間違うとるで…」
今朝見たニュースを思い出す。奇妙で恐ろしい内容だった。もはや都市伝説レベルだ。彼らもそれが脳裏に浮かんだのだろう。何とも言えない雰囲気が場を満たし、唾を飲み込む音だけが教室に響いた。




