カレー 2
今回からパソコンに切り替わりました。
慣れていなので誤字脱字が多いかもしれません。
「おはよう……」
「おはよう、エレイン。よく眠れたか?」
翌朝、目覚めた二人──エレインは眠そうだが──は厨房の中であいさつを交わす。カズヤはエレインの頭を撫でると、朝食作りに取り掛かる。パンと卵、そしてソーセージ。典型的な材料がそこに並んでいた。
「朝ごはんは何を作るの?」
「トーストと目玉焼き」
「シンプルだ」
「これくらいのシンプルさがいいんだよ」
カズヤはフライパンに油を引き卵を割る。パチパチと油が跳ねる音が二人だけの厨房に響く。何か手伝えることがないか彼に尋ねれば、ソーセージを茹でて欲しいと言われ鍋を渡された。
「あそこの蛇口から水を注いでくれ」
鍋に水を張りコンロに置く、つまみをひねり火をつける。沸騰したのを確認しソーセージを四つ入れた。渡された木べらでころころしばらく転がせば、ソーセージがふっくらしてくる。カズヤは鍋を覗き込むとソーセージを鍋から取り出した。フライパンに放り込む。パチパチと油と水が跳ねエレインはびっくりしたが、カズヤは慣れた様子でソーセージを焼く。焼きあがったソーセージを目玉焼きとパンが乗った皿に移す。
「できたぞ」
「わぁい!」
朝食をテーブルに置き、二人は向かい合うように席に着く。いつものように挨拶をしエレインはパンにかぶりつく。ざくっと心地よい音がした後、小麦の香りが香ばしい。用意されたバターを塗りもう一口かじればバターの風味が小麦になじむ。エレインは目を輝かせながら朝食を食べ進める。
「飲み物は水でいいか?」
「ふぁふぃふぁふぉ」
「食べながら話さない」
「……はーい」
水を受け取り一気に飲み干す。パンで乾いた口内が潤っていく。カズヤはそんなエレインの様子を微笑ましい目で見つめ食事を摂る。目玉焼きを食べれば良い塩加減だった。
「ごちそうさまでした」
朝食を食べ終え、皿を片付ける。ある程度終わらせた後、カズヤは厨房に向かう。エレインが後を追い様子を見ていると彼は食材を取り出した。にんじん、じゃがいも、豚肉、たまねぎ……どうやら今日はカレーを作るらしい。
「カレー?」
「ああ、作ってみるか?」
「いいの?」
「構わないよ。なんなら今日のメインはこれだからな」
「それ昨日も言ってたよね?」
どういうかと首をかしげているとカズヤは軽快に笑い言った。
「エレイン、お父さんにカレー作ってみないか?」
「カレーを?」
「会話のきっかけにはなるだろ?」
鍋を用意しながら彼は続きを話す。
「二人に足りないのは会話だと俺は思うんだよ」
「でも……」
「エレイン、君はお父さんとどうなりたい?」
カズヤにそう問われエレインは困惑する。必要最低限関わりだけにしようと決めたのに、彼の言い方だとまだ希望があると言われているような気がして。どうしたらいいいのか分からない。黙っているとカズヤはわかっていたのか、ゆっくりでいいと声を掛ける。エレインは頷くが、撒かれた困惑は取り除けなかった。
カズヤに教えてもらいながらエレインは野菜を切る。少し不格好に切られたにんじんとじゃがいもはかわいらしさがあり、自分も初めはこうだったなと昔を思い出しながらカズヤはそれらを鍋に入れる。水を茹でているとエレインがカズヤを呼ぶ。振り返れば、エレインは目をこすっていた。
「目が痛い……」
「たまねぎを切るときはそうなるよな。俺がたまねぎを切るからエレインは肉を焼いてくれるか?」
「はぁい」
カズヤは笑いながらエレインに代わりたまねぎを切る。エレインは言われた通り肉を焼く。カズヤはそこに切り終えたたまねぎとスパイスを加えそのまま焼くように指示をした。しばらく焼いているとたまねぎに艶が出てくる。カズヤはフライパンの火を止め、鍋に中身を入れた。ぐつぐつと煮込む音が二人の間に響く。ローリエを入れて一緒に煮込むとアクが出てきたのですくいあげる。スパイスの香りが厨房に広がり、エレインは深呼吸をした。
「もう少しで完成かな」
「楽しみだなぁ」
「あとは煮込むだけだから、いいところでお茶にでもするか」
「うん。……ねえお兄さん」
「なんだ?」
「僕、お父様とお話できるかな?」
分からないとカズヤは答えた。予想外の返答にエレインの瞳が大きく揺れる。
「二人がちゃんと話を聞く意識があるか、だからなぁ」
「聞いてくれなかったらどうしよう……」
「それはエレインだけじゃないよ」
「え?」
「お父さんも同じだよ」
エレインはカズヤの言葉に目を開く。カズヤはエレインと目を合わせ言い聞かせるように言った。
「お父さんもさ、エレインが話を聞いてくれなくて悲しかったんじゃないかな」
「……」
「エレインも悲しかったのはわかるよ。でもお父さんもそれは同じ。だから今日話をする時ほんのちょっとでいいからお父さんの目を見て話してみよう」
分からなくなったらサポートするからさ。そう話すカズヤをエレインは見つめ返す。いつもそうだ。彼は大事な話をする時ちゃんと目を見てくれる。
(僕の時はどうだっただろう……)
思い返せば、俯いてまともに顔を見ていなかった気がする。エレインは自身の行動を振り返りちゃんとできていなかったこと、そしてひどい言葉を浴びせてしまったことをひどく恥じた。ちゃんと父に謝ろう。エレインは深呼吸をし、心を整える。今朝芽生えた困惑が少し薄まった気がした。
「……その様子だと決めたみたいだな」
「うん」
カズヤはがんばれとエレインの背中を軽く叩き鼓舞した。
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