9話
ピリピリした空気はビリビリしたものに変わり、どんより重たくなる。
あ、ヤバイかも。と思いつつ、発信源を探す。
「ねぇ、何処かな!?この重っ苦しい空気の元は!?
ヤバイよね?!」
《マズいな。人が何人か死んでても不思議じゃないぞ》
さらっと言った夕霧に、止めてよ!と叫ぶ。
走り回って探して、辿り着いたら死体発見とか冗談じゃない!
《冗談ではないが》
「尚悪いわ!」
《旭!いたよー!!》
ほら!彼処だ!と暁さんが指で示した先には、見事に真っ青な2m位の鬼の後ろ姿が見えて急ブレーキする。
「あれ、青鬼?
人は無事?!」
《驚け、無事だ。ピンピンしている上に、この重苦しい空気を感じていないらしい。呑気な事だ》
物陰からコソッと覗けばまさかの虐めの現場だった。
しかも、青鬼?のパートナーっぽい白髪少年が虐められている側らしい。
8対1(+青鬼)という子供ばかりの集団で、白髪少年は蹲っている。
8人の少年達は白髪少年の後ろにいる青鬼が一切見えないようで、白髪少年に小石を投げて・・・9割9部9厘、変な方向に飛んでいっているが・・・罵詈雑言を叫んでいる。
「うわー・・・これどうしよう」
《子供を避難させぬのか》
「え?だって青鬼側が虐められてるし。
私、寄って集って1人を攻撃するような情けない奴キライ」
虐めは陰湿だ。虐められた側は一生、虐められた事を忘れない。
虐める側も虐められる側も悪いと言う人がたまにいるけど、私はそう思わないし、何で?と思う。
手を出した奴が悪いよ。
因果応報って言うし、仕返しされても仕方ないよね。
目には目を、歯には歯を!って言うし。
スプラタはイヤだから回れ右して退散かなあ。
《意外だなあ》
「何が意外?暁さん」
《ボクも弱いもの虐めは不愉快だよ。
でも君は、とにかく虐めは止めて、青鬼も止める気がしたから》
「やだなあ!私はそんなに優しくないよ」
《だが旭、1つ大きな問題がある》
神妙な顔の夕霧に、顔がひきつった。
「何?凄く嫌な予感」
《あの青鬼、自我がない。珍しい事に、あの子供から生まれたばかりらしい》
「え?!少年が産んだの!?男なのに出産!?」
《違う!!!昔教えた筈だ!
鬼は人の心の、憎しみや怒り、悲しみなんかの負の感情から生まれると!
憎しみなら黒鬼、怒りなら赤鬼、悲しみなら青鬼で、鬼の色は生まれた理由だと!!
そして、普通、人の感情から生まれる鬼は、精々小鬼だとも!言ったよな!!!?》
「言ったっけ?」
《旭ーーー!!》
キレた夕霧にこめかみグリグリされてしまった。
いや、だってねぇ?覚えること多いからさあ。
《ボクも初めて見たな。生まれたばかりの自我のない鬼》
感心したように青鬼を見る暁さんに、夕霧は溜め息を吐いた。
《2人とも呑気な・・・
自我のない鬼は、時に鬼神より厄介なんだぞ!?暴走するからな。
あの子供が意識を失ったら最後、少なくとも、東市周辺は瓦礫と化す。良いのか旭》
「え?それはダメかも」
《それは面倒だね》
《・・・・今の内に止めた方が良い。旭》
「りょーかい」




